サスペンス

『追憶の夜想曲』あらすじとネタバレ感想!転機を迎えるシリーズ第二弾

少年時代に凶悪事件を犯し、弁護は素性の悪い金持ち専門、懲戒請求が後を絶たない不良弁護士・御子柴。彼は誰も見向きもしない、身勝手な主婦の夫殺し控訴審の弁護を奪い取る。御子柴が金目のない事件に関わる目的とは?因縁の検事・岬恭平との対決は逆転に次ぐ逆転。法廷ミステリーの最先端を行く衝撃作。

「BOOK」データベースより

御子柴礼司シリーズ第二弾となる本書。

前の話はこちら。

今回、御子柴がわざわざ弁護人の座を奪ってまで執着したのは一見、何の変哲もない主婦が殺人の容疑を問われている事件でした。

当然、弁護するだけの理由があるわけですが、次々と予想を裏切る展開にそれどころではなく、最後の真実が明かされた時の衝撃といったらありませんでした。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

弁護人の交代

御子柴は、前作で負った傷がある程度癒えたことで退院。

彼が次に目をつけたのは世田谷で起きた津田伸吾という人物が殺害された事件でした。

容疑者として逮捕されたのは津田の妻・亜季子で、すでに宝来という人物が弁護人に就いていました。

御子柴は宝来の弱みを見つけ出し、それを明るみに出さない条件として亜季子の弁護人の座を奪い取ります。

亜季子はどこにでもいる普通の主婦で、伸吾を殺害したことを認めている。

御子柴が望むような大金が得られる事件ではありませんが、それでも御子柴は構わずに弁護人を引き受けます。

彼の真意は何なのか。

本書の根幹にあたる部分で、終盤になってようやく明かされます。

被告人の秘密

伸吾は会社をリストラされてからろくに職も探さず、デイトレーダーを気取って株に手を出して失敗し、多額の借金を抱え込んでいました。

一方、亜季子はパートで家計を支える中で職場の同僚に惹かれるようになり、そのことで伸吾と争いになります。

散々殴られた亜季子はかっとなって伸吾を殺害した、というのが今回の事件における亜季子の供述です。

しかし、御子柴は亜季子の言葉を鵜呑みにするはずがないし、亜季子もまた御子柴に対して秘密を守り抜かなけらばならないことを早々に明かします。

では、亜季子が自分の刑を軽くしてくれる、いわば味方の御子柴に対して隠したい秘密とは何なのか。

実際には津田家で何が起こったのか。

御子柴の戦いが始まります。

過去から浮かび上がる真実

御子柴と争うことになったのは、凄腕の検察官である岬恭平。

彼は『さよならドビュッシー』などで知られる『岬洋介シリーズ』に登場する岬洋介の父親です。

岬は以前、御子柴に痛い目に遭わされてからリベンジを誓っていて、その有能ぶりを発揮します。

御子柴は強敵を相手にするだけでなく、味方であるはずの亜季子とすら戦わないといけません。

明らかに不利な戦いですが、御子柴に負けるつもりなどこれっぽっちもありません。

これまでの捜査で見落とされていたものだけでなく、御子柴は亜季子の過去にまで踏み込んで今回の事件を組み立て直します。

すると、自ずと亜季子の隠しておきたかった真実が明らかになりました。

スポンサーリンク




感想

弁護人の交代の謎

金か売名か、あるいは。

どちらにしろ、あの御子柴礼司が何の得もない事件を担当するわけがない。

作中の人物だけでなく、前作を読んだ読者の人であれば誰もがそう思うでしょう。

それは当然あたっていて、御子柴が亜季子の弁護人を務めたのにはちゃんとわけがありました。

その理由はシリーズ通して御子柴に流れる信念というか贖罪のようなもので、改めて本シリーズがどんな作品なのかを教えてくれる一冊になりました。

御子柴が冷酷非道に映るのも無理はありません。

それくらい彼の言動にはとても人の心があるように見えないし、自分勝手過ぎます。

けれでも物語の端々に彼の人間らしい部分が描かれ、稲見によって生まれ変わった新しい人間であることがよく分かります。

この二面性というかギャップが御子柴の魅力を生み出し、それを知っているからこそ事務員の洋子は頑なに彼の側を離れないし、読者である我々も離れがたいのだと思います。

今後のシリーズについて

本書のラストにて、御子柴礼司シリーズは一つの転機を迎えます。

起こるべくして起こったこととはいえ、御子柴の努力や苦悩を知っているからこそ複雑に思ってしまうところで、相変わらずスッキリとは終わってくれません。

本シリーズの読了感が良い時が来るとしたら、御子柴の中に溜まった罪の意識が完全に払拭されるか、あるいは空虚の部分が満たされた時なのかもしれません。

どちらにしろまだまだ御子柴の物語は続きそうなので、彼が本当に別の人間として生まれ変わったのかどうか。

この目で見届けたいと思います。

おわりに

ミステリとして、読者を飽きさせない展開、論理的で納得するしかない推理は流石としか言いようがなく、改めて本シリーズの完成度の高さを思い知りました。

そして、それ以上に御子柴や彼に関わる人間の中に渦巻く感情が正負関わらずこちらの心情を揺さぶってくるので、一ページたりとも気を抜くことは出来ません。

最高の読書時間でした。

次の話はこちら。

おすすめミステリ小説のランキングを作りました。

おすすめ文庫小説もご紹介しています。

電子書籍をより楽しむために『Kindle Paperwhite』をオススメしています。

『本は、聴く』の『Audible(オーディブル)』を無料で体験してみませんか?