ミステリー

『ティンカー・ベル殺し』あらすじとネタバレ感想!無邪気な殺人鬼・ピーター・パンが探偵のシリーズ第四弾

夢の中では間抜けな“蜥蜴のビル”になってしまう大学院生・井森建。彼はある日見た夢の中で、活発な少年ピーター・パンと心優しい少女ウェンディ、そして妖精ティンカー・ベルらに拾われ、ネヴァーランドと呼ばれる島へやってくる。だが、ピーターは持ち前の残酷さで、敵である海賊のみならず、己の仲間である幼い“迷子たち”すらカジュアル感覚で殺害する、根っからの殺人鬼であった。そんなピーターの魔手は、彼を慕うティンカー・ベルにまで迫り……ネヴァーランドの妖精惨殺事件を追うのは殺人鬼ピーター・パン! 世界でシリーズ累計48万部突破!! 『アリス殺し』に続く恐怖×驚愕のシリーズ第4弾。

Amazon商品ページより

『メルヘン殺し』シリーズの第四弾となる本書。

今回の舞台はピーター・パンの世界である夢の国ネヴァーランドです。

僕はあまり詳しくないのでアニメのピーター・パンを思い出しましたが、モチーフは英国の劇作家、小説家であるジェームズ・マシュー・バリーの代表作である『ケンジントン公園のピーター・パン』と『ピーター・パンとウエンディ』です。

シリーズを通して読んできた人なら容易に想像がつくと思いますが、本書でも平然と人が死んでいきます。

そのブラックな部分に加えて、ネヴァーランドと現実世界のリンクのルールがうまく組み合わさり、相変わらず読むのが楽しい内容になっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

夢の国

本書の舞台は夢の国ネヴァーランド。

前の冒険(フック船長を倒した冒険)の後の話で、ピーター・パンはウエンディと八人の弟(血縁関係にあるのは二人)を連れてネヴァーランドに向かいます。

そこに主人公である蜥蜴のビルが迷い込みます。

彼は元いた不思議の国に戻る方法を探すために、ピーター・パンたちに同行します。

しかし、このピーター・パンが非常に厄介な存在でした。

無邪気ですが短絡的で、カッとなるとすぐにその人を痛めつける、もしくは殺してしまい、誰も彼に勝てないので逆らえません。

同窓会

ビルと記憶を共有する大学院生の井森建。

彼は小学時代の同窓会に参加するために郷里の近くまで戻り、温泉町にある宿に泊まります。

しかし、ここで同窓生が謎の死をとげ、おまけに携帯電話が繋がらないなど外界から一切遮断されてしまいます。

謎の死はネヴァーランドと現実世界がリンクしていることが原因で、井森もそのことにすぐに気が付きます。

井森はネヴァーランドのことを口にして、誰が誰のアーヴァタールなのかを少しずつ把握していきます。

犯人は誰?

ピーター・パンのことが好きで、彼と仲が良いウエンディに嫉妬するティンカー・ベル。

ウエンディが戻ってきて不機嫌になる彼女ですが、何者かによって突然殺害されます。

本書は誰がティンカー・ベルを殺害したのかを推理することがメインになりますが、実は読者目線では犯人が分かっています。

そんな中で、状況証拠などから犯人を推理することになります。

ネヴァーランドでのことは当然現実世界にもリンクするので、現実世界でも人が死にます。

ビルの知能では推理に限界があるため、井森は現実世界側からも推理を進め、じょじょに真実に近づいていきます。

そこには、読者も気が付かない驚きのトリックが仕掛けられていました。

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感想

実は怖いピーター・パン

僕はアニメにおけるピーター・パンであれば何となく知っていて、平和で楽しいものを勝手に想像していました。

ところが、本書に登場するピーター・パンは僕の想像の彼と全く違っていました。

無邪気ですが短絡的で、気に入らない人をすぐに殺害します。

殺害した人のこともすぐに忘れてしまいます。

おまけに彼はずば抜けて強く、彼に勝てる人はネヴァーランドにいません。

実にこのシリーズに適した世界観ですが、原作のピーター・パンがこういう世界観だということを知って驚きました。

本書の最後に原作についても触れられているので、今までのシリーズになかった知識の習得があってとても満足できました。

今までで一番人が死ぬ

ピーター・パンは絶えずスミー率いる海賊、そして赤膚族(あかはだぞく、インディアンのこと)と殺し合いをしています。

その結果、大量の人が死んで、現実世界でもそれにリンクして人が死にます。

人数を数えたわけではありませんが、おそらくシリーズ史上一番人が死んだと思います。

もう感覚がマヒしていきます。

推理の難易度がちょうど良い

このシリーズではアーヴァタールのいる世界>現実世界なので、もしアーヴァタールの世界で犯罪が起きた場合、現実世界で犯人を捕まえても意味はありません。

仮に殺害してもリセットされ、何もなかったように終わってしまいます。

そのため誰が誰のアーヴァタールなのかを推理して、アーヴァタールのいる世界で裁く必要があります。

これまでの作品を読んできた人であれば分かると思いますが、この推理がそう簡単ではありません。

井森が蜥蜴のビルであることから分かるように、必ずしもアーヴァタールと容姿が一致するわけではありません。

そこに先入観と引っ掛けがあるわけですが、読み慣れてくるとその法則がある程度読めてくるので、本書の推理は読者でも十分に可能です。

難易度として決して難しすぎないので、人数の多さに気後れせず、ぜひ井森になったつもりで推理をお楽しみください。

今後の方向性が見えた気がする

最後に井森の視点で描かれるある事実。

これによって彼がどんな状況に置かれているのかが分かります。

内容は読んでからのお楽しみですが、これが今後のシリーズの方向性を示しているような気がするので、次回作以降もここに注目したいと思います。

おわりに

第四弾でも全く飽きのこない面白さで、おまけに原作のことも詳しい内容まで知ることが出来ました。

現在、第二弾である『クララ殺し』まで文庫化されていますので、このシリーズに興味のあるという人はぜひ挑戦してみてください。

話自体は独立していますが、本書のルールを一番詳しく書いているのが第一弾『アリス殺し』なので、順番に読むのが無難だと思います。

小林泰三さんの他の作品はこちら。