サスペンス

小野不由美『屍鬼 5巻』あらすじとネタバレ感想!壮絶なる争いがもたらす結末とは?

村人たちはそれぞれに凶器を握り締めた。「屍鬼」を屠る方法は分かっていた。鬼どもを追い立てる男たちの殺意が、村を覆っていく―。白々と明けた暁に切って落とされた「屍鬼狩り」は、焔に彩られていつ果てるともなく続いていった。高鳴る祭囃子の中、神社に積み上げられる累々たる屍。その前でどよめく群れは、果たして鬼か人間か…。血と炎に染められた、壮絶なる完結編。

「BOOK」データベースより

ついに『屍鬼』という物語が終わります。

前の話はこちら。

はじめは正体すら分からなかったものが少しずつ明らかになり、最後には直接対決になります。

緻密な描写ゆえにここまでの道なりは平坦ではありませんでしたが、読んだ甲斐がありました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

消極的な自殺

静信の父親・信明が失踪して約一か月。

信明は桐敷家宛に招待状を書いていて、静信はそれが最終的に沙子のもとに届いたのではないかと考えます。

桐敷家、つまり屍鬼の親玉は沙子だと。

動けない信明は手紙を出すことで屍鬼を招き、桐敷家に運ばせたに違いない。

そう考えた静信は、単独で桐敷家に乗り込み、その事実を沙子に認めさせます。

明かされる信明の末路。

静信はそのまま桐敷家に捕らわれてしまいますが、彼自身、逃げるつもりなど最初からありませんでした。

この行いについて、沙子は『消極的な自殺』だと称します。

反撃

敏夫は屍鬼にとっての危険人物として桐敷千鶴に命を狙われますが、これを逆手にとります。

彼は千鶴の性格を見抜き、屍鬼に従順になったふりをしてお祭りで人々が集まる場所に連れ出します。

最初は楽しんでいた千鶴ですが、神社に近づいたことで抵抗できなくなります。

敏夫はその隙をついて彼女が屍鬼であることを村人に伝えます。

それでもまだ半信半疑だった村人ですが、次第にこれまで溜めてきた鬱憤や怒りが爆発し、一斉に千鶴に襲い掛かります。

これによって千鶴は動かなくなり、人間でも屍鬼を倒せることがいよいよ実証されました。

このことがきっかけとなり、物語は一気に動き出します。

惨劇

屍鬼の存在をついに認めた村人たちは、彼らの存在を抹消することを決意。

敏夫を中心に動き出します。

多くの人は屍鬼を殺害することに最後まで抵抗を覚えますが、村人みんなでやれば次第に抵抗が薄くなり、何の躊躇もなく手をかけます。

屍鬼側も人間の反撃を察知しますが、沙子の判断で逃げずに戦うことを決めます。

とはいえ、屍鬼は朝になると強制的に眠って抵抗できなくなるため、その間はどこかに隠れないといけません。

あれだけ一方的だったオフェンスが一気に形勢逆転。

今度は屍鬼が、人間になす術なく襲われることになります。

本当の鬼がどちらなのか分からない、凄惨な争い。

物語はついにクライマックスを迎えます。

感想

怒涛のラストスパート

あれだけ恐れられていた屍鬼ですが、その特性が知られ、その存在が明らかになったことで一気に立場が変わります。

ここまで少しずつ溜めてきた村人の鬱憤や怒りはもはや手が付けられないほど膨れ上がり、ついに爆発します。

そうなると誰にも止めることは出来ず、あとは結末まで駆け抜けるだけ。

ここまでのやや冗長な展開はすっかり鳴りを潜め、怒涛のラストスパートにページをめくる手が止まりませんでした。

本当に怖いものは何か

様々な作品で思うことですが、本当に怖いものは人間ではないでしょうか。

あれだけ屍鬼のことを化け物だと罵っておいて、いざ立場が逆転すると、問答無用で殲滅する。

屍鬼がかつて人間だった頃の仕草を見せても、それで手を止める人間などいません。

本書で描かれているのは一方的な虐殺で、反撃の高揚感というよりも、冷静さを失って鬼と化した村人に対する恐怖感だけが募りました。

屍鬼と人間はまず相容れない存在であり、やらなければやられるという理屈は分かります。

しかし、熱に浮かされたように屍鬼たちを次々と始末する村人を見ていると、なんだか納得がいきませんでした。

とはいえ、ここまで大風呂敷を広げてきたことに対しての見事な結末で、圧巻の一言です。

途中で展開がダレて、読むのに苦痛を伴うところもいくつかありましたが、それでも読み続けてきたことが報われる最高の仕上げだと思います。

おわりに

小野不由美さんの代表作の一つにふさわしい圧倒的なスケールの物語で、また数年経った頃にまた読みたくなる予感がします。

ちなみに文庫版の解説にて、宮部みゆきさんが本書について、スティーブン・キングの『呪われた町』へのオマージュとして作られた作品だと言及していました。

スティーブン・キングというと僕は『IT』のイメージしかないので、次はぜひ挑戦してみたいと思います。

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