サスペンス

道尾秀介『骸の爪』あらすじとネタバレ感想!二十年前の失踪を追う真備シリーズ第二弾

ホラー作家の道尾は、取材のために滋賀県山中にある仏像の工房・瑞祥房を訪ねる。彼がその夜見たものは、口を開けて笑う千手観音と、闇の中で血を流す仏像。しかも翌日には仏師が一人消えていた。道尾は、霊現象探求家の真備、真備の助手・凛の三人で、瑞祥房を再訪し、その謎を探る。工房の誰もが口を閉ざす、二十年前の事件とはいったい。 

「BOOK」データベースより

タイトルからは分かりにくいですが、真備シリーズ第二弾となる本書。

メインの登場人物は共通していますが、前作を読んでいなくても十分楽しめるので、知らずにこちらから読んでしまっても大丈夫です。

仏像をはじめとして、神秘的なものを扱っているからこそ恐怖が映え、それを探偵役である真備が解き明かすことでカタルシスを生み出す大満足の一冊です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

偶然訪れた寺

道尾秀介は従弟の結婚式で滋賀県大津市を訪れていましたが、手違いで宿が手配されていませんでした。

そこで従弟の妻は友人である野方摩耶のいる瑞祥房という仏所を紹介し、道尾はそこに泊まります。

瑞祥房では年末行事のための大量の仏が彫られ、大忙しでした。

行方不明

道尾は仏像の中でも一際目を引くものを見つけます。

それは韮澤隆三という人物によって彫られたものでしたが、彼は二十年前に失踪し、ここで彼の名前を出すことはタブーになっていました。

また彼の彫った仏像はなぜか注文したアメリカ人によって返品されていますが、その理由も分かっていません。

謎の声

道尾はその夜、カメラを置いてきてしまったことを思い出して、一人で工房に取りに行きます。

すると昼間に見た韮澤の仏像がありましたが、昼間と違って笑った顔をしていました。

おかしなことはこれだけではありません。

道尾は寝床に戻る途中、『マリ』と何者かが呟く声を聞きます。

翌日、岡嶋という仏師が姿を消していました。

さらに道尾が昨晩のことを話したところ、瑞祥房の人たちは態度を変え、彼に出ていくよう命じるのでした。

調査

道尾は東京に戻ると、真備霊現象探求所を訪ねると、旧友である真備庄介と助手である北見凛にこれまでの経緯を説明します。

真備は自身で調査するも道尾の体験したことについて説明できず、それによって強烈な興味を持ちます。

そこで今度は三人で瑞祥房を訪れ、一連の出来事について調査を始めます。

すると岡嶋が見つからないまま別の仏師も姿を消し、おかしな事態に巻き込まれていきます。

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感想

キャラクターを活かした堅実さ

僕は本書がシリーズものと知らずに読みました。

なので真備たち主要の三人の物語はこれがはじめてだったのですが、すんなり受け入れられるくらいにキャラクターがしっかりしていて、三人が並ぶ姿が容易に想像できました。

本書は三人のキャラクター性を軸にして、仏像など言葉では説明できない神秘的なものを広く展開していく構成になっています。

そこに意外性や驚きはありませんが、堅実でシリーズものならではの面白さがありました。

しかし、シリーズものだからといって前作と深い繋がりがあるわけではなく、あくまで登場人物が共通している程度です。

本書から読み始めても全く問題はないことを改めて書いておきます。

終盤に一気に収束する

本書が一気に面白くなるのは終盤に入ってからです。

それまで好き放題広げてきた風呂敷が、読者を置き去りにするような猛スピードで畳まれていきます。

そこには予想すらしなかった驚きの事実がふんだんに詰め込まれていて、まさに大盤振る舞いです。

一つの物語でここまでアイディアを詰めこんでいるのもすごいし、詰め込んでもこれだけ綺麗に成立させるのは並大抵のことではありません。

道尾さんの実力の高さがうかがえる部分でした。

中盤まで多少の辛抱が必要

読み終えてみれば、本書はとても面白かったと断言できます。

しかし、真備による推理がはじまるまでが長く、人によっては苦痛に感じるかもしれません。

というのも、本書はとにかく情報量が多いです。

何一つ明かされないまま謎ばかりが増え、読者が見落としがちな些細なセリフ、仕草も実は意味があった、というパターンが無数に存在しています。

それが一つずつ解けていく瞬間はとてつもなく快感なのですが、それまでが我慢を強いられます。

瑞祥寺の人たちも排他的でとっつきづらく、終盤になるまでなかなか感情移入できないようなっています。

このあたりを耐えしのげるかどうかが、本書の評価を分けるポイントだと思います。

おわりに

これだけ風呂敷を広げ、全てにおいて意味を持って回収する構成はまさに圧巻で、道尾さんの実力を知れる一冊といえます。

ホラー、サスペンス要素が強いですが、ミステリとしても良くできているので、じっくり読んで伏線を自身で回収するのも一つの楽しみ方だと思います。

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