『御手洗潔の挨拶』あらすじとネタバレ感想!御手洗潔の魅力が詰まった短編集
嵐の夜、マンションの十一階から姿を消した男が、十三分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。男は殺されるために謎の移動をしたのか?奇想天外とみえるトリックを秘めた四つの事件に名探偵御手洗潔が挑む名作。
「BOOK」データベースより
御手洗潔シリーズ第三弾となる本書。
前の話はこちら。
シリーズ初の短編集で、短い中に御手洗の魅力がぎゅっと詰まった作品に仕上がっています。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
数字錠
御手洗の事務所を訪れた刑事の竹越は、とある殺人事件の相談を持ち掛けます。
看板会社の社長・吹田が殺害され、警察は容疑者をすでに絞っていました。
吹田は二人の男性と投機グループを作っていて、そこで株に関する恨みを買っていて、警察はこの二人を容疑者として見ていました。
ところが、殺害現場の部屋のドアには数字錠がかけられていて、密室でした。
他にも出入口はありますが、そこの鍵は従業員しか持っておらず、容疑者の二人には開けることができません。
では誰が犯人なのか。
警察一同がお手上げの中、御手洗は事件解明に乗り出します。
疾走する死者
隈能美堂巧(タック)が公園でサックスの練習をしていると、アカと名乗る男性に声を掛けられます。
アカはジャズ好きの集まり『バード・ケイジ』のメンバーで、その集まりにタックを誘います。
タックはジャズメンバーのパフとともにその集まりに参加すると、そこにはアカを含めたバード・ケイジのメンバーが集まっていて、そこに御手洗と石岡もいました。
会が進行すると、突然、停電が起こります。
その時、参加者の一人・久保は真珠のネックレスを奪って逃げだし、一同は追いますが、そこに久保の姿はなく、マンションから飛び降りたとした考えられない状況でした。
ところが、久保は少し離れた線路上で見つかり、死体となっていました。
どうやって一瞬でそこまで移動したのか。
一同が困惑する中、御手洗の名推理が光ります。
紫電改研究保存会
私が七年前に経験した不可解なものとの出会い。
新聞社に勤めている頃、会社に紫電改研究保存会の会長・尾崎善吉が訪れます。
紫電改とは大戦当時に圧倒的な性能を有した戦闘機で、先日、四国沖で引き揚げられたとニュースになっていました。
さらにその現場に取材中のセスナ機が墜落していて、その所有者は私が勤める会社でした。
不思議なことは他にもあります。
見つかった紫電改は機体の不調によって着水したと推測されていますが、風防ガラスは閉まったままなのに遺体はどこにもない。
不可解な話に、私は次第に引き込まれていきます。
ギリシャの犬
御手洗と石岡のもとに、青葉淑子という女性が依頼人としてやってきます。
彼女は兄、その子供と一緒に暮らしていて、ある日、馴染みのタコ焼き屋に行くと、店がなくなっていたのだといいます。
さらに飼い犬のクロは、店を盗んだ犯人に毒殺されたのだと淑子は考えていました。
犯人を捜す手がかりは、現場に残されていた暗号のみ。
御手洗たちは捜査に乗り出しますが、青葉家に向かうとそこには竹越がいて、彼は慌ててこういいます。
青葉家の息子が誘拐されたのだと。
感想
魅力ある事件
まず本書は短編集らしく、バラエティ豊かな事件が目白押しです。
誰にも分からない数字錠。
走る死体。
平成初期特有のこてこてミステリですが、それが事件の魅力になっていて、推理意欲を駆り立てられました。
登場人物も印象的な人が多く、頭の中で想像することも容易。
ミステリは読んでいて楽しいということを再発見した一冊でした。
御手洗の存在感
上記したように事件自体がすでに面白いのですが、それでも隠せない御手洗の魅力がそこにはありました。
彼が登場するだけでその場の注目をかっさらい、その多大なる期待すら超えてしまう大活躍。
シリーズの主役にふさわしいところを改めて見せつけてくれました。
本書は短編ゆえに色々な視点から御手洗の活躍を見ることができるので、シリーズファンは必見です。
おわりに
長編、短編関係なく御手洗が魅力的であることを証明した一冊です。
この時代のミステリはなんて面白いのだろう。
今後先、時代ゆえにこの雰囲気のミステリは生み出されないと思うので、また気が向いたら読み返してしっかり堪能したいと思います。
次の話はこちら。
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