『サブマリン』あらすじとネタバレ感想!十二年ぶりにあの陣内が帰ってきたシリーズ第二弾
家裁調査官・陣内と武藤が出会う「少年たち」。報道される事件と、実情が違っていることは少なくない。『チルドレン』から、12年。罪と罰をめぐるものがたり。
Amazon商品ページより
十二年ぶり、陣内シリーズ第二弾となる本書。
前の話はこちら。
前作と違い、長編です。
相変わらず無茶苦茶な陣内ですが、裏表のない自分に正直なところに惹かれたりと、本書でも僕らを夢中にさせてくれます。
本書に関する伊坂幸太郎さんへのインタビューはこちら。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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タイトルの意味
内容に入る前に、タイトルの意味について。
『サブマリン』とは潜水艦という意味です。
本書には、光の届かない深海のような場所で声をあげ、誰にも聞いてもらえない人たちが何人も登場します。
そんな中で、家庭裁判所の調査官である陣内は潜水艦のように光の当たらない場所に潜り込み、そこで孤独な人たちの声を聞きます。
その結果、孤独な人たちを救うことができるのか。
結果についてはぜひ読んで確かめてください。
あらすじ
無免許運転での人身事故
家庭裁判所の調査官である武藤は異動先で再び陣内と共に仕事をすることになります。
今回、二人が担当するのは無免許の少年が運転する車が引き起こした人身事故でした。
それによって中年男性が一人亡くなっています。
加害者の棚岡佑真はどんな質問にもろくな反応を見せず、武藤ではお手上げ状態でした。
加害者は被害者だった
その後の聞き込みで少しずつ棚岡のことが分かってきます。
棚岡はかつて交通事故で両親を亡くし、さらに小学生の頃に同じく交通事故で友人を亡くしていました。
その時の運転手もまた少年で、なんと陣内が担当していました。
つまり、陣内は今回の事件以前から棚岡のことを知っていたことになります。
棚岡は本当にただ運転ミスで相手を死なせてしまったのか。
話が進むにつれて、事件の全貌が明らかになります。
殺人予告
武藤は試験観察中の小山田俊という少年に定期的に会っていました。
小山田に反省の色は見られず、今でもネット上でグレーゾーン、あるいは犯罪にあたる行為を繰り返しています。
それでも試験観察中であることはしっかりと認識し、誰かに迷惑をかけるということはありませんでした。
ある日、小山田は武藤にネット上にある犯罪予告について話します。
基本的にはどれも予告するだけで実際の犯行に及ぶことはありませんが、中には本当にその通りの犯行に及ぶケースもあり、小山田にはそれが見分けられるのだといいます。
もちろんそのことを警察に伝えても信用してもらえるはずがなく、そこで武藤に伝えたのでした。
例え武藤でも情報をもらったからといって動けるわけではありませんが、人の良い彼はそのことを気に掛けるようになり、それが物語でやがて意味を持ちます。
感想
12年ぶりの新作
前作『チルドレン』から十二年ぶりの新作ということで、ファンからしたら待望の続編です。
ここでも相変わらず陣内は無茶苦茶なことを好き放題言っていて、今どきの子供たちの方がよほど聞き分けが良いのではとあきれてしまいました。
しかし、そんな陣内だからこそ嘘ではない、本心から言っているのだという安心感があり、読めば読むほど不思議と信頼を寄せている自分がいます。
おそらく武藤や彼と関わりを持った少年たちも同様のことを考えているはずです。
長い年月が経ってもその唯一無二なキャラクターは相変わらずで、安心して物語に集中することができました。
きれいごとだけではない
僕が本書で特に気に入っているのは、きれいごとで済まさないという点です。
世の中には痛ましい事件が数多くある中で、故意でなかったり同情の余地のあったりすることもそれなりにあります。
それが未成年であれば判断能力も乏しく、余計に更生するチャンスを与えるべきではと考えてしまいます。
一方で、被害者は場合によっては命を奪われ、未来を失っており、遺族も永遠にその喪失感を埋めることはできません。
だから更生してハッピーエンドなんて言えるわけがないし、例え更生しても一生十字架を背負って生きていかなければなりません。
前作も本書もその辺りは非常にシビアで、結末が決して清々しいものではありません。
では、本書では何を伝えたいのか。
この物語には伊坂幸太郎さんの複雑な思いが込められているので、ぜひ見届けてもらえればと思います。
おわりに
十二年という歳月を感じさせない、陣内らしい物語でした。
彼の破天荒ぶりと、やりきれない物語の複雑さ。
ぜひ堪能してください。
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