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貫井徳郎『慟哭』あらすじとネタバレ感想!慟哭を生み出した事件を描くミステリ

harutoautumn
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痛ましい幼女誘拐事件の続発。難航する捜査。その責めを負って冷徹な捜査一課長も窮地に立たされた。若手キャリアの課長をめぐる警察内部の不協和音,マスコミによる私生活追及。この緊迫した状況下で,新しい展開は始まった! サイドストーリイに,黒魔術を狂信する新興宗教の生態や現代の家族愛を鮮烈に描きつつ,人間内奥の悲痛な叫びを抽出したこの野心作は,北村薫氏をして,書き振りは《練達》,読み終えてみれば《仰天》,と驚嘆させた,巧緻この上ない本格推理。

Amazon商品ページより

ミステリのおすすめとして度々登場する本書。

貫井徳郎さんのデビュー作でもあります。

幼女誘拐事件を追う警察と深い悲しみを背負って新興宗教にハマる男の二つの視点から物語が進み、やがて意外なリンクを見せる、という極めてオーソドックスな構成になっています。

その分、作品の仕掛け、込められた想いがストレートに伝わってくるので、王道なミステリを読みたい人にはおすすめな一冊です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

連続幼女誘拐事件

こちらは警察パートで、視点はキャリア組の一番の出世頭である捜査一課長の佐伯、同じく捜査一課の丘本が交互に担います。

平成三年、多摩市在住の少女が行方不明になり、一か月後に服だけが日野市で見つかります。

その後、遺体が見つかり、警察は何としてでも犯人を捕まえると意気込みます。

昨年、東久留米市で同じく少女が誘拐された事件があり、いくつかの共通点から同一犯の可能性もありました。

佐伯は捜査の指揮をとりますが、そこにはいくつか問題があります。

通常、佐伯のような実経験の少ないキャリア組が捜査一課長を務めるのは異例であること。

妻の父親が警察庁長官で、佐伯自身も元法務大臣・押川の隠し子。

キャリアに血縁関係が大きく関係していて、現場の捜査員たちは佐伯自身を正しく見てくれず、警察が決して一枚岩でないことが早々に露呈します。

これだけの材料でも厳しいのですが、マスコミは佐伯のプライベートにも興味があり、やがてそれが問題に発展します。

悲しみを背負った男

捜査の一方で、名前すら明かされない男が視点のパートも同時に展開されます。

男は深い悲しみを背負っていて、後に娘を亡くしていることが判明します。

自暴自棄のように男は手当たり次第に新興宗教に手を出し、その中で『白光の宇宙教団』の考えに賛同し、入会します。

宗教臭がほとんどせず、会員も親切で強引に寄付を要求されることもない。

男はあっという間に宗教にのめり込んでいきますが、少しずつ団体の本当の姿が見えてきます。

そして、男は思いもよらない行動に出ます。

繋がる二つの物語

はじめは何の接点も見えない二つのパートですが、宗教にはまった男の様子がおかしくなってから少しずつリンクを見せ始めます。

男が事件にどのように関与しているのか。

警察は事件を解決することができるのか。

物語には事件を解くためのヒントが散りばめられているので、ぜひ注意して読んでみてください。

感想

色褪せないミステリ

本書が発表されたのが一九九三年ですが、令和に入ってから読んでも全く古臭さを感じませんでした。

警察が一枚岩でないことも、マスコミとの距離感が大切で難しいこともミステリの中では半ば常識になっていて、まさに王道な設定です。

幼女が誘拐されて、悲しみに暮れる家族や親族。

一方のパートでは同じく悲しみを背負った男が宗教にはまる様子が描かれ、これもまた題材として新鮮味はありませんが、その分、人を惹きつける強烈な魅力があります。

奇をてらわない、王道な警察ミステリが読みたい。

そんな人に本書はうってつけです。

活かしきれていない設定

本書の大筋としては僕も面白いと感じたのですが、いくつか残念に感じたポイントがあります。

一つが、登場人物や設定が活かしきれていないこと。

人物では特に佐伯と同じくキャリア組で監察官の石上が挙げられます。

あれだけねちっこい性格で、登場してすぐに嫌いになれるほど嫌味な男です。

立ち回り方によってはもっと大きな役割を担えそうですが、実はそこまで大きな役目はなく、気が付いたら登場しなくなっていました。

それから佐伯の親族もそうで、あれだけ設定を作ったからにはもっと活かされるものと思っていましたが、これに関してもとりあえず作った設定、という印象が否めません。

四〇〇ページ以上のボリュームですが、二つの時系列を同時に描いているので、警察パートについては描写が不足している感が否めません。

タイトルに違和感

僕が一番書きたかったことは、タイトルの違和感です。

悲しみに耐えられず声を上げて泣くこと、それが慟哭です。

本書で描かれる結末は、確かに慟哭するに足るものでした。

しかし、慟哭した人物への違和感が拭えないというか、感情移入がどうしてもできませんでした。

そこまで悲しみを背負う描写があっただろうか。

少なくとも僕にはないように思えたし、そういった意見もネット上で散見されました。

慟哭の部分が期待外れということで、僕はあまり本書にはまりませんでした。

おわりに

慟哭、という強烈なタイトルに惹きつけられた人も多いと思います。

僕はがっかりした側ですが、読んで期待通りという人も多いので、気になる人はぜひその目で確かめてください。

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