ミステリー

『ハーメルンの誘拐魔』あらすじとネタバレ感想!連続誘拐事件の裏に隠された子宮頸がんワクチンに関わる闇

記憶障害を患った15歳の少女、月島香苗が街中で忽然と姿を消した。現場には「ハーメルンの笛吹き男」の絵葉書が残されていた。その後少女を狙った誘拐事件が連続して発生、被害者は、子宮頚がんワクチンの副反応による障害を負った者と、ワクチン推進派の医師の娘だった。そんな中「笛吹き男」から、計70億円の身代金の要求が警察に届く。少女の命と警察の威信を懸け、孤高の刑事が辿り着いた真実とは―。人気シリーズ第3弾!

「BOOK」データベースより

『刑事犬養隼人』シリーズ第三弾となる本書。

今回の事件の中心にあるのは、子宮頸がんワクチンに関する賛否の声と癒着です。

犬養は男の嘘を見抜くのは得意でも、相手が女性になるとこの能力を全く発揮できないので、苦戦を強いられます。

また今回の事件から犬養の相棒として高千穂明日香が登場しますが、犬養に恨みがあるのかというほど敵意むき出しです。

犬養は内でも外でも四苦八苦するので、その点も注目です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

ハーメルンの笛吹き男とは

あらすじの前に、犯人が名乗った『ハーメルンの笛吹き男』について解説します。

これは1284年にドイツのハーメルンで実際に起きた出来事をもとにした伝承で、様々な人の手によって伝えられています。

当時、ハーメルンの町でネズミが大発生し、人々は困っていました。

その時、一人の男が現れ、報酬を支払ってくれればネズミを退治するといいます。

人々は報酬を約束し、男は笛で町中のネズミを集め、川に誘導して溺死させます。

こうしてネズミはいなくなりましたが、人々は約束の報酬を払いませんでした。

男は報復として、人々が協会に出かけている隙に百三十人もの子どもたちを笛の音で集め、市外にある洞窟の中に入ります。

洞窟は内側から岩でふさがれ、笛吹き男も子どもたちも二度と戻ってきませんでした。

本書の犯人はこの伝承に自分の犯行をなぞらえ、『ハーメルンの笛吹き男』の絵葉書を現場に残したのでした。

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あらすじ

ハーメルンの笛吹き男

月島香苗は十五歳で記憶障害を患い、母親の綾子のことでさえ一時間経たずに忘れてしまいます。

綾子は買い物中、そんな香苗から少しだけ離れる瞬間がありました。

買い物から戻ると香苗はいなくなっていて、探してもどこにもいません。

交番にも駆け込んで警察官とも一帯を探しますが見つからず、代わりに見つかったのが香苗の生徒章と『ハーメルンの笛吹き男』が描かれた絵葉書でした。

子宮頸がんワクチンを巡る闇

香苗誘拐事件の知らせを受け、犬養隼人は高千穂明日香と組んで捜査に乗り出します。

月島家はすでに夫を亡くしていて、多額の身代金を要求できるような家庭ではありません。

犯人の目的を考えていると、そのヒントは犬養の娘・沙耶によってもたらされました。

綾子はブログを解説していて、香苗との闘病生活について綴っていましたが、そこで子宮頸がんワクチンについて言及されていました。

綾子は香苗の記憶障害の原因が定期接種となっている子宮頸がんワクチンにあると考えていて、同じ被害にあった人からは多数のコメントがブログに寄せられています。

活動はやがてワクチン被害の集団訴訟を検討する段階にまできていて、ワクチン推進派からしたら綾子の活動が邪魔になると考えてもおかしくありません。

犬養は子宮頸がんワクチンに関係する人物が事件に絡んでいると考えて捜査を続けます。

一方、相棒となった明日香はなぜか犬養のことを嫌っていて、子宮頸がんワクチンの被害などについては刑事ではなく一人の女性として感情を優先させてしまうことがあり、犬養の頭を悩ませる種の一つとなっていました。

続く誘拐事件

香苗誘拐事件の捜査が進まない中、今度は槇野亜美という少女が誘拐されてしまいます。

現場には香苗の時と同様、ハーメルンの笛吹き男の絵葉書が置かれていました。

亜美の父親・良邦は日本産婦人科協会の会長で、子宮頸がんワクチンを推進する立場にありました。

子宮頸がんワクチンを推進する医師の娘と、その被害者。

その後、今度は子宮頸がんワクチンの被害を訴える集会に参加した被害者の少女五人もまた一斉に誘拐されてしまい、それでも犯人に繋がる糸口は見えません。

被害者たちの安否が心配になる中、ようやく犯人から要求がありました。

それは、誘拐した少女一人につき十億円。

合わせて七十億円もの身代金でした。

感想

医療の闇

子宮頸がんワクチンについて、接種するべきかどうかの議論は現在でもされています。

積極的に推奨こそしないものの、定期接種として公費助成を受けることが出来る状態です。

本書ではそのワクチンによる被害者の声がクローズアップされていて、それでもワクチン推奨をやめられない医療業界の闇が描かれています。

この内容に対して、読者からはかなり賛否両論がありました。

内容が非常に限定的で、誰に対して批判を投げかけているのが一目瞭然だし、かなり被害者側に肩入れしています。

これはフェアでないというか、誤った認識を読者に与える危険性があると感じました。

確かに子宮頸がんワクチンの副反応による被害が多数存在し、無視できないほど大きな問題であることは事実です。

しかし一方で、ワクチンも接種しないことによる子宮頸がんのリスクも当然あるわけで、そのどちらも平等に考えて少しでも子宮頸がんによる被害を減らすことが目的なはずです。

この記事を書いている2021年3月12日だと、ちょうど新型コロナウイルスワクチンが話題になっているので、ワクチンについて様々な疑問や心配を抱えている人も多いと思います。

行政や自治体はワクチン接種について情報を流してくれると思いますが、それが事実の全てというわけではありません。

ワクチンに限らず、医薬品などには必ず副作用などリスクが存在します。

ぜひそのことを念頭に置いた上で、どちらのメリットもしくはリスクをとるのかご自身で調べ、考えて欲しいと思います。

賛否が分かれる

上記の理由からの賛否両論はもちろんですが、もう一つ評価の分かれるポイントとして明日香の存在があります。

捜査一課の紅一点で捜査が多少華やぐのは間違いありません。

しかし、とにかくいちいち犬養に突っかかってきます。

相棒になった時点で犬養のことが嫌いで、その理由は不明。

今回の捜査は女性特有の悩みや苦しみが多いためそちらに肩入れし、刑事よりも一人の女性としての感情を優先させてしまうことがよくあります。

彼女の不要な言動によって捜査の進展が妨げられてしまうこともしばしばあります。

もはや嫌われる前提で描かれているとしか思えません。

そんな明日香も捜査が進むにつれて犬養と心を通わせる部分も出てくるので、そこまで彼女の言動や行動に対して寛容でいられた人は彼女のことを少し見直すと思います。

今後へのさらなる期待

明日香はまだまだ若い刑事なので、これから大きく成長する可能性を秘めています。

また女性ならではの目線は捜査に必要で、女性ごとに疎い犬養が相棒であれば尚更です。

次巻以降も明日香は登場しますので、さらなる成長に期待したいと思います。

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おわりに

扱っている話題的に手放しで楽しめない部分がありました、ハーメルンの笛吹き男を想起させる事件や身代金の受取方法などかなり面白く、エンタメ性は抜群でした。

次巻以降に向けて新しい可能性も感じられたので、しっかり見届けたいと思います。

次の話はこちら。

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