『黄昏の百合の骨』あらすじとネタバレ感想!魔女の家に隠された秘密とは?
強烈な百合の匂いに包まれた洋館で祖母が転落死した。奇妙な遺言に導かれてやってきた高校生の理瀬を迎えたのは、優雅に暮らす美貌の叔母2人。因縁に満ちた屋敷で何があったのか。「魔女の家」と呼ばれる由来を探るうち、周囲で毒殺や失踪など不吉な事件が起こる。将来への焦りを感じながら理瀬は――。
Amazon商品ページより
『三月は深き黄昏の淵を』から始まるシリーズの第四弾である本書。(短編など除く)
前の話はこちら。
『麦の海に沈む果実』で主人公だった水野理瀬のその後が描かれているので、最低限、『麦の海に沈む果実』は読んでおいてた方が楽しめると思います。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
奇妙な遺言
水野理瀬は『麦の海に沈む果実』での生活を経てイギリスに二年留学。
その後、唯一の親代わりだった祖母の遺言に従い、かつて祖母が住んでいて今は二人の叔母・梨耶子と梨南子が住む家に住むことになります。
遺産を渡すのではなく、なぜ家に住まわすことを遺言にしたのか。
かつて理瀬が祖母に宛てた手紙にある『ジュピター』とは何なのか。
二人の叔母は理瀬と今は亡き祖母との間に何か秘密があるのではないか、その秘密はこの家にあるのではと推測し、理瀬の行動や言動からその秘密を探ろうとします。
一方、理瀬もそんな叔母たちの疑念に気が付いていて、ひとつ屋根の下での生活はどこか不穏な空気が漂っていました。
魔女の家
理瀬のやって来たこの家は常に百合の花が飾られ、強烈な匂いを放っています。
周囲からこの家は『白百合荘』、そして『魔女の家』と呼ばれていました。
この家に住む人の血筋は女系家族なのか男性はみな短命で、二人の叔母の夫はどちらも亡くなっています。
またこの家は軍と関係があったという話もあり、この家に住む理瀬や二人の叔母にすら知り得ない秘密がありました。
秘密
理瀬には二人の従兄弟・亘と稔がいて、久しぶりに三人で集まります。
理瀬と稔には共通の秘密があり、亘だけがそのことを知りません。
これは亘を自分たちのいる世界に入れない二人の優しさですが、亘もやがて二人が自分に秘密をしていることがあることを知り、ギクシャクした空気が流れます。
そして、不穏な雰囲気はこの家だけでなく、周囲の人たちからも漂っていました。
理瀬は祖母の残した秘密に近づいていき、やがて百合の花が飾られる理由を知るのでした。
感想
謎の一つ一つが魅力的
なぜ百合が常に飾られているのか。
なぜ理瀬がこの家に半年以上住むよう遺言が残されたのか。
なぜ『魔女の家』と呼ばれるのか。
もう謎の一つ一つが魅力的で、早く答えが知りたいとついページをめくる手が早くなってしまいます。
しかも、読み進めても謎が解けるどころが謎が増えるばかりで、これが読むスピードを加速度的に上げる理由になっています。
登場人物の二面性
理瀬の二面性については、『麦の海に沈む果実』や本書を読んだ人であればすぐに分かると思います。
しかし、二面性は理瀬以外の人も持っていて、優しかったり穏やかな人ほどそのギャップに驚かされ、油断していると度肝を抜かれます。
あの人がこんな一面を持っているの?
理瀬同様、読者も油断せずに注意深く読み進めると面白いと思います。
相手の本質を見抜けたら達成感がありますし、何もないと安心してから驚かされるのも一興です。
結末は見られるのか
これは本書の感想とは少し違いますが、ふと思ったので書きます。
本書を読み、理瀬やそれを取り巻く人たちの物語がいかに謎に包まれ、怪しくも魅力的であるのかを再確認できました。
しかし、この物語の結末は描かれるのだろうか。
そんな不安に駆られました。
面白さゆえに先が気になりますが、2010年代以降はほとんど続編が刊行されておらず、完結する目処が立っていないのが現状です。
もちろんゆっくりでいいので、物語のこの先が描かれることを切に願っています。
おわりに
これまでの幻想的な雰囲気が和らぎつつも、じわじわと毒のように蝕む危ない魅力が相変わらず素晴らしい作品でした。
読み終えた後も、ふとした瞬間に百合の強烈なにおいがしている気がして、本書の魔力からしばらく抜け出せそうにありません。
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