ミステリー

『ドクター・デスの遺産』あらすじとネタバレ感想!安楽死を提供する謎の人物の正体は?

警視庁に入った1人の少年からの通報。突然自宅にやって来た見知らぬ医師に父親が注射を打たれ、直後に息を引き取ったという。捜査一課の犬養刑事は少年の母親が「ドクター・デス」を名乗る人物が開設するサイトにアクセスしていたことを突き止める。安らかで苦痛のない死を20万円で提供するという医師は、一体何者なのか。難航する捜査を嘲笑うかのように、日本各地で類似の事件が次々と発生する…。人気シリーズ第4弾!

「BOOK」データベースより

『刑事犬養隼人シリーズ』第四弾となる本書。

綾野剛さん、北川景子さん主演で映画化もされています。

本書では『死ぬ権利』が事件の焦点になっていて、犬養にとって大きな分岐点となる作品になっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

ドクター・デス

警察に通報が入ります。

相手は小さな男の子で、内容は自分の父親が悪い医者に殺害されたという内容でした。

悪戯電話と思いつつも、電話を受けた女性は同期で刑事の高千穂明日香に相談。

明日香はコンビを組む犬養隼人を巻き込み、通報主である男の子に会います。

確かに父親は亡くなっていましたが、がんを患って自宅療養していたため、亡くなったからといって殺人とは限りません。

一方、男の子は医者が二人来たと口にしていて、怪しんだ犬養は死体を解剖に回します。

すると血中のカリウム濃度が異常に高くなっていることが判明。

それは過去の安楽死事件の患者のデータにそっくりで、普段往診に来ている医師とは別の医師が塩化カリウム製剤を注射して殺害した可能性が浮上します。

その医師は女性看護師を連れていたということで、警察は二人の行方を追います。

犬養たちが母親を追及すると、彼女はドクター・デスという人物に殺人を依頼したことが判明。

その費用はたったの二十万円。

申し込みも簡単で、『ドクター・デスの往診室』というサイトからコンタクトをとれば済みます。

ドクター・デスとは、かつて積極的安楽死を推奨した医師、ジャック・ケヴォーキアンの異名で、サイトの管理人はその名前や思想を継承したのだといいます。

このサイトにアクセスしている人数はそれなりにいて、つまりこれまでの病死の中にドクター・デスの殺人が含まれている可能性があることを意味します。

犬養たちは、思わぬ形で大きな事件に立ち向かうことになりました。

おとり捜査

ドクター・デスによる殺人がいくつも見つかりますが、誰もがドクター・デスを見ていてもよく覚えておらず、捜査範囲だけがいたずらに広がります。

次の一手に欠ける状況で、犬養は娘の沙耶香をおとりにした捜査を打診。

犬養自身の名前でドクター・デスに接触し、沙耶香の安楽死を依頼しようというのです。

もちろん沙耶香に危険が及ばないよう配慮はしますが、刑事として、そして一人の父親としてまともな神経をしていれば口にもしないほどの無茶苦茶な捜査です。

賛否両論の声が挙がる中、犬養はおとり捜査を実行に移しますが、ドクター・デスは犬養の

思考のさらに先を行き、本物の沙耶香の病室に塩化カリウム製剤の入った点滴バッグを送ることで警告します。

手がかり

その後もドクター・デスによる被害が出ますが、犬養たちは目撃証言からドクター・デスではなく付き添いの看護師を特定します。

さらに少ない証拠からドクター・デスに繋がるヒントをつかみ、逮捕まで秒読みかと思われました。

ところがそれさえもドクター・デスの読み通りであり、警察とドクター・デスの対決は一気に終局を迎えます。

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感想

倫理と感情がぶつかり合う問題

死ぬ権利について、様々な国で議論が交わされていますが、日本において安楽死は認められていません。

犬養はあくまで制度を優先し、どんな理由でも人を殺すのは認められないと断言しています。

一方で、病気などで死ぬほどの苦しみを絶えず味わい、いっそ死んだ方がマシだと考える患者、そして家族がいることも事実です。

彼らは頭ではいけないことと分かりつつも、大切な人のために法律を破って安楽死を選択する。

本書では倫理的な立場、そして感情的な立場から安楽死について語られ、犬養だけでなく読者もまた何が正しいのかを考えることになります。

本書のラストに一つの答えが出されるのですが、正解がないだけにそれが正しいのか誰にも判断ができず、読了後も後を引きずるものがありました。

一気に広がった世界観

本シリーズにおいて、犬養には重い腎臓病に苦しむ沙耶香の存在があるため、おのずとテーマが医療関係になります。

これまでも日本に留まらない大きな問題ばかりでしたが、本書ではそのスケールが一気に大きくなり、己の無力さのようなものに襲われました。

ルールで正しいとされていることが、本当に正しいことなのか。

破った人を罰すれば済む話なのか。

答えが出せないだけにもやもやし、この記事を書いている今でも自分ならどうするのか、と考えずにはいられません。

今後のシリーズの行方

この大きな問題を前に、犬養もこれまで通りにはいかなくなります。

ルールや倫理観だけではどうにもならない問題があることを思い知らされ、究極の選択を迫られます。

この事件によって犬養は少なからずダメージを受けたため、次巻以降に影響が出る気がします。

ルールだけでは割り切れない問題が立ちはだかった時、自分はどうするのか。

次巻以降の犬養の成長が見所になると思うので、楽しみに待ちたいと思います。

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おわりに

刑事である一方で、病気に苦しむ娘を持つ犬養だからこそ出せる魅力のある本シリーズですが、本書はその中でも特に重たい内容で、シリーズの今後にも影響を及ぼしそうです。

傷を負ったのは間違いありませんが、それでも立ち上がって強くなるのが犬養だと信じているので、次巻以降も楽しみにしたいと思います。

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