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『悪童日記』あらすじとネタバレ感想!世界の不条理に抗う双子の物語

harutoautumn
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戦火の中で彼らはしたたかに生き抜いた――大都会から国境ぞいの田舎のおばあちゃんの家に疎開した双子の天才少年。人間の醜さ、哀しさ、世の不条理――非情な現実に出あうたびに、彼らはそれをノートに克明に記す。独創的な手法と衝撃的な内容で全世界に感動と絶賛の嵐を巻き起した女性亡命作家のデビュー作。

Amazon商品ページより

なんだ、この小説。

説明することが困難なのに、とにかく独創的で面白い。

戦時中だからこそ起きる異常な日常と、それをドライに、時にユーモアを交えて描く手法。

他の小説では決して得られない衝撃が待っているので、ぜひ読んでほしい一冊です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

疎開

本書中では明言されていませんが、物語の時代は第二次世界大戦末期から戦後にかけての数年間で、場所はハンガリーの田舎町であると推測できます。

冒頭、双子の少年は母親に連れられ、疎開のために彼女の母親(祖母)に預けられます。

祖母は魔女と呼ばれるような人物で、双子をこれでもかとこきつかいます。

住むところと食べるものを確保するためには、対価が必要である。

そんな当たり前のことを、双子は幼い頃から叩き込まれます。

生き抜く術

辛い環境ですが、双子は見事に順応していきます。

仕事をこなすだけでなく、生き抜き術を自分たちで身に叩き込みます。

お互いを痛めつけて苦しみに慣れ、必要なものがあれば盗んででも手に入れます。

原題とは異なりますが、まさに『悪童』にふさわしい所業です。

克明な記録

双子はある日から作文をしたためるようになります。

ルールは以下の通り。

  • 作文の内容は真実でなければならない
  • 個人の感情など、精確さと客観性に欠けた内容は盛り込まない

『悪童日記』はまさにこの日記のことを指します。

二人はどのような日々を過ごし、どのような結末を迎えるのか。

ぜひ見届けてください。

感想

台本のような明確な文章

上述したように、本書は双子が明確なルールのもと記したもので、そこには事実しかありません。

曖昧な表現はなく、読者である僕らは書いてあることをそのまま受け入れるしかなく、そこに想像を膨らませる余地はありません。

セリフと最低限の行動のみが記されていて、まるで演劇のト書きのような体裁をとっています。

はじめ、徹底的にドライな文章は淡泊で、面白味がないように思えました。

ところが、慣れてくるとこれが面白くなってくるのだから不思議です。

戦時中ということもあって書かれている事実は非常で容赦ないのですが、そこにクスッとしてしまうようなユーモアが織り交ぜられていて、物語全体を通して悲壮感とは無縁の状態にあります。

この不思議な感覚こそ、本書の第一の魅力であります。

逞しい双子

物語はもちろんのこと、双子自体が魅力的であることも書いておかないといけません。

原題とは違って日本語版タイトルには『悪童』とあり、その名前の通り、双子は美しい容姿とは裏腹に、盗みでも暴力でもなんでも手を染めます。

しかも若さゆえの有り余る活力を発散させるためではなく、全ては生きるためです。

双子に対して感情移入する余地はなく、僕らは彼らのしてきた行いを日記という形でただただ読むしかありません。

この近すぎず遠すぎない距離感もまた、本書の魅力といえます。

続編もある

本書は三部作の第一弾で、残り二弾が待っています。

本書で衝撃的な結末を迎えた双子は、第二作以降でどうなるのか。

二作目では前作を踏襲しつつも、違ったアプローチで作品の世界観をさらに広げてくれます。

本書を気に入った人は読まないと絶対に損なので、ぜひ挑戦してみてください。

おわりに

シンプルで読みやすいのに、そこに込められた狂気やユーモアは格別で、こんな手法の小説があったのかと素直に感動してしまいました。

重たい設定ですが、読み始めるとスラスラ読めてしまうので、物怖じせずぜひ手にとってみてください。

次の話はこちら。

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