ミステリー

『木曜組曲』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、四年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。ライター絵里子、流行作家尚美、純文学作家つかさ、編集者えい子、出版プロダクション経営の静子。なごやかな会話は、謎のメッセージをきっかけに、いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれてしまう。はたして時子は、自殺か、他殺か―?気鋭が贈る、長篇心理ミステリー。

【「BOOK」データベースより】

2002年に鈴木京香さん、原田美枝子さん、富田靖子さん、西田尚美さん、浅丘ルリ子さん出演で映画化された本書。

全員が物書きやそれに携わっているということで、気兼ねなく話ができる仲であるはずなのに、実は誰もが秘密を抱えていて、次々に告白していく。

その心理描写は恩田さんの魅力が最大限に発揮された本書の見所だと僕は考えます。

ただし、ミステリーではありますが、いわゆる犯人当てがメインではありません。

読み進めていく過程で得た情報で真相を導く、というのはまず無理なので、そういった意味での過度な期待はしないようにしてください。

でも、間違いなく名作です。

 

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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謎の送り主

本書の話題の中心となるのは、耽美派小説の巨匠で、薬物死を遂げたといわれている重松時子。

彼女の死後、彼女と縁の深い女性五人は毎年、時子の命日の週の木曜、そしてその前後含めた三日間を『うぐいす館』で過ごすことが定例になっていました。

木曜は、時子が好きだった曜日です。

ライターの絵里子、流行作家の尚美、純文学作家のつかさ、編集者のえい子、出版プロダクション経営の静子、みんな物書きを生業としていました。

今年もいつものように集まりますが、『フジシロチヒロ』という謎の人物から花が届き、それが異変の始まりでした。

花の茎はうぐいす館にある花瓶に合わせて切られていて、その存在を知っている人物、つまりここにいる誰かが送ったと考えるのが自然ですが、誰も名乗りません。

一同はこのことをきっかけに、時子の死が自殺だったのか、はたまた他殺だったのかを再検証するために四年前を振り返ります。

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木曜の前日

時子が木曜を好きだったことから、本書では木曜を中心に考えます。

なので、水曜はその前日というように表記しています。

送り主の正体

うぐいす館で暮らすえい子のもとに、四人が例年のように集まります。

ちなみに一同の関係について、まず時子と静子は異母姉妹。

静子の母の妹の娘が絵里子で、時子の弟の娘が尚美。

さらに尚美の異母姉妹がつかさで、この中で絵里子だけが時子と血の繋がりがありません。

非常にややこしいので、絵里子だけが血の繋がりがない分、一番時子のことを客観的に見ることが出来ると認識いただければオーケーです。

えい子は時子の才能を見出した編集者で、他の四人のことも気にかけています。

少し脱線しましたが、集まった五人は花に添えられた手紙を読んで驚きます。

そこには、五人の罪を忘れないために、時子のために花を捧げるという内容が書かれていました。

送り主に四人ははじめピンときませんが、えい子はすぐに気が付きます。

フジシロチヒロとは、時子の最後の作品である『蝶の棲む家』の主人公の名前です。

誰かは分かりませんが、時子の熱狂的なファンの誰かが彼女の死を自殺ではないと考えているのでは。

一同の頭にそんな考えがよぎる中、それに背中を押されるようにこれまで胸の内に秘めてきた思いを一人ずつ告白していきます。

告白

はじめに告白したのは静子。

彼女は自分が時子を殺したのだと打ち明け、一同を驚かせます。

絵里子はたまたま自分のバッグから、時子が亡くなった日のみんなの行動表を見つけ、当時を振り返ります。

時子が亡くなった日も、この五人はこのうぐいす館にいました。

時子はいいアイディアを思いついたと部屋にこもり、五人は気にせずとめどない会話を楽しみます。

その後、時子が薬を飲むといって水の入ったコップを持って二階に上がるのを五人は目撃。

さらに一時間して寝室に倒れている時子をえい子が見つけ、時子は救急車で運ばれますが、その日のうちに息を引き取ります。

死因は毒物で、毒の入ったコップには時子の指紋しかありません。

さらに時子の書斎の金庫にはコップに入っていたものと同じ毒がカプセルに入って置いてあり、えい子に宛てた遺書もありました。

作家であることに苦しみを感じ、自殺したことが書かれており、四年もの間、一同は自殺だと思っていました。

ここからは、五人によって時子の死が自殺なのか他殺なのか話し合われます。

時子が死ぬ直前、彼女は右腕がほとんど上がらなくなり、かなり執筆ペースが落ちていました。

静子はそのことに気が付いていましたが、問題はここから。

時子が死んだ日、静子は外から二階の窓を見て、そこにいるのが時子を見たと思い込んでいましたが、今考えるとその人影は右腕を上げていました

つまり、時子ではないことになります。

しかし、誰もその日、二階には上がっていないと証言しています。

静子は、時子が誰かと会う約束をしていて、その人物が時子を殺害したのだと考えていました。

もちろん動機もあります。

時子の最後の作品となった『蝶の棲む家』ですが、これまでの彼女の作品に比べて凡庸なものでした。

静子は、この作品に誰かが手を加えたのだと考えていました。

この五人であれば時子のタッチをよく知っているため、誰でも可能性はあります。

そして、時子は当時『あたしの後継者』という言葉を使っていたことから、『蝶の棲む家』を試しに書かせたのではないか。

ここで、没になった『蝶の棲む家』の第二稿は尚美が書いていたことが判明。

さらに、尚美はあの日、時子の部屋にいたことを打ち明けます。

手紙

尚美は時子の死後、集まる度にみんなに内緒であるものを探していました。

それは手紙です。

尚美宛で、彼女を後継者に指名すると書かれた時子のサイン入りの手紙。

これは二人三脚でやってきたえい子も知らないことでした。

時子と尚美の計画では、時子が死んでもそのことを世間に知らせず、そのまま尚美が後を継ぐ。

『蝶の棲む家』はその最初の習作でした。

しかし結局、その原稿はえい子に見破られ、計画は早々にとん挫することとなります。

時子の亡くなったあの日、尚美は時子に呼ばれ、後継者の件が書かれた遺言状を金庫に入れずにどこかに隠したと言われただけだといいます。

ここで絵里子から指摘が入ります。

なぜ手紙をわざわざ隠したのか。金庫に入れるなり、弁護士に預ければ済む話では。

また後継者についても、自分が亡き後も誰かに継いでほしいものか。

時子にとって、ここにいる人間のレベルなどたかが知れていると。

一方尚美は、時子がえい子によって閉じ込められていたと考えていました。

仕事から私生活までえい子に管理され、晩年はえい子が大幅に修正した小説が世に出回り、悩んでいたと。

だから尚美は手紙を見つけ、時子の名誉を守りたいと考えていました。

しかし、えい子もこれに反論。

時子は晩年うまく書けなくなっていて、彼女の名誉を守るためにえい子は加筆・修正をしていました。

そして、時子はえい子の文章をけなすことで、自分のプライドを守っていたと。

どちらの意見も証拠はなく、正しいかどうかは分かりません。

ここでえい子、静子、尚美は退席。

残った絵里子とつかさはお酒を飲みながら世間話に興じます。

するとつかさは、玄関にある一枚の銅版画のことを思い出します。

時子が亡くなった日は外されていましたが、それ以降は元に戻されていました。

誰がなんのために外したのか。

そこで手紙のことを思い出し、二人は銅版画を外して中を見ます。

すると古びた尚美宛の封筒が出てきて、二人は好奇心を抑えられずに中を見ます。

そこには、時子に何かあったら計画をよろしくということ、そしてじきに自分は静子に殺されると書かれていました。

木曜

電話

翌日、五人は昨日のことなど忘れたかのように穏やかに過ごしていましたが、夕方、絵里子とつかさ、尚美が買い出しに行くと、うぐいす館に一本の電話があります。

相手はフジシロチヒロを名乗り、またしても不吉な予感がうぐいす館を包みます。

三人が戻ってくると、えい子は事情を説明。

電話の後ろでは三人の行ったスーパー近くの駅から流れるアナウンスが聞こえていて、えい子と静子は三人を疑いますが、電話できるだけの時間を一人で行動していないと三人は否定。

絵里子は携帯を家に忘れてきたといいますが、静子は前日にそれを見ていて、嘘であることはすぐに判明。

観念し、絵里子は語り始めます。

フジシロチヒロの正体

夕食が始まると、絵里子はまずはじめに、えい子は別として自分だけが時子と血が繋がっていないことに言及。

熱狂的に時子に入れ込む彼女たちのことを外から客観的に観察し、時子と時子を巡る人たちのことを、ノンフィクションともエッセイともつかない私的なものとして書いていることを告白。

さらに絵里子は、腹に一物抱えた彼女たちからそれを引き出すためにある仕掛けを施します。

そう、フジシロチヒロは絵里子の友人で、時子の熱狂的なファンが演じていたのです。

彼女はこの近所に住んでいて、絵里子は通話履歴からその友人と繋がっていることを知られたくなかったために携帯を忘れてきたと嘘をついたのでした。

呆れはしつつも、一同は一応納得しますが、話はこれだけでは終わりません。

昨晩、絵里子とつかさが見つけた手紙のことが明かされると、今度は静子が口を開きます。

本当に、自分が時子を殺したのかもしれないと。

静子は時子の衰えを誰よりも早く気が付いていました。

周囲は大御所である時子に本当のことを言えなくなっていたため、静子は真正面から時子の作品を批評しました。

しかし、時子はすでに妄想に囚われ聞く耳を持ちません。

そこで静子は、時子が主人公の小説を定期的に送り付け、今の彼女がどれだけみじめなのかをつきつけます。

静子はこれが時子を死においやった原因だと考えますが、もうその小説は残されていません。

結局、証拠はなく、物書きゆえに妄想ということでひと段落します。

つかさの話を聞いてスパゲッティが食べたくなり、絵里子、つかさ、尚美で作ることに。

キッチンにミートソースの缶詰があったため、それを使って調理を開始しますが、静子が異臭に気が付き、つかさはソースがなんだか苦いといいます。

静子はすぐに吐き出すよういい、残った缶詰を調べます。

すると缶詰のいくつかには細工が施されていたことが判明。

缶詰はずっと前から置かれていて、えい子なら缶詰を使わず、自分で作ります。

つまり、毒を仕込んだのは時子で、四人を狙ったということになります。

遺書

彼女たちは改めて時子の死について整理することに。

すると、絵里子は遺書が矛盾していると指摘します。

これまでの証言から時子が妄想に囚われていたことは疑いようのない事実だと思われますが、遺書にはそんな妄想は一切含まれていません。

そして絵里子は気が付きます。

時子の遺書は、静子から時子に送り付けられた小説の書き写しだったと。

静子はそのことを認め、彼女自身も今回になってようやくそのことに気が付きました。

そして、もしかしたらその小説を自分が書いたものとして、出版するつもりだったのではとも考えられます。

ここで改めて時子の死が自殺か他殺かが問題となりますが、今日はもう遅いということで解散。

絵里子だけが残って推理を続けます。

すると、ある鏡を見つけて真相に到達します。

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木曜の翌日

翌朝、絵里子はテーブルにあるコップを見て青ざめます。

そして、つかさの言っていたことが正しかったといい、朝食時にその説明をします。

時子ははじめ、缶詰に毒を仕込んでみんなを殺害する方法を考えましたが、途中で重労働であることに気が付きやめます。

そして、四人が家に来る日、鍋に直接毒を入れることを決めます。

絵里子はずっと疑問に思っていたことがあり、それは毒のことでした。

時子が死んだ時、金庫にはカプセルに入った毒があったにも関わらず、毒はコップの水に溶かされていました。

普通、自殺のためであればカプセルのまま飲むはずです。

つまり、コップの水に溶かされた毒は本来、えい子の目を盗んで鍋に入れるためのものだったのです。

絵里子の推理はこうです。

時子はコップの水に毒を溶かし、仕事部屋の机の上に載せておきました。

その時、電話が鳴り、絵里子が出て、時子に代わります。

入れ替わりに仕事部屋に入った絵里子はコップの水を見つけ、時子が神棚の水を取り替えようと古い水を置いておいたのだと勘違いし、持ってきたコップと取り替えます。

時子はえい子の目を盗んで水を鍋に入れますが、それはただの水です。

一方、絵里子は持っていたコップをテーブルに置き、時子に薬を飲むから水が欲しいと言われ、そのコップを指し示したのです。

絵里子がこのことに気が付いたのは、鏡です。

鏡の位置を調整することで、二階からキッチンと客間の様子をうかがうことができるのです。

こうして真実が明らかになり、五人は共犯だと理解した上で、来年以降もこうして集まることに。

そもそも三日間でした話も、物書きたちのただの妄想かもしれないのだから、と。

別れの時間が迫る中、えい子は時子の亡くなった事件についてそれぞれ小説を書かないかと提案。

何年かかってもいいから、それぞれの重松時子を描こうと。

結末

それぞれの仕事に戻るため、まずはつかさと尚美がうぐいす館を後にします。

絵里子と静子は帰る前に一服しますが、絵里子はあることに気が付いていました。

それは、静子が時子に送った小説はまだ残されているということです。

物書きであれば、傑作を捨てるはずがありません。

静子は絵里子の性格の悪さを思い知り、彼女にだけ見せることを約束して帰っていきます。

絵里子は彼女を見送ると、再びうぐいす館に戻ります。

ここで本当のことが明かされますが、今回の一件はえい子が言い出し、絵里子が協力して演出されたものでした。

缶詰の細工も絵里子です。

えい子は時子の五周忌に向けて企画を考えていて、時子の事件をモチーフにした小説を思い付きます。

絵里子はえい子から仕事を紹介されて、渋々協力することに。

するとそれぞれの抱えた秘密が予想以上に出てきて、期待を大きく上回る結果となりました。

しかし結局、時子がなぜみんなを殺害しようとしたのか、それは謎のままです。

絵里子は別れ際、編集者であるえい子も物語を書けばいいと勧め、うぐいす館を後にします。

一方、静子だけは二人の計画に気が付いていました。

缶詰めの賞味期限は最近購入したことを示していたし、絵里子だけであんな大芝居を打つはずがないので、おのずとえい子が裏で糸を引いていることが分かります。

また絵里子の言う通り、原稿はまだ残っています。

静子はこれを全面的に書き替え、いかに時子の作品を愛していたのかが伝わる作品にして出版することを誓います。

タイトルは『ラブレター』です。

最後に、うぐいす館に一人残されたえい子。

彼女は、時子の遺志を引き継ぐ四人がしっかりと成長している姿を目の当たりにして、安心していました。

事件当時、えい子は鏡で時子に見られると同時に、時子のことも見ていました。

時子が毒を持ち出したのを見て、とっさの判断を下し、絵里子が水を捨てていれば全てが済むはずでした。

しかし、毒の入った水は時子に渡ってしまい、それでもえい子は何も言いませんでした。

これで、時子はみんなの望む形で、自分の手で幕を降ろすことができるのだと考えていました。

そして、後継者たちが新たな物語を紡ぎ、時子の事件は伝説となる。

えい子は穏やかな表情で、時子のデビュー作である『蛇と虹』を本棚から取り出すのでした。

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最後に

いかがでしたでしょうか。

畳み掛けるようなラストが圧巻でした。

もちろんえい子の行動は倫理的にどうなのかという問題もありますが、その行動こそが重松時子の偉大さを物語るもののように思えて、僕は非常に良い締めくくりだと思います。

恩田さん自身もこんなラストを望むのかな、と内心思ったのは内緒です。

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