小説

『カラスの親指』あらすじとネタバレ感想!奇妙な五人の生活とつきまとう過去

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。「このミス」常連、各文学賞総なめの文学界の若きトップランナー、最初の直木賞ノミネート作品。第62回日本推理作家協会賞受賞作。

「BOOK」データベースより

何かの縁か、過去に傷を持つ五人が一軒家で一緒に暮らすことになり、自分を変えるために逆転劇に出るという本書。

道尾秀介さんらしい緻密な構成で、伏線に次ぐ伏線。

それが一気に回収される時の猛スピードな展開は他の作品では味わえないほど圧倒的で、かなり満足度の高い一冊になっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

二人の詐欺師

武沢竹夫(タケさん)と入川鉄巳(テツさん)は人を騙して生計を立てる詐欺師です。

テツさんには絵理という妻がいましたが、多額の借金を苦にして首を吊って自殺していました。

一方、タケさんもまた妻を病気で亡くし、娘を火事で亡くしていました。

しかし、ただの火事ではありません。

タケさんもまた多額の借金を抱えていたことがあり、闇金業者の手先として債務者からお金をむしり取る仕事をしていました。

それによって一人の女性が自殺。

タケさんは間違いを正そうと闇金業者の情報を警察に持ち込んで業者を逮捕させますが、彼らは報復としてタケさんの家に火をつけたのでした。

復讐

ある日、タケさんとテツさんの住むアパートが火事になります。

タケさんは自分に恨みを持つヒグチという闇金業者が出所後、復讐のために燃やしたのではと考えます。

そこで全く違う場所に家を変えますが、ここで思わぬ偶然が舞い込みます。

二人は街中でスリに失敗した少女・まひろを助けますが、彼女はかつてタケさんが自殺に追い込んだ女性の娘でした。

タケさんは本当のことを話すわけにはいかない一方で、住む場所にすら困っている彼女を見捨てることなど出来ません。

そこで適当の誤魔化しながらまひろも住まわせることにしたのでした。

決別

それから紆余曲折あり、まひろの姉・やひろとその恋人の貫太郎も家に転がり込みます。

さらに猫のトサカも飼うことになり、こうして五人と一匹の奇妙な共同生活が始まります。

傷を持つ一同はこの生活に安らぎを覚えますが、その平和は長く続きません。

またしても放火騒ぎが起き、今度は何とか鎮火しますが、何者かがタケさんたちを狙っていることは明白でした。

このまま逃げ続けるのか。

いつまで逃げればいいのか。

五人は分岐点に立ち、選択を迫られます。

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感想

長いのに無駄がない

本書は文庫本で約五〇〇ページあり、なかなかのボリュームです。

しかし、冗長かというとそんなことはなく、何気ない日常のやりとり、会話にも伏線が張られていて、後の爆発的な展開に一役買っています。

最後に何が伏線だったか明かされるのですが、僕が違和感を抱かなかったものばかりで、詐欺を生業としてきたタケさんたちの登場する本書にふさわしい仕掛けだと感動してしまいました。

長い話なので集中力を切らさず読むのはなかなか大変ですが、読み込めば読み込むほど結末に驚かされ、感動を覚えるはず。

時間に余裕があるという人は、ぜひ味わってじっくり読んでもらえればと思います。

芽生える絆

五人での生活ですが、はじめは文句ばかりが口をつき、とてもまとまりなどありません。

しかし、不思議なもので一つ屋根の下で暮らしているとそこに馴染み、やがて家族のような絆が芽生えはじめます。

そのせいか何気ないワンシーンが愛しく感じるし、彼らの生活にも期限があるのだと思うのと寂しさを覚えずにはいられません。

本書は上述したテクニック面だけでなく、こういった心情に訴えかけてくる部分も抜群なので、一冊で様々なニーズを満たしてくれます。

圧巻のラスト

そして、本書最大の魅力は何といってもラストにあります。

それまで信じてきたものがまるで紙の絵のように引き裂かれ、その後ろから本当の物語が姿を現します。

いつもであればタイトルの意味も解説するのですが、それすらも伏線になっていて、本書の本当の姿を表現する重要なキーワードになっています。

いうなれば、本書そのものが詐欺師なのです。

読者のあなたは、道尾さんの詐欺を見破ることはできますか?

騙されるのが癪だという人は、ぜひ細心の注意を払って読んでください。

おわりに

登場人物のユーモア溢れる特徴が愛らしいと思えば、それが伏線になっていたりするので、本書は気を抜くとあっという間にやられます。

もちろん嫌な騙され方ではなく、真実を知れば思わず安堵の息をついてしまうほど素敵な結末で、その点はご安心ください。

ここまで作り込まれた作品はそうはないので、ぜひ味わって読んでもらえればと思います。

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