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『ドロシイ殺し』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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普段は頭の切れる理系の大学院生なのに、夢の中では不思議の国の間抜けな“蜥蜴のビル”になってしまう青年・井森は、ある日の夢の中で、なぜか砂漠を彷徨っていた。干からびる寸前の彼を救ったのは、案山子とブリキの樵とライオンを連れた、ドロシイと名乗る少女だった。オズの国に住む彼女たちは、不思議の国へ帰る方法を探すビルをひとまずエメラルドの都へと連れていく。だが、オズの国の支配者・オズマ女王の誕生パーティーで盛り上がる宮殿内で殺人事件が発生し、井森が暮らす現実世界でも相似形をなす死亡事故が起きる。狂気の王国で起きる死の連鎖の恐るべき真相とは?

「BOOK」データベースより

『アリス殺し』から始まったシリーズの第三弾で、モチーフとなった作品は『オズの魔法使い』とその続編群です。

そのため前作の『クララ殺し』よりも話がとっつきやすく、すんなりと読むことが出来ます。

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一方で、前二作を読んだ方であれば、このシリーズでどんなトリックを扱っているのかを知っているので、驚きという意味では一歩劣るかもしれません。

しかし、相変わらず可愛らしい世界に潜む邪悪が見事に描かれていて、それだけで読む価値があります。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

迷い込んだ世界

物語の舞台は、フェアリイランドにあるオズの国。

不思議の国の蜥蜴・ビルは『クララ殺し』でホフマン宇宙に迷い込み、本書では気が付くと、オズの国で干からびて倒れていました。

それを助けてくれたのが、ドロシイという少女、喋る案山子、ブリキでできた樵(きこり)のニック・チョッパー、臆病なライオンです。

オズの国は死の砂漠で囲まれているため、辿り着くには砂漠を越えねばならず、ビルがどうやって辿り着いたのかは不明です。

オズの国はオズマ女王が治める国で、殺人が禁止され、女王に選ばれた一部の人間以外は魔法の使用を禁じられ、これまで事件が起きたことのない極めて平和な国でした。

ビルはドロシイたちと話す中で、自分のアーヴァタールが地球にいて、井森建であることを伝えます。

アーヴァタールとは、夢を通じて記憶を共有できる存在で、本体であるビルのアーヴァタールが井森ということになります。

この二つにはリンクする部分があり、本体が死ねばアーヴァタールも死ぬことになりますが、アーヴァタールが死んでもそれは本体に影響せず、アーヴァタールの死んだこと自体がリセットされるというルールがあります。

これに対して、ドロシイのアーヴァタールも地球にいることが判明。

ここで場面は地球に変わります。

井森はビルをどうやって不思議の国に帰そうかと考えていると、熱中症で倒れてしまい、気が付くとオズの国のドロシイそっくりの少女に介抱されていました。

彼女こそがドロシイのアーヴァタールであり、名前も同じくドロシイでした。

ドロシイはオズの国がいかに平和な場所であるかを説明し、ビルもそこに残ればいいと井森を説得します。

しかし、井森はオズマ女王の独裁国家であるという点に違和感を覚え、なかなか納得できません。

そこにドロシイの友人、餡樹里亜(あんじゅりあ)が現れます。

彼女もまたアーヴァタールで、本体はエメラルドの都の宮殿で働く小間使いのジェリア・ジャムです。

ジェリアもまた井森が心配しすぎだと言い、今度はオズの国で、ビルはオズマ女王に会いにエメラルドの都に向かいます。

ここでビルはジェリア、そしてオズマと会います。

オズマはビルの疑問に対して、丁寧に答えていきます。

魔法は確かに便利だけれど、使い方を誤れば取り返しのつかないことになるため、禁じている。

魔法が使えるのはオズマ含めて三人だけで、残りはグリンダ、オズの魔法使いだけです。

しかし、指名したのはオズマであり、問題ないのかとビルは聞きますが、オズマが間違えるはずないとドロシイたちも含めてみんながそう思っていました。

井森はオズマの話を聞いてもまだ信用していませんが、ドロシイは次に会えるのがオズマの誕生日パーティーだといいます。

それまでは実家の農場に帰るのだといいます。

そして、ここでオズの国のドロシイは、王族であることが判明します。

ビルは自分の目で確かめようと周辺国であるノームの国の調査を申し出て、怪しい動きを見せるノームの動きを知りたいオズマはそれを許可。

護衛として、箆鹿(へらじか)の首で作った喋る飾りのガンプ、ロボットのチクタクがついてきます。

ガンプは魔法の粉によって生命を与えられた魔法生物ですが、チクタクはバネを回すことで動くことができます。

バネは思考、発声、行動と三つあり、場面に合わせて回さないと動かなくなってしまいます。

三人はオズマの魔法によってノームの国を訪れ、王のロークワットに会います。

ビルの何でも話してしまう性格のせいで危うく殺されかけますが、オズマによって無事戻ってくることができ、彼らに侵略の意思があることを確認することができました。

ドロシイの故郷

ここでドロシイの故郷、カンザスの話が出てきます。

彼女はエムおばさん、ヘンリイおじさんとかつて暮らしていて、おじさんは今入院しています。

ドロシイはエムおばさんに対してオズの国のことを話しますが、おばさんはドロシイが現実逃避のために空想と現実を混同しているのだろうと憐れみの表情をします。

これだけ見るとドロシイの精神状態が疑われるシーンですが、後にこれが伏線となります。

パーティーで起きた殺人

迎えたオズマの誕生日パーティー当日。

宮殿にはオズの国以外の人も集まり、賑わっていました。

そんな中、王族のドロシイとは身内しか会えないと、警備係のジンジャーがみんなを追い返していました。

ジェリアは、案山子たちはドロシイの大切な友人で身内も同然だと抗議しにいきますが、扉にジンジャーはいませんでした。

鍵がかかっていなかったので扉を開けますが、その瞬間、中から大量の血が流れ出し、部屋の中ではジンジャーが倒れていました。

顔が切り刻まれ、すでに死んでいます。

ニックが鉞(まさかり)を使って雑に死体解剖をしたところ、殺害されたのはそう前のことではないことが判明します。

案山子は二十分前に会ったと証言しますが、嘘の可能性もあると保留にされます。

脳がぐちゃぐちゃになるほど顔が刃物で突き刺されていて、怨恨による殺害が有力となります。

廊下には血塗れの服と靴が置かれていて、犯人のものと思われますが、都でならどこでも入手できるものであったため、犯人の特定には至りません。

ここで場面は変わり、オズの国での殺人を知った井森と樹里亜ですが、ドロシイと連絡がとれなくなっていました。

二人は研究室で落ち合います。

ジンジャーのアーヴァタールは、樹里亜の友人で、同じ大学の文学部所属の生姜塚将子という女性だと判明。

まずは将子の生死を確認しようとしますが、その時、救急車の音が聞こえて二人は先端研究センターに向かいます。

爆発事故があり、救急の現場には女性が倒れていました。

怪我の部位から彼女がジンジャーのアーヴァタールだと見て間違いありません。

井森は警察が来る前に爆発現場を確認しようと建物の中に入ります。

目的の部屋では試作のロボットが転倒していて、女性が下敷きになっていました。

あり得ない状況から、オズの国で起きた殺人が誘発した事故だと判断。

女性の顔はぺらぺらになるまで押し潰されていましたが、樹里亜はそれがドロシイの遺体であることに気が付きます。

捜査

ビルたちはジンジャーが殺害されたことをオズマに報告。

オズマはグリンダ、オズの魔法使いを呼び、犯人捜しが始まります。

オズマはジェリアを捜査官に任命し、捜査に当たらせます。

ジェリアはこのことをドロシイにも伝えるべきだと彼女の部屋に向かいますが、そこにはチクタクの下敷きになって死亡したドロシイがいました。

バネを回してチクタクを動かしますが、彼は何も覚えていませんでした。

状況から、刃物で刺されたことでドロシイは死亡し、その後にチクタクが倒れて顔が潰されたことが分かります。

一方、地球側でも捜査が始まります。

ドロシイの交友関係から調べようということになり、彼女に思いを寄せる血沼壮士(ちぬそうじ)、小竹田丈夫(しのだたけお)から事情を聞くことに。

血沼は案山子の、小竹田はニックのアーヴァタールだと樹里亜が教えてくれます。

しかし、二人はドロシイの死によって気が動転し、話を聞くどころではなく、しばらく時間を空けることにします。

一方、オズの国でビルたちは継ぎ接ぎ娘のスクラップスと会います。

彼女は魔法の粉で生命を与えられた人形で、利口でした。

彼女は事故当時、案山子と会話していたことが分かっていますが、今のところ、怪しいところはありません。

地球では、井森たちがまず血沼のアパートを訪れますが、全く返事がなく鍵が掛かっていました。

そこで小竹田のアパートに向かうと、返事こそありませんでしたが鍵はかかっていなかったため、中に入ります。

中には小竹田がいて、彼はドロシイが死んだことに耐えられず、地球での出来事を夢だと思い込もうとしていました。

樹里亜は彼の意思を尊重しながら慎重に話を聞くと、色々なことが分かってきました。

小竹田と血沼は事故現場で全身黒づくめの男と会っていて、男はロードと名乗ったといいます。

ロードは自分が犯人であること、正確には彼のアーヴァタールがオズの国で犯行に及んだことを自ら告白し、自信をのぞかせます。

血沼にも話を聞かないといけないと思った矢先、小竹田の部屋に別の人が訪れます。

それは樹里亜の友人である夕霞(ゆか)で、彼女はスクラップスのアーヴァタールでした。

性格こそ似ていませんが、彼女は幼い頃、父親の手で人間の遺伝子を組み込まれた豚の組織を全身に移植され、継ぎ接ぎだらけにされていました。

彼女がここに来た理由、それは血沼の死を知らせるためでした。

燃やされた案山子

ジェリアは案山子のアーヴァタールである血沼が死んだことを知り、行方を追います。

その中で頭がかぼちゃで出来た案山子・ジャックと会い、事情を聞きます。

ところが、ジャックは頭部を一週間ごとに取り換え、記憶は口頭で引き継ぐため、案山子については何も聞いていないといいます。

今度はそこにライオンが現れ、案山子が見つかったとオズマからの伝言をジェリアたちに知らせます。

案山子は、何者かによって燃やされていました。

地球では、血沼のアパートが放火されるという形で再現され、アーヴァタールである血沼を死亡しています。

そのことを小竹田に伝えようとすると、今度はサングラスをかけ、黒猫を抱いた女性が現れます。

女性は田中和巳といい、ドロシイと樹里亜の友人で、グリンダのアーヴァタールです。

井森がサングラスについてたずねると、和巳は代わりに猫の目を見せます。

猫の片目は金属の玉でできていて、井森は気を失います。

ここからはオズの国に戻り、案山子が燃やされたことについて調べます。

オズ軍最高司令官であるオンビー・アンビーなど複数人が、案山子が燃えるところを目撃していましたが、オズマからの命令を優先して誰も助けようとはしませんでした。

また、燃える直前まで案山子はスクラップスと話していたため、彼女が当時のことを語りますが、犯人は一向に見えてきません。

そこでグリンダは大事な話をする前に、ジェリアとビル、オズマ、魔法使いを除いて全員を凍結させます。

これで余計な話が漏れることはなくなり、ジェリアは捜査状況を報告。

まず案山子と直前まで話していたスクラップスの凍結を解除し、さらに詳しい話を聞きます。

彼女は、案山子が『ジンジャーの言ったことの意味がやっとわかった。僕は間抜けだった。

殺人者は外から来たんだ』と話していたことを聞いていました。

案山子は真実に辿り着き、口封じをするために殺害されたことが分かります。

外から来た、という部分が気になり、ビルはファンファズムの国に向かいます。

そこでは異形のファンファズムたちが襲ってきますが、腹ペコ虎、ライオンの助けがあって窮地を脱します。

また、彼らがドロシイ殺しに関与していないことが分かりました。

犯人のアーヴァタールの正体

一方、地球側ではロードから何か掴めないかと考えていましたが、ある日、ロードは井森の研究室に現れました。

彼を捕まえても地球で罪に問うことはできませんが、捕えて話を聞き出すことはできます。

井森は樹里亜、和巳と協力してロードを捕まえようとしますが、和巳はマスクとサングラスを外したロードに驚き、逃がしてしまいます。

和巳が驚いた理由。

それは、ロードが自分の弟である忍成道雄(おしなりみちお)だったからです。

和巳は養女として出されたため、二人は滅多に会っておらず、道雄が誰のアーヴァタールかも分かりません。

また両親や親戚もいないため、結局、オズの国の捜査に頼るしかありません。

真実

手詰まりかと思われた捜査でしたが、真実に気が付いたのはジェリアでした。

彼女は宮殿の大広間に人を集め、自分の推理を披露します。

まずはじめに、なぜジンジャーとドロシイは脳がぐちゃぐちゃになるまで徹底的に破壊されていたのか。

それは犯人が魔法の粉の存在を知っていて、生き返れば犯人について喋ると分かっていたからでした。

脳を破壊しておけば、仮に生き返っても記憶を失い、犯人のことがバレる心配はありません。

また案山子が残した『外から来た』という言葉について。

これはオズの国の外から来たことを示しています。

さらに二人は宮殿の奥で殺害されていたことから、そこに堂々と入ることのできた人物ということになります。

もちろんオズマたち魔法の使える三人であれば、どんなことでも魔法で出来ますが、それであればわざわざ殺人の証拠を残すこと自体が不自然になってしまいます。

そして最後に、ジンジャーは『王族に会えるのは身内だけ』と言っていましたが、彼女は身内=親族と捉えていました。

これに該当するのは一人だけで、犯人はエムおばさんです。

実はカンザスとはフェアリイランドの一部で、地球の話ではなかったのです。

エムおばさんは犯行を認め、アーヴァタールが道雄であることも認めます。

ここからは、彼女がドロシイたちを殺害した動機について。

エムおばさんは子どもの頃、映画のプロデューサーの目に留まり、子役をしていましたが、ある日、やせ薬だと言われておかしな薬を打たれ、頭がおかしくなってしまいます。

そしてスターになり、気が付くと年寄りになって、見知らぬ男と夫婦になって、ドロシイが王族になったのだと言い出しました。

おばさんはドロシイもまたおかしな薬を打たれたのだと思い、次第におかしな薬がおかしな夢を作り出し、ドロシイ=おばさんと錯覚するようになっていました。

つまりドロシイの人生はおばさんのものであり、王女になるのもおばさんということになります。

おばさんは包丁でドロシイを殺害すると、チクタクを倒して顔を潰します。

その後、ジンジャーの存在を忘れていたため、口封じのために彼女を殺害。

血の付いた服を脱ぎ、庭にある泉に包丁を投げ捨て、これで計画は完了したはずでした。

ところが、その後に会った案山子が、ドロシイと会えるのは身内だけであることを知っていることに驚き、口封じすることを決めます。

そこで案山子がスクラップスと話している隙に、通行人を装ってマッチで彼に火をつけます。

こうして案山子は真実を話し終える前に、燃えてしまうのでした。

これで事件は解決しますが、オズマは言います。

この国には犯罪そのものがないのだから、エムおばさんは罰さないと。

しかし、ニックは黙っていられず鉞でおばさんの腕や足を切り落とします。

驚いたライオンが止めに入りますが、勢い余って今度はニックを殺害してしまいます。

さらにパニックに陥り、大広間にた人を次から次へと肉片に変えてしまいます。

それでもオズマは動じず、泉で汲んできた炭酸水を皆に振る舞い、事件解決を祝して乾杯をします。

ところがオズマ、グリンダ、魔法使いは水を吐き出します。

水は忘却の泉のもので、飲むと一切の記憶が失われてしまうのです。

オズマは都合の悪いことを忘れさせ、皆をよみがえらせ、都合の良いことを教えて自分の独裁国家を維持しようと考えているのです。

こうしてドロシイはよみがえりますが、もはや以前の彼女ではありません。

ビルは水を飲みませんでしたが、誰も彼の言うことなど信じないだろうと放置されます。

またスクラップスはこの場にいませんでしたが、利口な彼女なら自分たちに従うことをオズマは確信していました。

結末

井森は、ドロシイと樹里亜、和巳が一緒に歩いている所を目撃しますが、和巳に二人との接触を目線で止められます。

二人はすでに記憶を失い、井森のことは覚えていないと思われます。

そこに道雄も現れますが、彼もまた記憶を失っているようでした。

夕霞も現れますが、彼女は自分の命を優先し、今後一切、井森とは関わらないといいます。

井森もオズマたちに反抗するのはいけないと思っていましたが、そこに初老の女性が現れます。

オズマのアーヴァタールで、ドロシイのおばでした。

ここでドロシイとは泥まみれになって遊んでいたことからつけられた綽名であることが判明します。

ところが別れる際、ドロシイは井森の耳元でささやきます。

『わたしは手児奈(てこな)』と。

最後に、井森が学生室に行くと、『アリス殺し』に登場した亜理と李緒が話していました。

亜理は井森が頼りないことを怒っていて、彼は反省しつつも思います。

必ずビルを不思議の国に連れ帰るのだと。

ちなみに、こちらのやりとりは『アリス殺し』で行われたものと良く似ていますので、ぜひ探してみてください。

おわりに

前作よりも読みやすく、また結末がけっこう怖くて最後まで楽しめました。

ビルが不思議の国に戻れるまで続くのでしょうか。

そうであったらいいなと思います。

姉妹作(続編)はこちら。

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