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『新世界より(上)』あらすじとネタバレ感想!1000年後の日本を舞台にしたSF傑作

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1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖(かみす)66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄(しめなわ)で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力(念動力)」を得るに至った人類が手にした平和。念動力(サイコキネシス)の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた……隠された先史文明の一端を知るまでは。 

Amazon商品ページより

本書は『青い炎』、『クリムゾンの迷宮』などジャンルに関係なく数々の名作を生み出してきた貴志祐介さんの、僕的な看板作品です。

SF、ファンタジー、エンタメ、ラノベなど様々なジャンルの要素を持ち、どれも一級品といえるほど圧倒的なクオリティを誇っています。

千年後の日本を舞台に、一見のどかで平和な世界を描いているように見せて、実は知りたくもないような残酷な真実を秘めています。

上中下巻と長めですが読み始めたら一気読みは必至なので、ぜひこの記事を読んで手にとるまでのハードルを乗り越えてもらえればと思います。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

物語の舞台

冒頭に書いた通り、本書の舞台は千年後の日本です。

呪力と呼ばれる神の力のごとき超能力を人間は会得していて、外界には危険が溢れていて、外から危険が入り込まないよう結界が張られています。

危険の中でも最も恐れられているのが悪鬼と業魔と呼ばれる存在ですが、しばらくは詳細が明かされません。

子どもたちは呪力を自由自在にコントロールするための教育を受けますが、そのやり方には目的の読めないところが多々あり、その謎は徐々に明らかになります。

呪力という特別な力以外にも、現代の日本とは大きく違う点がいくつもあります。

人間同士は愛し合うものであり、幼い頃から男女関係なくスキンシップが推奨され、それは恋人のような甘美なものも含まれています。

また、過去のことは厳重に秘匿され、教育でもほとんど教えられません。

発掘される書籍は非常に重要なもので、図書館司書が要職だったりと、現代の感覚とのズレが一つの魅力になっています。

これらは本書の設定のほんの一部ですが、こういった僕らの知らない日本が舞台となって物語は進行します。

呪力の目覚め

本書の主人公は渡辺早季という女性で、彼女が体験した一連の事件を記した手記=本書ということになります。

早季は和貴園と呼ばれる小学校に通い、友だちから遅れるも呪力に目覚め、真言(マントラ)と呼ばれる呪力を起動する鍵となる言葉を授かります。

卒業後は全人学級に進み、今までの友だちと一緒に呪力の扱いなどを学びます。

隠された歴史

早季は覚、瞬、真理亜、守と同じ班を組み、研究課題の一環で夏季キャンプに行きます。

十二歳の時でした。

五人には他の子どもたちにない好奇心があり、担任の教師の言いつけを破ってカヌーで行ってはいけない場所まで行きます。

五人はそこでミノシロモドキという生き物を捕まえます。

しかし、それは生き物ではなく、図書館の自立進化型・自走式アーカイブと呼ばれる存在で、四千万冊近い書籍のデータを保存していました。

ミノシロモドキが語ること。それは早季たちの知らないことばかりでした。

呪力と呼ばれる力はかつてPK(サイコキネシス)と呼ばれていて、能力を巡って血なまぐさい争いがあったこと。

PKが人間に向けられないよう様々な取り組みがなされたこと。そこには人間の遺伝子に組み込んだメカニズムなども含まれていました。

悪鬼や業魔と呼ばれる存在は特定の疾病を発症した人間であること。

これらは大人が隠してきた日本の歴史でした。

そして、早季たち子どもが知ることは重大な規則違反です。

ミノシロモドキが話している途中で離塵という僧侶が現れると、ミノシロモドキを破壊。

悪魔の言葉に耳を傾けた早季たちを罰するために、彼らの呪力を取り上げてしまうのでした。

罰と危機

呪力を取り上げられた早季たちは離塵についてどこかに連行されますが、風船犬という奇妙な生き物が現れ、威嚇の末に爆発。

それによって離塵は死亡します。

しかし、まだ安心はできません。

バケネズミと呼ばれる存在に囲まれ、呪力の使えない五人では太刀打ちできません。

そこで五人はバラバラに逃げ出しますが、早季は転んだ拍子に体を痛めて動けなくなり、それを助けに来た覚もバケネズミに捕まってしまいます。

なんとか隙をついて逃げ出すと、今度は人間に従順なバケネズミに出会い、これで助かったかに思えました。

しかし、本当の危険はこれからでした。

感想

圧倒的な世界観

貴志さんの作品はどれも圧倒的な雰囲気を持っていて、目を逸らしたくても読んでしまう、そんな魅力を持っています。

僕は貴志さんの作品の全てを読んだわけではありませんが、その中で本書は圧倒的な世界観を持っていました。

千年後の日本という未来の世界なのに、どこか懐かしさを感じる穏やかな世界。

神の力とも呼べる呪力を持って生まれ、争うことなく過ごす人々。

今の世界に至るまでの、隠された歴史。

読み始めてすぐにその世界観に圧倒され、傑作に出会ったと確信が持てました。

こんな感覚は一年に数作あるかどうかなので、それくらい衝撃的な作品でした。

様々なジャンルを内包している

この記事のタイトルでSFと書きました。

本書は現代では考えられないような技術が登場し、それらはまさしくSFです。

しかし、それだけではありません。

呪力や空想上の生物、冒険などの要素はファンタジーと言えますし、隠された真実を求める過程はミステリと言えます。

扱っている題材はライトノベルと言えますし、とにかく様々なジャンルを本書は内包しています。

これから手にとる人からすれば逆に迷ってしまうくらい盛り沢山な内容です。

ですが、それはより多くの人たちに手にとってもらえるチャンスがあるということです。

どのジャンルであれば、求めた形とは違ってもその期待を越える魅力があると僕は思いますので、少しでも気になる点があればぜひ手に取ってください。

没入感を生む上巻

上中下巻という大ボリュームなので、本書はあくまで序章に過ぎません。

しかし、序章にして予想の付かない展開、想像を絶するほどの結末が待っていることは十分に感じ取れました。

上巻を読み終えた人で、残り二冊を読まないという選択肢はまずありえません。

最高の掴みとなる一冊だったのではないでしょうか。

おわりに

これまで数々の名作を生み出してきた貴志さんですが、本書はそれらすらも凌駕する魅力を秘めています。

上中下巻というボリュームについ尻込みしがちですが、読み始めてしまえばあとは作品の持つ魅力に浸るだけです。

ぜひ臆せずチャレンジしてみてください。

次の話はこちら。

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