『検事の死命』あらすじとネタバレ感想!死命に意味が込められたシリーズ第三弾
電車内で女子高生に痴漢を働いたとして会社員の武本が現行犯逮捕された。武本は容疑を否認し、金を払えば示談にすると少女から脅されたと主張。さらに武本は県内有数の資産家一族の婿だった。担当を任された検事・佐方貞人に対し、上司や国会議員から不起訴にするよう圧力がかかるが、佐方は覚悟を決めて起訴に踏み切る。権力に挑む佐方に勝算はあるのか(「死命を賭ける」)。正義感あふれる男の執念を描いた、傑作ミステリー。
「BOOK」データベースより
『佐方貞人』シリーズ第三弾となる本書。
前の話はこちら。
前作と同様、検事時代の佐方を描いた二つの短編と一つの中編で構成されています。
タイトルにある通り、『使命』ではなく『死命』であるところがポイントで、佐方の検事としての生き様が表れています。
誰のために、何のために罪と向き合っているのか。
これまでの佐方と変わらない志は読んでいて気持ちが良く、シリーズを通して読んできた人であれば大満足間違いなしの一冊です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
第一話『心を掬う』
佐方が米崎地検に来て一年が経った頃の話。
米崎市内で郵便物が届かない被害が多発し、気になった佐方は事務官の増田に依頼して調べてもらうことにします。
すると郵便を出した時間や場所は異なるものの、全て中央郵便局の取り扱いだったことが判明します。
佐方は様々な情報から普通郵便にお金が入っていて、郵便局員がそれを盗んだのではないかと仮説を立てます。
信じがたい話ですが、郵便事業の絡む事件を担当する郵便監察官に確認したところ、監察官の福村もまたこの事実を知っていました。
容疑者は絞れていますが、その人物がやったという証拠が得られていません。
そこで佐方たちは福村と協力してこの事件の解決に乗り出します。
第二話『業をおろす』
前作『検事の本懐』に収録されている短編『本懐を知る』と同時期の話。
佐方は父・陽世の十三回忌のために地元・広島に帰省。
陽世の法事を執り行ってくれる上向井英心のもとを訪れ、長年の疑問を打ち明けます。
それは、陽世が無実の罪を進んで受けた理由でした。
陽世と幼少期から共にした英心は事情を知っているようですが、なかなか明かしてくれません。
はぐらかされる佐方ですが、全ては法事の席で明らかになりました。
そこには、誰も打ち明けられなかった陽世の苦悩が隠されていました。
第三・四話『死命を賭ける』、『死命を決する』
佐方と増田の担当する案件の中で、電車内で起きた強制わいせつ罪に問われている事件がありました。
被疑者、および被害者の証言は食い違い、判断に困ります。
ところが、被疑者である武本の親族は県内有数の資産家で、何としても武本の無実を勝ち取ろうとしていることが判明します。
一方、被害者の玲奈は過去に補導された経験などあり、誰も彼女の証言を信じようとしません。
しかし、佐方だけはありのままの事実を見て、武本が虚偽の証言をしていると確信します。
罪を正しく裁くために武本を起訴しますが、武本は井原という優秀な弁護士を雇い、佐方と井原は真っ向からぶつかります。
井原は無実を勝ち取るために奥の手を用意していましたが、それは佐方も同様でした。
感想
佐方の色々な一面が見られる
前作同様、佐方の検事時代のエピソードがいくつも見られる本書。
短編・中編なので、話がシンプルで読みやすいのが特徴です。
これだけだと前作とあまり印象を受けるかもしれませんが、本書ではこれまでともまた違った表情を佐方が見せてくれます。
基本的に感情の起伏に乏しく、あまり内面を見せない佐方ですが、そんな彼の内面が垣間見えるシーンがいくつもあります。
そこには佐方という人間の本当の姿があり、検事としての姿に違わない様子に好感が持てました。
検事としての姿ももちろん素晴らしかったですが、僕は特に『業をおろす』がお気に入りです。
佐方の人生を語る上で陽世の存在は無視できず、陽世がなぜ何の抵抗もなく実刑を受け入れたのかが明らかになります。
明らかになったことで佐方の気持ちが軽くなったことは間違いなく、シリーズが盛り上が
ってきたタイミングだったからこそ描けたエピソードだと思います。
嬉しいことですが、一方で佐方の将来が心配になる面もあります。
自分の正義を貫いた果てに、佐方に陽世と同じ未来が待っていないか。
可能性としては十分にあるし、佐方にとっていつか乗り越えないといけない壁のような気もします。
そのエピソードがもし描かれるとしたら、そのタイミングこそがこのシリーズの終着点なのかもしれません。
嬉しいおまけ
本編とは全く関係ありませんが、本書の解説を僕の大好きな作家・恩田陸さんが書いています。
嬉しすぎて解説だけでも何度も読んでしまいました。
本編と一見関係がないように見えて、実は本書の評価と繋がっていた前置き。
評価が独特で、だけれどもすんなり意味が分かる評価。
恩田さんらしい文章で、僕や他の読者が抱いている柚月さんやその作品に抱く気持ちを見事に代弁してくれた気がします。
僕は解説というと、難しい言葉や表現を駆使していかにも難解で読み気が失せるものが多いイメージだったので、解説まで含めてじっくり読んだのはかなり久しぶりな気がします。
本書の魅力というには語弊がありますが、余力のある人はぜひ解説もお楽しみください。
おわり
相変わらず安定感のあるシリーズで、安心して読めました。
しかし、決して退屈という意味ではありません。
ブレない芯があるからこそ彼らに絶対的な信頼を寄せられるわけで、そういった誠実な人物を描くにあたって、柚月さんは唯一無二の小説家だと改めて実感しました。
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