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『水底フェスタ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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湖畔の村に彼女が帰ってきた。東京に出て芸能界で成功した由貴美。ロックフェスの夜に彼女と出会った高校生・広海はその謎めいた魅力に囚われ、恋に落ちた。だが、ある夜、彼女は言う、自分はこの村に復讐するために帰ってきたのだと。村の秘密と美しい女の嘘が引き起こす悲劇。あまりに脆く切ない、恋の物語。

「BOOK」データベースより

辻村さんといえば青春やSFを軸にした作品で脚光を浴びましたが、近年はより現実に近い作風にシフトし、本書もその一冊となります。

部隊は山岳地帯にある小さな村で、そういう意味では『島はぼくらと』に通じるものがありますが、読了感は真逆、非常に鬱々としたものが残ります。

最初は思春期の初々しい恋愛が描かれ、男ならこんなシチュエーションに憧れると思ってしまうのですが、後半から一気にメインとなる古い慣習、大人たちの本当の姿は恐怖すら覚えるほど常軌を逸しています。

これまでの作品のような内容を望む読者からしたら、本書は望ましいものではないのかもしれません。

しかし、その様子を描く文章はまさしく辻村さんそのもので、彼女の文章でこういったテイストの作品を味わえたことを、僕は嬉しく思います。

以下は、書評家の方の本書に関する書評です。合わせてお楽しみください。

日常の中に異彩を放つ祝祭(フェス)の物語 『水底フェスタ』 (辻村深月 著) | 書評 – 本の話

この記事では、本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

偶然の出会い

この物語の主人公は、高校二年生の湧谷広海。

彼は自分の住む睦ッ代村で開催されるムツシロ・ロック・フェスティバル、通称ムツシロックに参加し、そこで睦ッ代村出身の女優、織場由貴美を見つけます。

特に好きではなかったけれど、その非現実的な美しさに広海は目が離せませんでした。

しかし、その日は彼女とは何もなく、広海は一緒に来ていた市村と織場門音と帰ります。

ここから、話は舞台となる睦ッ代村の説明に。

睦ッ代村はかつて織物業などで存続していましたが、市町村合併の機運が高まると自主財源確保と村興しのために観光事業に乗り出し、そこに目をつけたのが東京の日馬開発という企業でした。

日馬開発を誘致し、別荘地を開拓することで一時は栄えましたが、バブル崩壊と同時に観光客は激減し、睦ッ代村は次なる手としてロックフェスを誘致します。

それが十年前のことでした。

ロックフェスを誘致したことで睦ッ代村の認知度は上がり、織物業にもブランド力がつき、合併せずとも存続していけるだけの力をつけます。

そして、広海の父親である飛雄は、この村の村長です。

広海は閉鎖的な村に息苦しさを感じ、何かを求めていました。

すると、フェスから一週間近く経った時、由貴美が村に帰ってきたという噂が流れ始め、由貴美の実家には多くの村民が面白半分で集まっていました。

広海は飛雄の妹の須和千鶴、その息子の光広に由貴美のことを聞くと、彼は由貴美の先輩で、付き合っていたと嘘か本当か分からないことをいいます。

そして、彼にも由貴美が今更になって戻ってきた理由は分からないといいます。

再会

相変わらず由貴美の話が村のあちこちで上がる中、広海は週末になると水根湖で音楽を聴きながら読書を楽しもうとしますが、そこには先客がいました。

それは、由貴美でした。

広海は彼女に声を掛けられ、家まで原付で送ってほしいと頼まれます。

彼は由貴美の乗ってきた自転車はどうするのかと指摘しますが、彼女はそれを湖に投げ捨て、否応なく乗せて帰ることになります。

彼女はフェスの日に広海と目が合ったことを覚えていて、いい男だったから忘れなかったと冗談ともつかない言葉で広海を翻弄し、分かっていても広海は意識しています。

そして由貴美の家まで送ると、彼女に頼まれて自分の携帯の番号を由貴美の腕に書き、二人は別れます。

その後、広海が自宅に戻ると、先客がいます。

日馬達哉。日馬開発のドラ息子で、広海の一つ上の先輩、素行が原因で東京にいられなくなったと噂される不良。

達哉はかつて、彼のことを揶揄した門音の手に彫刻刀を突き刺し、それ以降、広海たちとは目すら合わせない関係です。

ところが、それは表向きで、広海だけはこうしてたまにお互いの家を行き来する関係を続けていました。

達哉もまた由貴美戻ってきたことを知っていて、彼女に会いたいから家の場所を教えてほしいといいますが、何をしでかすか分からない達哉に不安を感じた広海はそのうち案内すると濁し、由貴美から遠ざけます。

それから三日後、由貴美から電話が入り、広海は家族に内緒で彼女の家に向かいます。

復讐

由貴美はもっともらしい理由をつけて広海を呼び出しますが、彼はそれが目的でないことを見抜いていました。

そのことを伝えると、由貴美はあっさりと村に戻ってきた目的を教えてくれます。

この村に復讐するのだと。

由貴美は広海が村長の息子であることに目を付けただけでなく、鬱屈の仕方がかつての自分に似ているとして、協力を呼びかけます。

広海はどちらとも返事しませんが、一方で由貴美の放つ魔力のような魅力に取り込まれつつありました。

もし協力してくれるなら明日の夜に改めて来てほしいと言われ、結局、広海は翌日も由貴美の家を訪れます。

そして、広海は彼女に挑発され、体の関係を持ちます。

広海は由貴美の教えてくれる快楽に溺れ、彼女の事情を聞かされます。

村の外から嫁いだ由貴美の母親は村の慣習に馴染めず、しかし由貴美を置いていくよう親戚と揉め、この村から抜け出せずにいました。

それは由貴美が大人になってからも変わらず、由貴美がいくら誘っても母親は祖父母を放ってはいけないと村に残ることを選びます。

そして、母親は家の裏の竹やぶで首を吊って自殺します。

広海はこのことを知りませんでしたが、それはこの村の隠蔽体質に問題がありました。

しかし当時、由貴美は自分の芸能活動に影響が出ないようその隠蔽に流され、今は後悔しています。

そして、彼女は復讐について教えてくれます。

母親は生前、お金がもらえなくなるからと由貴美に住民票だけは移さないよう言っていました。

そのお金とは、村長選挙のたびに候補者からバラ撒かれるお金のことで、違反行為です。

由貴美は母親を失い、ようやく遠慮がいらなくなり、このお金のことを世間に知らせようというのです。

これに反論したのは、現村長の息子である広海です。

これまではいざ知らず、父親の時は他に候補者が出なかったからそんなことはありえないと言いますが、お金がバラ撒かれた=自分以外の候補者を出さないためと由貴美は反論します。

そして村長になれるのは四軒のみで、広海の属する湧谷家もその一つです。

その四軒は村長職を順番に回し、お金が続く二期、八年間を全うし、次の家系にバトンタッチします。

広海はまだ信じられませんが、それでも由貴美の復讐には協力するつもりです。

その後、一度由貴美は姿を消しますが、後日、移動手段である車を持って帰ってきます。

広海は早速調べたことを報告し、銀行の口座からはそんな痕跡は見つかりませんでした。

由貴美はフェスに行こうと広海を誘い、二人は計画を立てるのでした。

罪の共有

由貴美の家から帰った後、シャツに口紅がついていたことで母親に女性と会っていたことがバレますが、相手が由貴美だとはまだ気が付かれていません。

広海が光広の勤める診療所を訪れると達哉がいて、いまだに由貴美の家を教えろとしつこく聞いてきます。

彼女のことが気に食わないのだといいます。

その後、広海は光広に家まで送ってもらい、その途中で光広にはすでに由貴美と会ったことが知られていたことが判明します。

村人が二人のいるところを目撃していたのです。

光広は人生がめちゃくちゃになるからこれ以上近づくなと忠告しますが、広海にはそれが嫉妬にしか聞こえず、耳を貸しません。

家族や友人にバレても構わないと心に決め、広海は由貴美とフェスに行きます。

普段とは違う表情を見せる由貴美とフェスを楽しみますが、ふとした拍子にまた復讐の話になり、広海は信じられないことを聞きます。

由貴美の母親は何十年も不倫をしていて、相手は広海の父親である飛雄。

彼女にとって、村の権力者と付き合うことがステータスであり、生きがいだったのです。

広海はそれを否定しようとしますが、母親本人から聞いたから間違いないと由貴美は冷静で、母親が村を出ない理由がそれでした。

由貴美の復讐の第一歩、それは飛雄の大事な一人息子である広海に近づくことでした。

飛雄が母親を奪ったように、由貴美は広海を奪いたい。

しかし、広海のことが純粋に欲しいのも事実だとして、広海は頭で拒絶しつつも由貴美の魅力に抗えませんでした。

翌朝、二人はフェスを後にし、夜に水根湖に到着します。

広海は由貴美が信用できないから父親に確認すると言いますが、そこにバイクが現れます。乗っていたのは達哉でした。

達哉は由貴美の乗っていた車を兄の車だと言い、由貴美と会っていたことを黙っていた広海を殴り、次に由貴美に襲い掛かります。

二人が取っ組み合う次の瞬間、何かが湖に落ちます。達哉でした。

由貴美は足元にあった鉄材で彼を殴り、湖に落としたのです。

広海は人を呼ぼうといいますが、由貴美はもう手遅れだと隠蔽しようとして、迷った末に由貴美を守るためにこのことは二人の秘密にすることにします。

帰り道、この車は達哉の兄、京介のもので、由貴美とは友人で貸してもらったことを知ります。

家に戻ると当然怪我のことを聞かれますが、広海はフェスで怪我をしたと誤魔化し、学校を休みます。

その日、広海は冷凍庫に古いレジ袋が置かれていることに気が付き、たまたま手を伸ばします。

中にあったのは三冊のノートで、そこには選挙のためにバラ撒いたお金が記載されていました。

広海は自分の持つ新しいノートと入れ替えると、不正の証拠は自分の手元に置きます。

睦ッ代村の本当の姿

一日と経たずに達哉が戻ってこないことが村中に知れ渡り、彼の家の家政婦であり英恵は必死に行方を捜していました。

父親からは嘘を見抜かれているような質問をいくつもされますが、広海は嘘をつき通して誤魔化します。

翌日、広海は由貴美の家を訪れ、不正の証拠を見つけたことを報告。

広海はこのまま隠しきれないと判断し、達哉の死体を見つけても由貴美のことは言わない、だから復讐は諦めて東京に帰るよう説得しますが、由貴美は激怒し、何かを言いかけます。

しかし、そこに光広が現れ、由貴美の頬を張ります。

広海は由貴美と会っていたことを謝りますが、光広の怒りは由貴美にだけ向けられていました。

光広が話す、由貴美が村に戻ってきた本当の理由。

それは復讐のためでなく、自分のためだというのです。

仕事に行きづまった由貴美に入れ知恵をしたのは京介で、村の不正を暴くことでキャスターなど別の道を切り開くことができる。

達哉はこのことを知っていて、光広に相談していました。

そして光広は広海の怪我と達哉の失踪を結び付けようとしていて、これ以上誤魔化すことはできません。

由貴美は明言こそしませんが、自分がやったと白状します。

すると光広は、飛雄たちと来ていることを明かし、飛雄が現れます。

彼はいつもの優しそうな笑顔で由貴美の気持ちを逆なで、広海はあげないと言い、由貴美を自宅に連れて行きます。

家に戻ると母親も何事もないかのように接し、それこそが不正をしている最大の証拠のように広海には感じられました。

広海はいつも通り学校に行くよう言われ、光広に送ってもらう途中に事の経緯を聞きます。

日馬開発は代替わり問題で揉め、京介は選挙の不正を知り、村を告発すると同時に父親を会社から切り離そうと考えていました。

日馬が手を引こうとしているのを感じていた村にとって、父親は頼みの綱なのです。

京介は初めは達哉に頼み、彼が突っぱねたことで由貴美に目をつけ、それで達哉は彼女のことが気に食わなかったのです。

達哉が協力しなかったのは、日馬が撤退すればムツシロックがなくなり、フェスが好きな広海が悲しむと思ったからです。

さらに由貴美が必死になる理由、それは過去の無理な中絶で子どもの産めない体になってしまったため、仕事にしがみつくしかなかったからです。

学校から戻ると、家から光広の怒鳴り声が聞こえます。

家の中には父親を始め、親戚や歴代の村長、その家系の人間が集まっていました。

彼らは達哉が湖に落ちたことを知っても警察に知らせず、京介にもうまく誤魔化そうと考えているのです。

彼らからしたら由貴美は身内であり、日馬はよそ者。

だから由貴美をかばうのです。

広海は隠蔽が行われるその瞬間を目の当たりにし、自分は裏切られていたのだと思うのでした。

由貴美の本当の狙い

広海は父親に頼み、閉じ込められている由貴美に会わせてもらいます。

光広に聞いたことを伝えると、彼女はそのことを認め、京介と付き合っていることも明かします。

そのことを知った村の住人からは、京介と結婚して日馬を撤退させないよう説得しろとまで言われていました。

しかし、跡取りを求める京介が、子どもの産めない由貴美と結婚する気などないことを彼女は分かっていました。

広海は改めて由貴美が村に戻ってきた理由を聞きます。

すると、由貴美は答えます。

もちろん母親の復讐もあるし、京介からもらえるお金もある。

しかし、本当の目的は広海なのだと。

由貴美は、母親の自殺の原因が広海の母親による嫌がらせだと話し、自殺が病死だと隠蔽されたことこそがその証拠だといいます。

しかし、広海を求めるのは復讐のためではありません。

由貴美と広海が、姉弟だからです。

由貴美の父親は、飛雄だというのです。

広海は弟だと知って近づいてきた由貴美に恐怖し、部屋から逃げ出します。

由貴美は追ってきませんが、彼女の目を見て分かりました。彼女は、決して広海のことを諦めないと。

その三日後、父親から話があると言われ、そこには由貴美もいました。

集まって早々、父親は広海に対して、由貴美と結婚したらどうかと提案し、場が凍り付きます。

広海は、姉だと知りつつも由貴美を黙らせるためにそこまでするのかと何も言えません。

すると、由貴美も同じことを思い、自分たちが姉弟であることを口にしますが、父親はそれは誤解だと涼しい顔です。

由貴美の母親も由貴美も血液型はAB型ですが、父親はO型で医学的にあり得ません。

由貴美は崩れ落ち、誰も父親の言うことに反論できませんでした。

結末

翌朝、広海は家族に気が付かれないように由貴美を迎えに行き、彼女の手をとって逃げ出します。

朝陽が昇る中、水根湖で休憩をとる二人。

由貴美は村のことが嫌いだと改めて口にする一方で、それの何が悪いのかと思うようになり、自分こそが睦ッ代に縛られていたことを思い知ります。

すると、広海と由貴美を捜す村人の声が聞こえ、広海は由貴美を連れて逃げようとしますが、その前に由貴美は大好きと言って広海にキスをします。

その後、湖に向き直ると、そのまま飛び降ります。

広海も彼女の後を追って飛び込み、今さらになって気が付きます。

自分が、本当に由貴美に恋をしていたことを。

広海は彼女の体を抱きますが、そこで意識が途絶え、気が付くと自宅で寝ていました。

母親によると、助かったのは広海だけであり、由貴美は今も見つかっていないのだといいます。

広海は彼女の死が死んじられず、何日も食事もとらずに過ごします。

そこに父親が現れ、警察には届けていないが全力で探していることを伝え、由貴美の母親を愛していたことを打ち明けます。

彼の口にする気持ち、それは自分の由貴美に抱いていたものだと気が付く広海。

しかし、だからといって許せるわけではありません。

広海は、由貴美は本当は誰の子どもだと聞きますが、父親は表情を消し、織場の家の子どもだと吐き捨てます。

父親が血液型を偽っているだけで、もしかしたら由貴美の言う通り、二人は姉弟だったのかもしれません。

そして警察に届けないということは、ああは言っても由貴美には消えてもらい、いつものように隠蔽するのかもしれません。

しかし、真実は誰にも分かりません。

広海は母親が心配するのをよそに学校に向かいます。

今も不正の証拠となるノートは持っていて、父の書斎で京介の名刺も入手。

昨夜、英恵と電話で話し、駅で落ち合うことになっていました。

この後のことは描かれていませんが、彼は由貴美の遺志を継ぎ、この村の不正を公表し、達哉の死に対する罪を償うつもりなのかもしれません。

おわりに

未練と後悔、そして復讐だけが残る後味の悪い結末でした。

しかし、短い時間だけれど広海が抱いた気持ちはまぎれもなく恋であり、辻村さんはそんな儚い瞬間を見事に描き切ったと思います。

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