『もういちどベートーヴェン』あらすじとネタバレ感想!洋介の司法修習生時代を描くシリーズ第六弾
累計127万部突破の大人気シリーズ! 岬洋介が挫折し、別の道へ進もうとしているときの物語です。2006年。法曹界入りした天生高春は、ピアノ経験者のようだがなぜかクラシック音楽を避ける岬洋介とともに、検察庁の実務研修を受けていた。修習の一環として立ち会った取り調べの場に現れたのは、絵本作家の夫を刺殺したとして送検されてきた絵本画家の牧部日美子。日美子は犯行を否認しているが、凶器に付着した指紋という動かぬ証拠が存在する。取り調べが打ち切られようとしたそのとき、岬が突如ある疑問を投げかける……。『このミステリーがすごい!』大賞シリーズ。
Amazon商品ページより
岬洋介シリーズ第六弾となる本書。
前の話はこちら。
タイトルにベートーヴェンとある通り、前作『どこかでベートーヴェン』と連なる物語です。
ピアニストとしての道を閉ざされ、司法修習生となった洋介。
道は変わっても相変わらずの彼の様子を楽しめるだけでなく、ピアニストとして復活する様子まで読むことができます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
司法修習生
天生高春(あもうたかはる)は三浪の末に司法試験に合格し、埼玉県和光市にある司法研修所で司法修習生としての道を歩み始めます。
期待に胸を膨らます天生。
司法修習生の同期は年齢が様々で、経歴や司法の道を選んだ理由も様々です。
その中で、特に異彩を放っていたのが岬洋介でした。
司法試験をトップの成績で合格したので入所前から有名ですが、それはほんの序章に過ぎません。
洋介は座学、実務において完璧に近い成績を収め、多くの教官たちは彼を引き抜こうと画策します。
天生たち同期からしたら嫉妬の対象ですが、天然で悪気のない洋介に毒気を抜かれ、そこまで問題も起こさず日々は過ぎていきます。
無罪の証明
洋介と天生は実務でさいたま地検に配属され、検事調べを見学します。
二人が担当することになったのは、絵本作家の牧部六郎が妻の日美子に殺害された事件でした。
日美子は絵本画家で、夫婦で一緒に仕事をする機会も数多くありました。
関係者から六郎が仕事で日美子に厳しく当たっていたという証言が得られていることから、殺害の動機は十分に思えます。
ところが、日美子は容疑を否認。
取り調べが進む中で、洋介は日美子の不自然な態度が気になり、彼女の無罪を証明するために動き出します。
天生は監視役となって仕方なく洋介についていくことになりますが、捜査の中で驚くべき真実が浮かび上がります。
感想
復活までの道のり
前作で、洋介のピアニストとして道は閉ざされたように思えました。
本書では洋介が司法修習生になっているので、諦めて新たな道を歩みだしたように見えます。
ところが、そうではないことはすぐに分かります。
洋介はわざと音楽から遠ざかり、意識しないようにしていたのです。
その証拠に、天生に騙されて連れていかれたクラシックのコンサートでは自分を抑えられず、演奏されている楽曲に合わせて膝の上でピアノを弾いていました。
司法修習生の研修でも優秀さだけでは解決できない課題にぶつかり、悩みシーンもあります。
洋介はそこからどのようにしてピアニストとして復活するのか。
司法修習生として対峙する事件に、どのような答えを提示するのか。
前作に比べて前向きのエネルギーに満ち溢れていて、個人的にはこちらの方が好きです。
ミステリとしては無理やり感がある
本書の最後で洋介が事件の真相を明かしますが、正直、あまり納得のいくものではありませんでした。
犯人は何となく察しがつくとして、問題はその動機です。
確かに推理の根拠となる事柄は作中で提示されているのですが、あまり一般的でないためその意味に気が付ける人はほんの一部だと思われます。
しかも根拠として決定打に欠け、犯人が自白しなければおそらく解決に至らなかったでしょう。
そのため、ミステリとして見ると無理やり感をどうしても感じてしまいました。
おわりに
洋介がどのようにピアニストとして復活したのか。
シリーズにとって非常に重要なシーンが描かれているので、シリーズのファンは必読です。
ミステリとして期待しすぎなければ十分楽しめると思います。
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