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『凶犬の眼』あらすじとネタバレ感想!日本全土の巻き込む抗争を描いたシリーズ第二弾

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広島県呉原東署刑事の大上章吾が奔走した、暴力団抗争から2年。日本最大の暴力団、神戸の明石組のトップが暗殺され、日本全土を巻き込む凄絶な抗争が勃発した。首謀者は対抗組織である心和会の国光寛郎。彼は最後の任侠と恐れられていた。一方、大上の薫陶を受けた日岡秀一巡査は県北の駐在所で無聊を託っていたが、突如目の前に潜伏していたはずの国光が現れた。国光の狙いとは?不滅の警察小説『孤狼の血』続編!

「BOOK」データベースより

『孤狼の血』に続くシリーズ第二弾となる本書。

前の話はこちら。

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前作から二年が経過し、日岡は田舎の駐在所に左遷させられています。

凶悪事件とは無縁なのどかなで場所ですが、そこでも日岡は前作同様、大きな事件に巻き込まれ、ヤクザの抗争に巻き込まれていきます。

日岡の成長が頼もしい反面、時間の経過の残酷さなどもうかがえる部分があり、重厚な物語は読み応え抜群です。

本書の刊行記念インタビューはこちら。

【刊行記念インタビュー】柚月裕子『凶犬の眼』

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

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あらすじ

左遷

前作『孤狼の血』から二年が経過しています。

一年前、日岡は呉原東署捜査二課から比場郡城山町の駐在所に異動になり、これはいわゆる左遷でした。

日岡は前作で起きた事件に首を突っ込み過ぎ、警察上層部は新たな火種にならないよう彼を左遷したのでした。

日岡は自分のしたことを後悔していないつもりですが、駐在としての仕事は退屈そのもので、警察官としての使命感は薄れつつありました。

新たな火種

そんなある日、立ち寄った行きつけの小料理屋『志乃』で旧知の間柄である一ノ瀬や瀧井が誰かと会っているのを知ります。

気まずそうな晶子を振り切ってその場に顔を出すと、そこには見覚えのある顔がいました。

瀧井は建設会社の社長で吉岡だと紹介しますが、日岡は男が国光だと気が付きます。

国光は日本最大の暴力団組織・明石組の二次団体である北柴組の若頭で、殺人幇助の容疑で全国に指名手配されていました。

国光はやり残したことがあるといい、それが終われば日岡に手錠をはめてもらうと宣言。

日岡は迷った末に国光を見逃し、動向を注視することにしました。

来訪者

国光の言葉が頭の中で繰り返される中、国光は日岡の勤務する駐在所に顔を出します。

彼はゴルフ場建設の責任者としてこの地に留まるというのです。

この場所は田舎で余所者がやってくる心配がなく、工事責任者という立場であれば地元の人間からも怪しまれることもありません。

絶好の隠れ場です。

しかし、国光にとって日岡は情報が漏れる心配の種です。

そこで金で沈黙を買おうとしますが、日岡は反発。

部下はいきりたちますが、日岡の反応は国光の期待通りでした。

国光は日岡を信用できると判断し、この地に留まることを決定します。

ところが、ひょんなことから国光の背中に彫られた入れ墨を町の少女・祥子に見られてしまい、日岡の中に不安が広がります。

激化

日岡の不安は日に日に募ります。

明石組と抗争中の心和会。そのトップの家にロケット弾が撃ち込まれるという事件が発生します。

明石組は四代目組長を心和会に殺害されており、これは明らかにその報復でした。

この事件を皮切りに両者の争いは激化。

全面戦争かと恐れる日岡ですが、勢力的に心和会の負けは明らかで、国光もしっかり落としどころを考えていました。

国光は明石組幹部の更なる殺害を希望していましたが、心和会は全面戦争を避けるためにそれを許可しません。

そこで国光は戦争の負けを確信。手打ちするために根回しをします。

問題なく話し合いが進めば戦争は終わり、北柴組のトップの安全も保証されます。

そうすれば国光の心残りはなくなり、約束通り逮捕されるといいます。

しかし、その約一月後、国光たちが人質立てこもり事件を起こし、警察もマスコミも騒然とします。

約束が果たされる前に、何者かが国光たちのことを警察に通報したのでした。

感想

閉塞感からの解放

序盤、『孤狼の血』の頃とは違い、無気力で閉塞感に囚われた日岡が痛々しく描かれています。

信念のもとに警察の意に背いたとはえ、いつ終わるかも分からない駐在所生活は彼の使命感や情熱を確実に殺していました。

ところがそこにヤクザの抗争の話が浮上し、不謹慎ながらも日岡の心に再び火がつきます。

争いがないに越したことはありませんが、日岡にとって命をかけた警察官としての職務こそが生きがいであり、それは理屈ではないのでしょう。

日岡に情熱が戻ると同時に物語も一気にスピードアップしていきます。

この緩急があるからこそ疾走感をより感じることができました。

この命がけの、お互いの信念をぶつけ合いこそがこのシリーズ最大の面白さだと改めて思いました。

遺志を受け継いだ日岡

前作で亡くなった大上。

日岡はまだその遺志を受け継ぐか決めかねていましたが、本書にて腹を括り、大上の遺志を受け継ぐことを決めます。

これは前作で舎弟のような二人の姿を見てきた読者であれば、これほど嬉しいことはありません。

しかし一方で、素直に喜べないこともあります。

ますます危うい立場に

大上の遺志を受け継ぐということは、警察の信用を失墜させるだけの秘密を持つということであり、警察内での扱いはよりひどいものになります。

しかも特定のヤクザと癒着し、成果を挙げるためであればどんな違法行為もいとわない。

その姿は大上そのもので、あの純粋だった日岡がここまで変わるのかと驚かざるをえませんでした。

大上の信念を受け継いだその先に、日岡はどんな未来を見つけるのか。

幸せになってほしい一方で、自分の信じる生き方を貫いて、大上や彼を信じる者の期待に応えられる男であってほしいとも願わずにはいられませんでした。

おわりに

シリーズ第二弾でもその勢いはとどまることがなく、むしろ世界観がより広がり、さらなる争いの火種しか見えない状況です。

血で血を洗う争いに終わりはくるのか。

本気が詰まった物語は最高に面白い、と改めてこのシリーズに出会えたことを感謝です。

次の話はこちら。

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