『揺籠のアディポクル』あらすじとネタバレ感想!無菌病棟で起きた事件が世界を一変させる
無菌病棟、通称《クレイドル》。
タケルと、コノハ、二人だけが入院する施設が、大嵐で貯水槽に通路を寸断され、外界から隔絶される。不安と焦燥を抱え、日付を越えた深夜──。
コノハは胸をメスで刺され、死んでいた。二人きりのはずの無菌病棟で、外気にすら触れられない彼女を誰が殺したのか?
Amazon商品ページより
震える結末!
『ジェリーフィッシュは凍らない』の著者である市川憂人さんによる本書。
はじめは少年と少女の気恥ずかしくて、でも微笑ましい恋愛劇ですが、すぐに状況が一変して本格ミステリに移ります。
物語の世界は、本当はどんな姿をしているのか。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
クレイドル
十三歳の尾藤健(タケル)は都内の無菌病棟『クレイドル』に入院していました。
彼を侵している病気は明示されていませんが、免疫力が極端に低下されているため少しのばい菌でも命に関わるため、無菌病棟から出ることはできません。
彼をケアしてくれるのは医師の柳と看護師の若林だけで、そんな彼らも防護服でしかコミュニケーションがとれません。
外界から完全に隔絶されているタケルですが、そんな彼には唯一の仲間がいました。
コノハ
それが赤川湖乃葉という少女です。
彼女はタケルよりも前からクレイドルにいて、同い年ということで仲良くなれれば良かったのですが、コノハはタケルに心を開いてくれません。
些細なケンカから二人は口を利かなくなりますが、ちょっとしたきっかけで仲直りするようになり、二人は少しずつ同じ時を過ごすようになります。
顔を合わせれば口喧嘩をすぐにしますが、それはお互いに気を許した証拠であり、二人の治療においては良い影響となりました。
ちなみに、この交流の中で、クレイドルのある病院の経営者がコノハの父親であることが判明します。
別れ
タケルは日に日にコノハを女性として意識するようになります。
しかし、免疫力のない二人にとって、接触することは下手すれば死を意味します。
タケルは、コノハに外の世界を見せるために何とか気持ちを抑えようとします。
そして、タケルがクレイドルに入って半年後のある日、クレイドルを強大な嵐が遅い、タケルとコノハは取り残されてしまいます。
幸い、二人が当面は生活していけるだけの設備があることから助けを待ちますが、そこで次の事件が起きます。
コノハが、胸にメスを刺されて亡くなっていたのです。
さらに彼女は何者かによって犯されていました。
タケルは何もかもが分からない中で、コノハのためにも彼女を殺害した犯人を探し始めます。
感想
少年少女の物語
前半はまさに少年少女の物語です。
ミステリ要素はなく、特殊な環境に置ける青春そのものです。
誰の邪魔も介入もないからこそ、二人は自然とお互いを意識することができて、大切に思うようになる。
その歩みはゆっくりで、丁寧な描写が非常に好感を持てました。
一変する
しかし、上記のテイストはコノハの死と共に終わりを告げます。
タケルのコノハに対する感情から、コノハが殺害だけでなく、犯されていたことも自然な流れに見えました。
あとは、一部の人間を除いて入れないクレイドルに侵入して、誰がコノハを殺害したかということです。
ここからはミステリパートとなり、前半とは違った面白さに引き込まれますが、後述の理由から僕はのめり込めませんでした。
限定された結末
本書は前提として、容疑者がかなり限定されています。
コノハが殺害された段階で、登場しているのはタケルの他に柳と若林だけ。
タケルの視点から捜査すれば、当然柳と若林に疑いの目が向きます。
しかし、いくつかの描写からタケルが信頼できない語り手である可能性が浮上し、物語に書いてあること全てを鵜吞みにするわけにはいかなくなりました。
ここまではいいのですが、物語の全容が見えてきた時、僕はがっかりとした感覚を隠せませんでした。
まあ、こうなるよなと。
僕は感覚で解いてしまいましたが、謎を解くための伏線は確かに張られていて、それは良かったのですが、だから何だと思ってしまったのも事実です。
あまりに力技で物語を成立させてしまったため、前半までの丁寧に築いた二人の関係が活かされておらず、残念でした。
おわりに
マリア&漣シリーズが好きなので、市川さんことはこのまま追い続けるつもりです。
ただし、上記シリーズ以外が今のところあまりはまっていないため、全部を読むべきだろうか。
次回作が出た時によく考えないといけないかもしれません。
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