ホラー

『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』あらすじとネタバレ感想!

ショッキングな幕切れで知られる竹本健治の「恐怖」を筆頭に、ノスタルジックな毒を味わえる宇佐美まことの図書館奇譚「夏休みのケイカク」、現代人の罪と罰を描いた恒川光太郎の琉球ホラー「ニョラ穴」、誰からも省みられないホームレス男性の最期を描いた平山夢明の衝撃作「或るはぐれ者の死」など、現役の人気エンタメ作家による力強い作品と、小松左京のアクロバティックな発想が光る怪奇小説「骨」、土俗的恐怖とフェミニズム的視点を融合させた直木賞作家・坂東眞砂子の「正月女」、耽美的なゴシックミステリーで没後も熱烈なファンをもつ服部まゆみの和風人形怪談「雛」、昨年11月惜しくも急逝した小林泰三氏渾身の一作「人獣細工」などレジェンド級の名品が、ホラー小説の豊かさをあらためて提示する。心霊・怪談系の作品が多かった『再生 角川ホラー文庫ベストセレクション』に対し、『恐怖 角川ホラー文庫ベストセレクション』にはSFや犯罪小説、ダークファンタジーなどの発想を用いた作品も収録。この二冊合わせ読むことで、日本のホラー小説の神髄を味わうことができる。

Amazon商品ページより

『再生』に続く角川ホラー文庫の名作を集めた本書。

前作とは違ったテイストのホラーの数々が楽しめるので、ホラー初心者にはもちろんのことホラー好きにもたまらないラインナップになっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

恐怖

竹本健治さんの作品。

恐怖という感情が欠如している私は、高校時代の友人と恐怖の生まれ方について異なった意見を持っていて、どちらが正しいのかを証明するためにとある実験をします。

実験は友人の勝ちに思われましたが、それが正しくなかったことがさらに語られます。

小松左京さんの作品。

私はいま住んでいる藁屋に井戸を掘りたくなり、職人に穴を掘らせます。

すると出てきたのは、なんと人の骨でした。

他にも象の骨も見つかり、それも何万年も昔のものだといいます。

私はいつしか井戸のことなど忘れ先に掘り進めることに執心するようになりますが、やがて地層がもたらす意味が明らかになります。

夏休みのケイカク

宇佐美まことさんの作品。

私は小さな図書館でボランティアとして活動していて、そこを訪れる少女・沙良のことが気になっていました。

沙良は父親の再婚相手のことをよく思っておらず、私は過去の自分をそこに重ねます。

ある日、私は見知らぬ誰かと本に落書きをし合う形で文通をするようになり、沙良のより深いところに触れます。

ところが、物語は思わぬ方向に展開します。

正月女

坂東眞砂子さんの作品。

私は病気になり、地元にある夫の実家で暮らすようになります。

退院して気楽なはずなのに、その家において私はただの役立たずであり、さらに心労をためます。

そんな年末年始のある日、事件は起きます。

ニョラ穴

恒川光太郎さんの作品。

和重は居酒屋で観光客らしき男と一緒に飲み、酒があると漁師小屋に招きます。

しかし、和重は酔っている時に侮辱されると相手を殴る悪癖があり、男を殴った時点からの記憶がなくなります。

そして気が付くと、男は死体になって転がっていました。

或るはぐれ者の死

平山夢明さんの作品。

JJは六十七歳にして路上に住み、自由気ままに暮らしていました。

ある日、JJは路上に転がる子供の死体らしき塊を見つけて驚きますが、周囲の反応は彼のものとは違っていました。

服部まゆみさんの作品。

とある少女のために一体の雛が作られ、それが時代を経て別の人間の手に渡ります。

その雛には様々な秘密が隠されていました。

人獣細工

小林泰三さんの作品。

夕霞は先天性の病気を持ち、臓器移植専門の医師である父親によって体の隅々までメスを入れられていました。

まるで継ぎはぎ娘です。

しかも埋め込まれた臓器は人間のものではなく、豚のものでした。

ちなみに豚の字は、作中では別の漢字をあてています。

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感想

再生とは違ったホラー

本書は角川ホラー文庫ベストセレクションの第一弾である再生とは違ったラインナップを誇っています。

再生が怪奇・心霊的要素が強かったのに対して、本書にはSFやミステリのテイストも含まれたホラーが選ばれています。

そのため一般的にイメージするホラーとは少し違うかもしれません。

本書はよく読み込むことではじめて恐怖がわきあがる作品が多く、そこまで読み込んだからこそ逃れられない怪しい魅力を持っています。

本書単独で読むのも良いですが、再生と対比させながら読むことでホラーの多岐にわたる魅力を知ることができます。

個人的なオススメ

今回、僕の読んだことのある作品はほとんどなく、新鮮な気持ちで様々な名作ホラーを読むことができました。

その中でも特にオススメなのが『夏休みのケイカク』、『雛』です。

ホラーに出てくる暗い、怨霊のような感情を描くという点において女性作家さんが上手いと感じることが多く、上記二作品はそれに該当します。

もちろん他の作品も格別で、2020年に病で亡くなられた小林泰三さんの魅力を改めて知る良い機会にもなりました。

おわりに

第二弾になっても名作のクオリティは落ちず、角川ホラー文庫がどれだけの名作を生みだしてきたのかが分かります。

ベストセレクションという性質上、長編が選ばれることはないのが残念ですが、ぜひ第三弾も読みたいと思える最高の一冊でした。