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【2020年版】貴志祐介おすすめ文庫ベスト10!あらゆるジャンルが究極のエンタメに昇華された名作選

貴志祐介さんは1996年にデビューしていますが、作品数でいえば多作というわけではありません。

しかし、どれも超一級品です。

ホラー、ミステリ、SFなどジャンルは多岐にわたり、どれも読者にしっかり届くよう計算された究極のエンタメとなっています。

一作でも読めばきっと虜になってしまうので、ぜひこの記事でその一作目、もしくは次に読みたい作品を見つけていただければ幸いです。

ちなみに『防犯探偵・榎本』シリーズですが、短編・長編に限らず一話完結が基本なので、どこから読んでも問題という点から順番に関係なくランキングに入れています。

どうしても順番通りに読みたいという人は、『硝子のハンマー』からお読みください。

第10位『鍵のかかった部屋』

元・空き巣狙いの会田は、甥が練炭自殺をしたらしい瞬間に偶然居合わせる。ドアにはサムターン錠がかかったうえ目張りまでされ、完全な密室状態。だが防犯コンサルタント(本職は泥棒!?)の榎本と弁護士の純子は、これは計画的な殺人ではないかと疑う(「鍵のかかった部屋」)。ほか、欠陥住宅の密室、舞台本番中の密室など、驚天動地の密室トリック4連発。あなたはこの密室を解き明かせるか!? 防犯探偵・榎本シリーズ、第3弾!

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『防犯探偵・榎本』シリーズ第三弾。

収録された四つの短編はどれも密室という設定が共通していて、しかもかなり特殊な密室です。

犯人はすぐに分かるのに、その人が犯人だという決定的な証拠に欠ける。

そんな状況において、どのように密室を崩すのか。

狂言回しにあたる防犯コンサルタントの榎本と弁護士の純子によって数多くの可能性が潰されていきますので、諦めなければ自ずと答えが見えてくるように出来ています。

やりとりはポップ。けれど、トリック自体は本格。

ミステリ好きでも大満足の一冊です。

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第9位『十三番目の人格 ISOLA』

賀茂由香里は、人の強い感情を読みとることができるエンパスだった。その能力を活かして阪神大震災後、ボランティアで被災者の心のケアをしていた彼女は、西宮の病院に長期入院中の森谷千尋という少女に会う。由香里は、千尋の中に複数の人格が同居しているのを目のあたりにする。このあどけない少女が多重人格障害であることに胸を痛めつつ、しだいにうちとけて幾つかの人格と言葉を交わす由香里。だがやがて、十三番目の人格〈ISOLA〉の出現に、彼女は身も凍る思いがした。

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貴志さんのデビュー作である本書。

他人の感情を読み取れる能力を持つ賀茂由香里は、阪神淡路大震災で心に傷を負った人たちを癒すためにこの能力を使います。

由香里のことはすぐに評判になりますが、病院に長期入院していた森谷千尋という少女に出会って由香里は驚きます。

彼女の中には十三もの人格があり、しかもその中の『ISOLA』という人格は明らかに異常で、何か事件を起こしかねないことが容易に想像できたからです。

人格にはそれぞれ必要性があって生み出されたわけで、阪神淡路大震災後に生み出されたISOLAにも生まれてきた理由があるはず。

本書は超常現象を扱いつつも現実的なホラーで、初期から貴志さんの話の構成がうまいことが分かる一作になっています。

特に結末が僕は好きで、この余韻によって本書のホラーとしてのクオリティが一段階上がったように思います。

第8位『天使の囀り』

北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。

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アマゾンへの調査を機に、豹変して異常な自殺を遂げる人。

そして、それに呼応するように同様の自殺がいくつも同時期に見られ、共通点として自殺した人たちはみな『天使の囀り』を聞いていました。

何が彼らを自殺に追いやったのか。

天使の囀りの正体は何なのか。

本筋から外れたように思える話が長く辟易する部分もありますが、しっかり物語に繋がっているのでご安心ください。

多少の根気を要求されますが、その我慢以上の見返りがあるので、ホラーが苦手でなければぜひ読んでいただきたい一冊です。

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第7位『狐火の家』

長野県の旧家で、中学3年の長女が殺害されるという事件が発生。突き飛ばされて柱に頭をぶつけ、脳内出血を起こしたのが死因と思われた。現場は、築100年は経つ古い日本家屋。玄関は内側から鍵がかけられ、完全な密室状態。第一発見者の父が容疑者となるが……(「狐火の家」)。表題作ほか計4編を収録。防犯コンサルタント(本職は泥棒?)榎本と、美人弁護士・純子のコンビが究極の密室トリックに挑む、防犯探偵シリーズ、第2弾!

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『防犯探偵・榎本』シリーズ第二弾。

四つの短編・中編で構成されていて、どれも密室がテーマになっています。

考えもつかない大胆なトリックなので、推理のし甲斐があります。

特に『黒い牙』という短編が気に入っていて、どうしたらこんなトリックが思いつくのだろうと感服してしまいました。

第6位『悪の教典』

晨光(しんこう)学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。しかし彼は、邪魔者は躊躇なく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。学校という性善説に基づくシステムにサイコパスが紛れこんだとき──。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。

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一見、聖人君主のような教師に見せて、実はサイコパスだった蓮実視点で進行する本書。

明晰な頭脳から導き出される殺人計画に、それを何の躊躇なく実行に行える異常性。

清々しいほどの悪人で、グロテスクな部分と妙な爽快感が合わさった、まさに『悪の教典』です。

上下巻ほどのボリュームにしないといけなかったのかという疑問は多少ありますが、それを差し引いても名作であることは間違いありません。

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第5位『黒い家』

若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに…。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。

「BOOK」データベースより

保険会社の日常が恐ろしいことを描いておいて、そんなことは可愛いと思わせられるほど強烈なシーンが連続で描かれる本書。

ホラーでは様々なものが恐怖の対象として描かれますが、人間が一番怖いのではないか。

それが描かれているのが本書です。

描かれていることはどれも現実で起こりえることなのに、絶対に起こらないであろう異常性。

このバランスが秀逸で、怖いと思っても読み進めずにはいられません。

第4位『硝子のハンマー』

日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて……。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。日本推理作家協会賞受賞作。月9ドラマ『鍵のかかった部屋』原作!

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『防犯探偵・榎本』シリーズ第一弾となる本書。

強固な密室を前に、榎本と純子の出会い、そして共闘が描かれます。

しかし、『別解潰し(あり得ない可能性を除外する)』しても真実に辿り着けず、一旦、別の物語が始まります。

読者は戸惑いますが、やがて物語は収束し、驚きの真実が描かれます。

長編だから出来る重厚なトリック。

そして、榎本と純子の関係性がどのようにして出来上がったのかが描かれていることから、本シリーズの中でも一番上位におきました。

無難な順番が好きな人は、本書から順番に読み進めることをオススメします。

第3位『クリムゾンの迷宮』

藤木芳彦は、この世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を、深紅色に濡れ光る奇岩の連なりが覆っている。ここはどこなんだ? 傍らに置かれた携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」それは、血で血を洗う凄惨なゼロサム・ゲームの始まりだった。『黒い家』で圧倒的な評価を得た著者が、綿密な取材と斬新な着想で、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く、傑作長編。

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気が付くと、見知らぬ赤い大地。

まるで画面の中のゲームのようなふざけた設定と、それがリアリティを持つ恐怖。

普段やっているゲームが、現実になったらどれくらい怖いことなのか。

それが描かれている作品です。

ゲームの主催者の意図を考えるミステリ要素もあり、最初から最後までドキドキしながら読むことが出来ます。

第2位『青の炎』

櫛森秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との3人暮らし。その平和な家庭に、母が10年前に別れた男、曾根が現れた。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとする。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意した。自らの手で曾根を葬り去ることを……。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。

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当たり前の家族の幸せを得るために、心を殺して犯罪に手を染める。

立場を知ってしまうことで犯罪がここまで悲しく切なくなることがあるのかと考えさせられる作品です。

ミステリには驚きのトリックだけでなく、それを行うに至った動機、葛藤もまた必要である。

そういった部分を再確認できた作品で、ここまで紹介してきた貴志さんの作品とは一味違う感動を味わうことが出来ます。

第1位『新世界より』

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。

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このランキングを作成するにあたって、本書を一位にすることは一番最初に決めていました。

ジャンルを一言でいえばSFです。

そこにファンタジー要素も加わり、1,000年後の日本を舞台に壮大な物語が上中下巻で描かれます。

最初はユートピアのような平和な世界に見えたのに、実は人間の業が生み出した仮初の平和だった。

次第に恐ろしくグロテスクな描写が増え、いかに1,000年で積み重ねられた業が深いものだったのかが分かります。

構想三十年は伊達じゃない重厚な設定で、ここまでいつまでも心に残り続ける作品はあまりないと思います。

細かい設定は覚えられなくても差し支えはないので、ぜひ心のままに読書を楽しんでください。

おわりに

どれも名作ばかりで順位をつけるのに悩んでしまいましたが、自分なりに人にオススメしたい順番でランキングを組みました。

読みたいジャンルが決まっていれば、まずはそこから読み始めるといいと思います。

貴志さんの作品にはジャンルを超越した、人の心を掴む魅力がこれでもかと詰め込まれていますので、一作読んで気に入れば全作読んでいただきたいというのが本音です。

そこまで好きになっていただければ、この記事を作った甲斐があったというものです。