『天空の蜂』あらすじとネタバレ感想!原発の問題を突きつける極限サスペンス
奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。
「BOOK」データベースより
『原発』という少し手に取りづらいテーマ。
そして文庫本で六〇〇ページを超える長編。
評判が良かったので購入したものの、いつまでも手にとる決心がつかず、購入して二年が経ってようやく読むことが出来ました。
東野さんいわく、自信作だったけれど売れなかった小説だそうですが、結果からいうとめちゃくちゃ面白かったです。
原発についてどう考えるかという難しいことは抜きにして、数時間のタイムリミットの中で刻一刻と変化する状況はスリル一杯で、一気読みしないと気が済まないほど引き込まれてしまいました。
2015年には映画化されていて、二十年経っても色あせない魅力、メッセージがあることを証明してくれました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
長い一日の始まり
この日、湯原一彰にとってこの五年間が報われる日となるはずでした。
湯原は錦重工業で防衛庁相手に新型ヘリコプターを開発していて、今日はそのお披露目日でした。
湯原と同僚の山下は妻と息子をそれぞれ連れて出社し、ヘリコプターが飛び立つのを待ちます。
それを待ちきれない湯原の息子・高彦と山下の息子・恵太は、内緒でヘリコプターのある格納庫を覗きにいきます。
二人はヘリコプターの存在感に感動し、中に乗り込みました。
高彦はちょっとしたいたずらで外に出ると、タラップを移動させて恵太を降りられないようにします。
するとその時、ヘリコプターは誰も操縦していないにも関わらず動き出しました。
高彦は慌てて恵太を降ろそうとしますが、タラップを移動させてしまったため、降りることが出来ません。
ヘリコプターは必死な二人を無視して上空に飛び立ち、恵太は連れ去られてしまいます。
無人のヘリコプターが向かった先、それは高速増殖原型炉『新陽』の真上でした。
裏目に出た新技術
ヘリコプターに乗っているのは恵太だけ。
ではなぜヘリコプターは動き出したのか。
それは何者かが遠隔操作で動かしているからでした。
通常のヘリコプターであれば、必要な機材を用いても一晩程度では遠隔操作できるよう細工することなど出来ません。
しかし、盗まれたヘリコプター『CH-5XJ』は実用ヘリとして初めてデジタル方式が採用されているため、容易にとはいきませんが遠隔操作をすることは可能です。
さらに新技術であるAFCS(自動航行制御システム)が組み込まれているため、着陸以外はパイロットなしで動かすことが出来ます。
AFCSの搭載は『Bシステムプロジェクト』と呼ばれ、五年にわたって湯原が心血を注いできたものです。
それが報われるはずが、最悪な日になってしまいました。
目的
盗まれたヘリコプターは関係者の間では『蜂(Bee)』と呼ばれていました。
犯人グループが『天空の蜂』を名乗ったことから、Bシステムプロジェクトに何らかの形で関係していることが予想されますが、誰にも思い当たる節がありません。
犯人の目的。
それは、現在稼働している『新陽』以外の原発を全て使用不能にして、建設中の原発も全て建設を中止させることでした。
従わなければ、ヘリコプターは新陽に落とされます。
それによる被害は計り知れなく、今すぐにも避難、もしくは犯人の要求を飲む必要があります。
しかし、日本政府は要求を飲むつもりはありません。
かといって、避難を大々的に呼びかけることもありません。
というのも、避難を呼びかけるということは原発の安全性を自ら否定するようなもので、他の原発反対意見に屈したことになるからです。
犯人はヘリコプターを新陽にわざと落とすつもりはありませんが、燃料が切れれば当然落下します。
燃料が切れるのは午後二時頃。
残された時間は五時間程度。
その猶予の中で、何が出来るのか。
こうして長い一日が幕を開けました。
感想
迫りくるスリルに興奮するサスペンス
僕は『24』を見たことはありませんが、本書を読んでいると常に時間を刻むあの音が脳内に流れていました。
それくらい常に緊迫感があり、いつヘリコプターが落ちてしまうのだろうと気が抜けませんでした。
作品内では五時間程度なのに、小説としては文庫本で六〇〇ページ超え。
それゆえに描写も濃厚で、圧倒的なリアリティを持って読者を揺さぶってきます。
久しぶりにミステリ以外の東野作品を読みましたが、こんなに面白かったのかと驚かされました。
まるで現実のような対応
原発の問題となると、気になるのは政府の姿勢、態度です。
これが驚くほど暢気、というか自分勝手なもので、まるで目の前のテレビで会見が流れているのではないかと思うほどイライラしました。
条件を容易に飲まないのは良いとしても、あの通り一辺倒な対応で問題は本当に解決するのか。
仮にヘリコプターが原発に落ちたとしても、自分には関係ないと逃げ出すのではないか。
妄想は膨らみ、そのおかげでフィクションだからと思わずに作品を受けとめることが出来ました。
本書から何を思うか
原発の問題はいつの時代になっても耳にしますが、自分事ではないからとあまり深く考えたことのない人が多いのではないでしょうか。
僕も東日本大震災の時、連日、原発事故のニュースが流れて自分なりの考えを持つようになりましたが、その意識も時間の経過と共に薄れてしまっていたのが現実です。
なので、本書を読むことで改めてこの問題について考えるきっかけを得ることが出来ました。
原発の危険性はいうまでもありません。
一方で、いずれ訪れるエネルギーの枯渇に備え、効率的にエネルギーを生み出す方法も検討しないといけません。
数年ではなく、数十年から数百年。
自分たちよりも何世代も後のことを考え、僕らはどんな選択をとらないといけないのか。
自分に何が出来るのかと難しく考えず、まずは考えてみようと思います。
それがやがてこの問題に本格的に直面した時に、自分や自分の子どもたちの未来のためになると信じています。
おわりに
とても二十年以上も前に書かれたとは思えない作品で、今から読んでも決して遅くはない内容です。
問題提起はもちろんのこと、エンタメとしても息つく間もない怒涛の展開が、非常に読み応えがあり、文庫で六〇〇ページを超える大ボリュームも気にならないほど一気読みさせてくれます。
東野さんが自信を持って本書を勧めることにも納得がいきました。
そして、東野さんはミステリ以外でも圧倒的な魅力を見せつけてくれることを再認識させてくれる一冊となりました。
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