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『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』あらすじとネタバレ感想!美人の元弁護士が難題を華麗に解決

柚月裕子さんの作品というと、どちらかといえば重ための話をじっくり読ませる作品が多いイメージでした。

しかし、本書を読んでそんなイメージは簡単に吹き飛びました。

小難しいこと抜きで、読むのがとてつもなく面白い作品です。

お決まりの設定の中にも独自のエッセンスが加えられ、エンタメとして一級品に仕上げているところに柚月さんの幅広い興味とそれを作品にする力を感じました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

確率的にあり得ない

藤請建設の二代目社長である本藤仁志は先代同様、経営者として器の大きい男でしたが、重大な決断を下せない弱さも持っていました。

しかし、コンサルタントを名乗る高円寺と出会ったことで状況は一変します。

高円寺は先のことを見通す力があるのだといい、事実、本藤の前で何度も奇跡を起こしてみせました。

本藤はすっかり高円寺を信じ込み、多額のコンサル料の代わりに重大な決断を委ね、成功を重ねます。

それによってますます本藤は高円寺にはまり込んでいきますが、もちろん未来を見通せる人間などいません。

高円寺のイカサマは、とある人物によって見破られることとなります。

合理的にあり得ない

神崎恭一郎はバブル期に投資で成功をおさめ、悠々自適な暮らしを送っていました。

しかし唯一気掛かりなのは、妻である朱美の不審な行動でした。

いじめが原因で引きこもりとなってしまった息子・克也の側をほとんど離れなかった朱美が、頻繁に家を空けるようになったのです。

しかも神崎に内緒で多額の預金を銀行から引き出していることも分かり、神崎は朱美を問い詰めます。

すると、朱美は霊能者の先生の元に通い、幸運になれる壺などを購入しているのだといいます。

神崎は詐欺師だと決めつけ、その霊能者の正体を突き止め、直接対峙します。

その霊能者とは、本書の主人公で上水流エージェンシーの所長を務める元弁護士・上水流涼子でした。

戦術的にあり得ない

涼子と助手の貴山に依頼を持ち掛けてきたのは、関東幸甚一家という暴力団の総長・日野でした。

彼は賭け将棋にはまっていて、暴力団関係者の中でも腕が立つ方でした。

二年前から横山一家の総長・財前と将棋をするようになり、二人の実力は拮抗していました。

ところがある日を境に財前は急速に腕を上げ、日野は連敗。

いきなりそこまで力の差ができるとは考えにくいため、日野は財前がイカサマをしていると考えました。

涼子は将棋のことをほとんど知りませんが、貴山は東大の将棋部の主将を務めるほどの実力者で、イカサマであると断言。

そしてその方法を調べ、日野に必勝法を授けます。

心情的にあり得ない

涼子は海運や造船業で名の知れた諌間グループの会長・諌間から依頼を受けます。

いなくなってしまった孫娘の久美を探し出してほしいのだといいます。

久美は広瀬というホストのような男にはまり、多額のお金を貢ぐようになっていました。

父親は広瀬に手切れ金を渡して関係を終わらせますが、その後、久美は失踪。

広瀬の行方も分からず、手がかりがない状態にあります。

涼子は久美を探すために全力を尽くしますが、彼女にとって諌間は弁護士資格をはく奪される原因となった人物です。

そこで、依頼達成と共に復讐することに決めました。

心理的にあり得ない

涼子の元に依頼人の桜井由梨が訪れます。

彼女の父親は三年前に多額の借金を残して自殺していますが、父親は誰かに騙されたことを口にしていました。

遺品の手帳からは野球賭博にはまっていたことが分かり、三回忌までに父親の無念を晴らしてほしいという由梨。

騙した相手・予土屋の電話番号は手帳に残されていたため、涼子と貴山は逆に予土屋を騙すための計画を立てます。

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感想

爽快エンタメ

美人な元弁護士と頭脳明晰な助手が、表に出せない一癖も二癖もある難題を華麗に解決する。

非常にテンプレートで分かりやすい設定ですが、これがめちゃくちゃ面白いんです。

難題はミステリ要素を適度に含んでいて、読者は自分でもある程度は解決できるように設定されています。

それを鮮やかなに解決する涼子や貴山の姿はカッコイイの一言です。

一方で、二人きりの時はカッコよさとは違う一面も見せてくれて、そのギャップがたまりません。

また、二人とも過去にそれなりの傷を持ち、そういう背景があっての今だと違った見方も出来て、設定ほど単純ではない奥深さも本書の魅力です。

これらを総合して、本書は爽快エンタメとしてかなり高いレベルを誇っています。

難しく考えず面白さを受け取ることが出来るので、読書でストレスを解消したい人にぴったりな一冊です。

ドラマ化もありえる?

読んでいて、いつドラマ化されてもおかしくないなと思いました。

もしかしたらそれも多少意識されているのかもしれません。

ドラマや映画などが好きな人は、自分なりに配役を考えて読むと違った面白さを見出せるかもしれません。

いつか答え合わせがあった時、その配役が合っていたのか確かめるのも面白いと思います。

おわりに

柚月さんの新たな一面を引き出してくれた一冊です。

シリーズ化も十分考えられるので、焦らず気長に待ちたいと思います。