ミステリー

『鍵のかかった部屋』あらすじとネタバレ感想!シリーズ第三弾は特殊な密室が癖になる

元・空き巣狙いの会田は、甥が練炭自殺をしたらしい瞬間に偶然居合わせる。ドアにはサムターン錠がかかったうえ目張りまでされ、完全な密室状態。だが防犯コンサルタント(本職は泥棒!?)の榎本と弁護士の純子は、これは計画的な殺人ではないかと疑う(「鍵のかかった部屋」)。ほか、欠陥住宅の密室、舞台本番中の密室など、驚天動地の密室トリック4連発。あなたはこの密室を解き明かせるか!? 防犯探偵・榎本シリーズ、第3弾!

Amazon商品ページより

防犯探偵・榎本シリーズ第三弾となる本書。

これまでの作品よりも密室の特殊性がより見られ、推理・想像する楽しみがこれまで以上にありました。

前作『狐火の家』同様、本書も表題作含めて四つの短編で構成されているので、飽きることなくあっという間に読めてしまいます。

まとまった時間に集中して読むのも良いし、通勤・通学など隙間時間に一つずつじっくり楽しむのも良いと思います。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

佇む男

司法書士の日下部は葬儀会社の大石社長と連絡がとれないことを不審に思い、大石が大事な仕事の時などに閉じこもる奥多摩の山荘に様子を見に行きます。

すると、そこには大石の死体と彼が書いたと思われる遺言書が残されていました。

山荘は発見時、密室状態にあったことから、日下部は犯人が専務の池端ではないかと疑います。

これが自殺で処理され、遺言書が正しいものだと認定されてしまえば、池端に全財産が贈与されることになります。

また密室が破れなければ、遺言書を書いたのは大石しか考えられないため、正しいと判断されることになります。

日下部から依頼された防犯コンサルタントの榎本と弁護士の純子は、この密室を崩すためにあらゆる考えを巡らせます。

推理に難航しますが、目撃証言や遺言書の内容などがヒントになり、二人は真実に辿り着きます。

鍵のかかった部屋

表題作。

会田愛一郎は長年窃盗に手を染め、五年前に逮捕されます。

その間に姉が事故で亡くなり、会田は残された息子の大樹と娘の美樹のことが気になって仕方ありませんでした。

そこで出所後、姉の再婚相手である高澤の許可を得て五年ぶりに高澤家を訪れます。

しかし、そこで悲劇が起こりました。

大樹だけが部屋から出てこないことを不審に思った美樹が様子を見に行くと、返事はなく、その日に取り付けられた鍵によってドアが開かない状態でした。

明らかにおかしな事態です。

会田は封印したはずの『アイアイの中指』と呼ばれる道具を使いドアを開けると、そこには練炭による一酸化炭素中毒で亡くなった大樹がいました。

大樹は引きこもっていましたが、自殺するほどは追い詰められていませんでした。

また亡くなった姉は両親から多額の遺産を受け継いでいて、次は大樹と美樹に受け継がれています。

つまり二人が亡くなれば、その遺産は高澤の手に入ることになります。

会田はそう確信しますが、密室の謎が解けず、以前から犯罪者繋がり?で知っていた榎本に密室崩しを依頼。

榎本から純子に連絡がいくという形で、二人はこの密室の謎に挑みます。

歪んだ箱

杉崎は同僚の女性教師との結婚を機に、伯母が副社長を務める工務店に新居の施行を依頼。

ところが完成すると、その家は床が傾き、雨漏りがする明らかな欠陥住宅でした。

杉崎は伯母の夫・竹本を問い詰めますが、あくまで竹本はミスを認めず、杉崎は計画していた殺人を実行。

密室状態であることを第三者に認めさせることで、罪から逃れようと考えます。

杉崎は純子に弁護を依頼し、自分の無実を証明してもらうはずでした。

ところが、純子から協力を要請された榎本が同行したことで、杉崎の計画は狂い始めます。

密室劇場

これまでの作品で何度も登場した劇団『土性骨』の話。

榎本と純子は土性骨の舞台を観賞しますが、舞台終了後、演劇中に劇団員の一人が殺害されていたことが判明します。

容疑者は三人にまで絞られますが、そこからが難航します。

しかし、榎本は自分が犯人を特定すると意気込み、かなりのハイペースで特殊な密室の謎を解決してしまいます。

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感想

犯人の特定されているミステリ

本書に登場する話の大半は『フーダニット』=『誰が犯行を行ったのか』を重視していません。

予め容疑者が絞られている、もしくは犯人が分かっている状態でスタートし、その人物が犯人であることを阻む障害を取り除くことに重きが置かれています。

正解を導くために一つの小説が書けそうなくらい豪華なアイディアが次々に使い捨てされ、本命はもっと豪華だという大盤振る舞いな内容になっています。

防犯探偵・榎本シリーズ第三弾でもネタがワンパターン化することなく、いつでも新鮮な気持ちで読むことが出来る謎ばかりなので、シリーズのファンのみならず、純粋にミステリを愛する人でも楽しめる作品です。

本書から読んでも大丈夫

防犯探偵・榎本シリーズにおいて、榎本と純子は主人公というより狂言回しのような役割で、話ごとの繋がりはほとんどありません。

そのため、基本的にどの作品から読んでも楽しめる仕様になっています。

ただ榎本と純子の出会い、現在の関係になった経緯はシリーズ第一弾『硝子のハンマー』で描かれていますので、第一弾だけは順番通りに読むとスムーズかもしれません。

純子の扱われ方がひどい

最初、純子は美人で正義感に溢れ、たまに天然である程度の認識でした。

ところが、話を経るごとに彼女の披露する推理は場を白けさせるほどふざけたものが多くなり、特に『密室劇場』ではスベッていることが明示されています。

もはや純子が美人であるというのは本人しか言っていない気がするので、ただのおバカちゃん扱いです。

もちろん彼女の推理があるからこそ別解潰しが効率的に出来ているので必要な役割なのですが、これが今後、どこまでひどくなっていくのか。

ある意味、見どころです。

おわりに

毎回見たことのないような密室ばかりを提供してくれる作品で、第三弾となる本書も期待を裏切らない発想と緻密さで満ちていました。

最初は榎本と純子の今後の関係などに注目していましたが、どうも二人の時間は止まっていて、進展しそうにありません。

やはり本書の魅力は密室にあり、純粋にミステリとして楽しむのが正解かもしれません。

次の話はこちら。