『生命式』あらすじとネタバレ感想!村田紗耶香の危険が詰まった短編集
夫も食べてもらえると喜ぶと思うんで――死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、村田沙耶香自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集!
Amazon商品ページより
村田紗耶香さんといえば、常識の枠から遠く離れた、まるで理解の及ばない強烈な世界を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
本書はそんな危険な短編が十二も収録されていて、とにかく心に様々な刺激を与えます。
たまたま体調が芳しくない時に読んでしまい、しんどかったというのが正直な感想です。
この衝撃を受け止められるタイミングで、じっくり読んでほしい一冊です。
本書に関する村田さんへのインタビューはこちら。
従来の価値観を揺るがす! 死んだ人間を食べながら、男女が受精相手を探す…『生命式』村田沙耶香インタビュー|ダ・ヴィンチweb
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
生命式
表題作。
人肉は食べてはいけない。
それが常識だったはずですが、人口の急激な減少とともに三十年の間で価値観が大きく変わりました。
誰かが死んだ時、葬式に変わって『生命式』と呼ばれるものが行われるようになります。
生命式では死んだ人間の肉を食べ、その際、参加した男女が受精相手を探し、見つかれば途中で式を抜け出して受精を行います。
死から生を生む、というスタンスが大衆に受け入れられ、今では生命式がすっかり定着していました。
この物語は、まだ食人が許されていなかった頃の価値観を引きずる女性が視点となって描かれます。
素敵な素材
人間は死後、体のあらゆるものが再利用されていました。
人毛がセーターになり、骨が指輪やインテリア雑貨になり、歯がピアスになるなど、なんでもありです。
主人公のナナも人から生まれたものが好きで、価値観に揺らぎなどありません。
一方で、婚約者のナオキは死んだ人間が素材となることに激しい嫌悪感を抱いていて、そのことでナナと度々ケンカしていました。
そんな二人の関係に変化が訪れたのは、ナオキの実家を訪ねた時のことでした。
素晴らしい食卓
食事の好みが大きく異なる人たちが一堂に会する話。
宇宙食を思わせる次世代の食事や、魔界出身という設定から作り出された謎の食事。
その全てが食卓に並ぶ時、予想外の事態が引き起こされます。
夏の夜の口付け
他人には理解されない価値観を抱く二人の老年期の女性・芳子と菊枝を描いた話。
四ページで非常に短く、あっという間に読めます。
二人家族
『夏の夜の口付け』の芳子と菊枝が登場します。
前の作品で芳子は夫がいましたが、本作では菊枝と四十年前から一緒に暮らしているとあるので、同一人物が異なった人生を歩んだ場合。
そんな感覚で読むと良いのではないかと思います。
大きな星の時間
女の子は父親に連れられて小さな街に引っ越してきますが、そこでは誰も眠りません。
この設定から思わぬ恐怖、悲しさが引き出され、四ページの中でグッと引き込まれます。
ポチ
犬といえば、な名前ですが、村田作品であれば当然そんなことはありません。
ポチは人に飼われていますが、犬ではありませんでした。
魔法のからだ
中学二年生の瑠璃と誌穂は、仲が良いことを周囲から不思議に思われていました。
体の成長度合いでいえば確かに二人は不釣り合いに見えるかもしれませんが、幼く見える誌穂が実は一番大人なのではと瑠璃は考えます。
その理由は、誌穂は他人の言葉や価値観に引きずられることなく、自分の身体に丁寧に向き合っているからです。
この物語では、思春期でまだまだ知らないことの多い瑠璃や誌穂の感じることが鮮明に描かれます。
かぜのこいびと
奈央子の部屋に吊り下げられたカーテンは風太と名付けられ、大事にされます。
この物語は、風太目線という斬新な設定で描かれています。
パズル
菩薩のような女性・早苗を描いた作品。
彼女はどんなことでも嫌なことをせず、誰にも嫌味なく優しいため、会社の同僚からも受け入れられていました。
しかし、そんな彼女の異常性が次第に明らかになります。
街を食べる
理奈は東京で一人暮らしをするようになってから好き嫌いが激しくなり、彼女は東京の野菜が自分に合わないからではと考えます。
そんな時、幼少期のことを思い出し、理奈は都会に生えた雑草を摘んで食べるようになります。
孵化
ハルカは大学生の頃、自分に性格がないことに気が付きます。
周囲の反応に合わせて自分のキャラクターを作るため、付き合う友人によって性格はバラバラ。
その結果、いくつもの人格がハルカに内包され、そのことが予想外の物語を生み出します。
感想
出し惜しみないアイディア
本書には表題作をはじめ、一度読んだら頭から離れない強烈な作品が数多く収録されています。
まさにアイディアの宝庫で、そこに出し惜しみはありません。
どの作品にも感じたのが、『普通』という言葉への村田さんの疑いです。
なぜ人を食べてはいけないのか。
なぜ死んだ人の身体を再利用してはいけないのか。
そんな疑問に対する、村田さんのアンサーが本書です。
あまりに自然に僕らの知らない常識が描かれているので、油断していると自分がおかしいのか、と頭がどうにかなりそうでした。
一気読みにはくどい
十二編も収録してあって、かつ短いもので四ページとかなりショートなので、一見スラスラ読めそうに思えます。
ところが実際はなかなかのくどさで、僕は読み切るのに三日かかりました。
どれも強烈な世界観で面白いのだけれど、作品が変わるごとに新たな価値観を提示されるので、頭を切り替えるのにかなり苦労しました。
おすすめは通勤・通学の電車で少しずつ読み進めるか、飽きたら違う本で一旦リフレッシュすることです。
おわりに
村田さんの危険な魅力がこれでもかと凝縮した作品でした。
彼女ファンはもちろんのこと、はじめて彼女の作品を読むという人にもうってつけなので、タイトルか表紙でビビッときたらぜひ挑戦してみてください。
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