『本陣殺人事件』あらすじとネタバレ感想!旧家で起きた惨殺事件の真相とは?
江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた……。アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場作品となる表題作ほか、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の二編を収録。
Amazon商品ページより
金田一耕助シリーズ第一弾となる本書。
当時ではまだ珍しかった密室殺人を扱っていて、様々な意味で分岐点となる作品となっています。
表題作の他に二編収録されていて、読み応えも十分です。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
舞台
物語の舞台は、一九三七年の岡山県。
本陣とは江戸時代以降の宿場のことで、大名など位の高い人たちが泊まっていました。
ここでは旧本陣の一柳家がメインとなり、事件が繰り広げられます。
三本指の男
事件が発生する数日前。
村の役場に一柳家の場所をたずねる男が現れます。
男はみすぼらしい風貌で、右の頬に大きな引きつれ、右手の指が三本しかありませんでした。
誰の印象にも残るこの男ですが、事件が起きたことで大きな意味を持つことになります。
結婚式
一柳家では長男と賢蔵と久保克子の結婚式が行われます。
式自体は何事もなく終わりますが、その数時間後に事件が起きます。
新郎新婦のいる離れから悲鳴と琴の音が聞こえ、駆け付けると賢蔵と克子が亡くなっているところが発見されます。
離れには二人しかおらず、降ったばかりの雪に足跡がないことから、状況だけを見ると、二人を殺害して逃げた人物はいないということなります。
つまり密室殺人です。
こうして事件が幕を開けました。
感想
印象的な出だし
本書は三本指の男の登場から始まり、そこから事件の発生まであっという間です。
当然、読者は三本指の男が事件に関わっている、あるいは犯人ではないかと思います。
もちろんミステリを読み慣れている人であればミスリードを疑うわけですが、どうミスリードしたいのか。
おそらくそこまでは分からない状態で読み進めることになります。
このミステリを意識した読書はなかなか面白く、最近のミステリでは感じられない読み心地となっています。
金田一の推理
角川文庫バージョンだと、金田一が登場する作品は本書が二作目になるわけですが、ここで金田一の推理スタイルがだんだん見えてきます。
彼は頭脳明晰ではあるのですが、それが発揮されるのは徹底的に状況を分析し、必要な情報を集めたからです。
もちろん着目点の鋭さがあるから情報を集めようと思うわけですが、それを差し引いても超人的な能力に頼っていないことが分かります。
読者としてもたくさんの情報が手に入るため、知らず知らずのうちに推理を組み立て、能動的に読書することになります。
地味ではあるのですが、その分、自分も探偵になったかのような感覚になるので、ミステリの醍醐味を存分に味わうことができます。
おわりに
ミステリを楽しめる仕組みがしっかり盛り込まれ、能動的な推理を楽しむことができます。
動機やトリック含めて意外性もあり、ミステリ好きであれば絶対にオススメです。
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