ミステリー

中山七里『ヒポクラテスの誓い』あらすじとネタバレ感想!死者と誠実に向き合う法医学ミステリ

浦和医大・法医学教室に「試用期間」として入った研修医の栂野真琴。彼女を出迎えたのは偏屈者の法医学の権威、光崎藤次郎教授と死体好きの外国人准教授・キャシーだった。凍死や事故死など、一見、事件性のない遺体を強引に解剖する光崎。「既往症のある遺体が出たら教えろ」と実は刑事に指示していたがその真意とは?死者の声なき声を聞く、迫真の法医学ミステリー! 

「BOOK」データベースより

法医学ミステリ『ヒポクラテス』シリーズ第一弾の本書。

北川景子さん主演でドラマ化もされています。

生者と同じく死者と真摯に向き合う姿勢が素晴らしい。

そして中山七里さんの作品ではお馴染みの刑事・古手川が登場し、法医学教室の医師たちと連携して導き出す推理は鮮やかで、エンタメとしてもミステリとしてもかなりレベルが高いと感じました。

公式サイトはこちら

ドラマ化に際した本書に関する中山さんへのインタビューはこちら。

『ヒポクラテスの誓い』ドラマ化記念 原作者 中山七里インタビュー

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

一 生者と死者

研修医の栂野真琴は浦和医大の内科教授・津久場の指示で法医学教室で研修を受けることになりました。

ところが法医学教室の光崎教授、准教授のキャシー共に死体が大好きな変わり者で、患者において生者と死者の区別をしないという考えを持っていました。

なるべく医師としてリスクの低い道を進もうと考えていた真琴にとって、法医学教室での仕事は過酷でした。

真琴はいきなり事件現場に連れて行かれ、そこで刑事の古手川からとある死体を見て欲しいと頼まれます。

こうして真琴の新たな医師としての苦難と挑戦と日々が始まりました。

二 加害者と被害者

法医学教室に電話をしてきたのは、篠田凪沙という九歳の少女。

彼女の父親が運転する車が人を轢いて殺めてしまいますが、凪沙は、父親はそんな運転をする人ではないと信じていました。

事故当時の様子からは、事故としか思えません。

それでも古手川には引っかかるところがあり、事故以外の可能性も含めて捜査が始まります。

三 監察医と法医学者

ボートレース中、真山慎司というレーサーが大きくコースを外れて壁に激突。

真山はそのまま亡くなりました。

所轄の大森署は事故当時の状況、真山に恨みを持つ人間が浮上しないことから事故と決めつけていました。

遺体も解剖済み。

ところが光崎はこの遺体に興味を持ち、古手川にさらなる捜査を命令します。

真琴や古手川は訳が分からないまま捜査に乗り出しますが、次第に思っていたのとは違った真実が浮かんできました。

四 母と娘

真琴の高校時代の友人・柏木裕子は肺炎を患い、自宅療養していました。

真琴はたまに裕子の自宅を訪れては彼女の様子を観察していましたが、ある日突然裕子の体調は悪化し、そのまま亡くなってしまいます。

普通に考えればただの病死ですが、光崎はなぜか裕子に興味を持ち、解剖をさせろと言い出します。

いつもの光崎らしい言い草ですが、友人の死を前に真琴も冷静ではいられません。

つい感情論をぶちまけてしまいますが、それでも光崎は引くことなく、解剖するという意志を一切曲げません。

真琴には全く意味の分からない行動でしたが、その言葉の裏にはちゃんと意味がありました。

五 背約と誓約

ここで真琴が、光崎の暴走を止めるために津久場によって法医学教室に送り込まれていたことが判明します。

最近、法医学教室の解剖数は例年を遥かに上回り、光崎は独自に既往歴のある死体を集めている始末。

光崎の真意は何なのか。

ただ死体が好きなためにそんな特異な行動に出ていると思われていましたが、その行動の裏には浦和医大を揺るがしかねない真実が隠されていました。

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感想

真摯なミステリ

序盤では、光崎やキャシーはただの死体好きで、自分の欲求を満たしているようにしか見えません。

真琴の思うこと、口にすることはいちいち真っ当で、二人に反論されると内心ムッとなります。

しかし、次第に二人の口にする言葉の意味が分かるようになり、法医学者として何が大切なのかが分かってきます。

僕は真琴と同じように二人の教えを受け、一緒に成長したような気持ちでした。

警察側から捜査するのとは違う、より真実に対して真摯に向き合う姿勢が感じられ、終始そんな彼らの姿に惹かれながら読んでいました。

最初は気持ち悪いとしか思えなかった解剖のシーンですが、最後の方になると、最初に正中線に沿って下腹部までY字にメスを淹れるシーンを読んだだけで神聖な気持ちになれました。

エンタメとしても優秀

もちろん堅苦しいだけのミステリではありません。

日常、というか解剖シーン以外だと光崎とキャシーの言動は非常識なものが多いし、間違っていると思われることも多々あります。

それに対して振り回される真琴、古手川は可哀そうに思いつつも作品を盛り上げてくれるし、未熟な二人が手を取り合って事件に向き合う姿は読んでいて楽しかったです。

話を経るごとにお互いに異性として意識し出しているのが丸わかりなので、今後、そういった色恋沙汰に発展するかもしれません。

おわりに

中山さんの新たな代表作として期待できる作品です。

ミステリ、エンタメと様々な欲求を満たしてくれますので、堅苦しい読書が苦手という人にもおすすめです。

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