ホラー

『Another エピソードS』あらすじとネタバレ感想!Another の空白を描く外伝

1998年、夏休み―両親とともに海辺の別荘へやってきた見崎鳴、15歳。そこで出会ったのは、かつて鳴と同じ夜見山北中学の三年三組で不可思議な「現象」を経験した青年・賢木晃也の幽霊、だった。謎めいた古い屋敷を舞台に―死の前後の記憶を失い、消えたみずからの死体を探しつづけている幽霊と鳴の、奇妙な秘密の冒険が始まるのだが…。

「BOOK」データベースより

綾辻行人さんの新たな代表作として不動の地位を築いた『Another』。

その外伝にあたるのが本書です。

『Another』において八月のクラス合宿の前に三崎鳴が一週間ほど夜見山を離れていた時期があり、本書はその空白の期間を描いています。

前作と違って語り手がもう一人の『サカキ』である賢木晃也であること、前作ほどの強烈なホラーではないがほのかなミステリ要素を帯びていることなどが違いとして挙げられます。

外伝という位置づけですが、『Another』の続編にあたる『Another 2001』への橋渡し役を担っているため、2001を読む前にこちらを読むことをオススメします。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

もう一人の『サカキ』の話

『Another』直後の話。

榊原恒一は、三崎鳴からこの夏、彼女が不在にしていた空白の一週間に隠されたエピソードを教えてもらいます。

それはもう一人『サカキ』こと賢木晃也の話であり、この夏に会った賢木は幽霊でした。

幽霊

鳴の父親の知り合いである比良塚家が別荘の近くに住んでいて、賢木は比良塚の妻・月穂の弟でした。

賢木はかつて夜見山に住んでいて、1987年に災厄によって怪我を負い、左足に後遺症を負っていました。

鳴は、賢木から当時のことを聞けば、災厄を防ぐ何かヒントを得られるかもしれない。

そう考えていましたが、賢木は五月の初めに亡くなっていて、幽霊として再びこの世に現れ、鳴だけがその姿を見ることが出来ました。

失われた死の前後の記憶

本来であれば、賢木が何らかの理由で亡くなっていれば親戚にすぐ伝わるはずです。

ところが、賢木は長い旅行に出ていることになっており、死体は見つかっていませんでした。

月穂の様子から、賢木の死を知った上でそれを隠蔽しているのは明らかです。

月穂の息子である小学生・想は心を閉ざしていて、何かがあったことは確かです。

賢木は懸命に自分の死んだ時のことを思い出そうとしますが、死の前後はほとんど曖昧で、自分がどうやって亡くなったのか思い出せません。

賢木は鳴と自分の死について調べるうちに少しずつ自分の記憶を取り戻し、自分がなぜ亡くなったのか、なぜ自分が幽霊としてこの世に現れたのかを知ります。

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感想

あくまでひと夏の思い出

レビューなどを見ていると、『Another』と比べて本書に対して低評価をしている人がけっこういます。

はっきりいって、比較すること自体が違うのではと個人的に思っています。

『Another』では半年をかけて『災厄』という恐怖に立ち向かったわけで、それは壮大な話です。

一方で、エピソードSは過去の掘り下げこそあるものの、現実の期間としては夏の一週間程度。

まずその時点で『Another』のような大風呂敷は広げられません。

またエピソードSでは『災厄』そのものを取り扱っておらず、あくまでなぜ賢木が幽霊になってしまったのかという謎を解くことに重点が置かれています。

そのためホラーというよりもミステリのテイストが強く、夏という時期もありどこか淡く儚い空気を帯びています。

外伝と割り切ってシリーズに新たな風を取り入れる本書の在り方は、僕はとても好きです。

本書自体に面白さがあり、さらに正式な続編の『Another 2001』への期待を押し上げてくれるので、そういった視点から本書を眺めるともしかしたら違った評価になるかもしれません。

鳴の知らない一面が見られる

一人称は賢木ですが、本書では夜見山以外での鳴の色々な姿を楽しむことが出来ます。

学校外なので制服ではなく私服なのはもちろんのこと、学外の人間に見せる表情はまた違っていて、新たな彼女を発見することができました。

ある意味で、鳴のファンブックのような立ち位置として本書を捉えるのも一興かもしれません。

エピソードSの『S』の意味は?

本書のあとがきにて、綾辻さんはこの『S』の意味を考えながら読むのも良いと言いつつも、その意味については言及していません。

これは僕の推測ですが、この『S』は何か一つの事柄を指すのではなく、複数の『S』とつく言葉が出てくるからそれでまとめたのだと思います。

メインキャラクターとして物語の根幹にいる賢木や想。

核心部のネタバレになるので詳しくは書きませんが、終盤にもう一人『S』のつく人物が登場します。

他にもこじつけようと思えば『S』のつくキーワードはいくつか出ていきますが、僕はこのあたりの登場人物で十分ではと考えます。

もちろん正解は公表されていませんので、読者なりに『S』の意味を考え、その考えの意味に思いを馳せながら本書を読む。

これが一番の正解かもしれません。

おわりに

続編である『Another 2001』に繋げてくれるだけでなく、本書単体としてもちゃんと魅力を持った作品でした。

シリーズを十二分に楽しみたいという人にとって、本書は絶対に欠かすことのできない一冊です。

続編はこちら。

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