サスペンス

小野不由美『屍鬼 3巻』あらすじとネタバレ感想!ついに明かされる屍鬼の正体とは?

逃げ場のない恐怖の底に堕ちた村で、深夜、何者かの影が蠢き始めていた。窓の外に佇む凍えた気配、往来の途絶えた村道で新たに営業し始めた葬儀社、そして、人気のない廃屋から漏れる仄暗い灯…。その謎に気付いた者たちの背後に伸びる白い手。明らかになる「屍鬼」の正体。樅の木に囲まれた墓場で月光が照らし出した、顔を背けんばかりの新事実とは―。もう止まらない、驚愕の第三巻。

「BOOK」データベースより

シリーズ第三弾となる本書。

外場村に蔓延する謎の死の正体が明らかになります。

静信の小説に登場する架空の存在だった『屍鬼』が実在し、その特性が語られるなど物語が一気に動き出します。

ここまで展開が緩やかだっただけに、ここからはもう目が離せません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

謎の死の正体

敏夫はこれまで医学の観点から外場村を襲う謎の連続死の原因を探してきました。

そして辿り着いたのは、鬼や吸血鬼と呼ばれる存在でした。

本書では屍鬼と呼ばれるものです。

死んだ人間の多くは貧血症状を呈し、やがて多臓器不全に至る。

どの貧血にも分類できないことから、血液量が絶対的に足らないという答えが導き出され、その血を奪った存在が屍鬼だったのです。

村人の中には亡くなった人を見たという人がいますが、これは死人が起き上がって屍鬼になったことを意味します。

そのことから、屍鬼=『起き上がり』とも表現します。

静信は自身の小説に『屍鬼』を登場させていましたが、実際に存在するなどとはじめは信じられません。

しかし、屍鬼が生きている人間を殺害、あるいは同族にするために吸血しに来る事実を知り、その存在を認めるしかありませんでした。

報復

時は同じくして、夏野もまた屍鬼の存在に気が付いていました。

同じく田中昭も亡くなったはずの人物を目撃し、姉のかおりと共に桐敷家を探っていました。

そこで両者は出会い、屍鬼の存在を実証するために独自に動き出します。

その結果、亡くなった人が埋葬されているはずの墓には誰もおらず、これで死体が起き上がったことが証明されました。

夏野はなおも調査を続けますが、待っていたのは屍鬼からの報復でした。

包囲

一部の人間が屍鬼の存在に気が付いたところで、大半の人間は超常的なその存在を簡単に信じられるはずがありません。

屍鬼の具体的な倒し方も見つけられず、敏夫たちは後手に回り、その間に屍鬼側はさらに外場村を包囲していきます。

外場村に新しい葬儀社とクリニックが建ちますが、経営しているのは屍鬼で、これによって人の死を簡単にコントロールできるようになります。

その結果、亡くなった人の一部は屍鬼になり、外部にはその死を伝えない。

つまり何の問題も起きていないかのように振舞います。

真実に気が付いても抵抗する術はなく、外場村は着々と屍鬼に支配されていきます。

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感想

敵の正体

第三巻にしてようやくタイトルにある『屍鬼』が登場します。

伝説上の吸血鬼のような存在。

彼らは人間とかけ離れた特性を持つだけでなく狡猾で、知らず知らずのうちに外場村を囲い、周囲から孤立させていきます。

もちろん弱点になり得る点もありますが、敏夫たちがそのことに気が付くのはもう少しあとです。

その存在に気が付いても村人たちが信じてくれなければろくな抵抗も出来ず、屍鬼は少しずつ外場村を自分たちのテリトリーにしようと暗躍します。

正体が分かっているのに、手が出せない。

この口惜しさと恐怖が本書の中に漂い、ここまで読み続けてきた僕にとって最高のご褒美となりました。

意外な一面

吸血鬼と書くと対話不可能の、殺すか殺されるかの存在に思えますが、実際は違います。

屍鬼は亡くなった人間の記憶や性格はそのままに、肉体だけが変化した存在です。

なので起き上がってすぐは自身の変化に戸惑うし、すぐに人間を狩る側になれるわけではありません。

通常の人間の感覚からすれば、同じ人間を襲うなんておぞましくて到底できません。

しかし、屍鬼は人間の血を吸わなければ死んでしまうため、余程強い精神力を持って自ら死を選ばない限り、人間の尊厳を捨てて屍鬼として生きていくしかありません。

この意外な一面が明かされたことで、本書の対立図が単なる強者による蹂躙ではなく、生き残るための戦いであることが分かります。

屍鬼には屍鬼なりの人を襲う理由があり、多少なりとも理解できる点もあるため、彼らを敵とみなしていた自分の価値観がぐらつきました。

人間は、果たして屍鬼を倒すための方法を見つけ出せるのか。

もし屍鬼が倒されるとして、それを喜べるのか。

単なるホラー、サスペンスでは片付けられなくなってきた展開がとにかく面白く、次巻以降への期待がますます膨らみました。

おわりに

ついに屍鬼が正体を現しました。

ここまでやや冗長な展開が多かったため、多少の我慢を覚えながら読んだ人にとって最高に面白くなってきたのではないでしょうか。

ここからはもうノンストップです。

人間と屍鬼の戦いは激化し、ページをめくる手がますます止まらなくなります。

もう我慢する必要はないので、あとは物語を行く末を考えながらただ楽しんでもらえればと思います。