湊かなえ『絶唱』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
心を取り戻すために、約束を果たすために、逃げ出すために。忘れられないあの日のために。別れを受け止めるために。「死」に打ちのめされた彼女たちが秘密を抱えたまま辿りついた場所は、太平洋に浮かぶ島―。喪失と再生。これは、人生の物語。
「BOOK」データベースより
阪神淡路大震災、そして南の島・トンガを共通点にした四つの短編で構成される本書。
特に『絶唱』は湊さんの極めてパーソナルな部分が書かれていると感じました。
阪神淡路大震災から二十年というタイミングで発売されたことからも強い意志を感じ、その思いは読んでみてより一層強く感じました。
この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
楽園
大学二年生の濱野毬絵は同棲中の彼氏・裕太の前から突然姿を消し、彼女は南の島・トンガにいました。
着けばどうにかなると思って無計画に来たものの、空港ですでに困ってしまいます。
するとゲストハウスを経営する尚美から声を掛けられ、彼女のゲストハウスに泊めてもらうことにします。
尚美の案内でトンガを見て回り、同じ宿には杏子と花恋という日本人も滞在していました。
彼女たちと知り合ってからは、ゲストハウスで運転手をするトニーを含めた四人で観光をすることに。
しかし、毬絵には目的がありました。
彼女は高校生の時に裕太と交際をスタートし、最初のクリスマスにプレゼントとして楽園、南の島の絵を描いてほしいとお願いし、その絵がどこかに実在しないかと探します。
すると、家庭科の教師・松本理恵子が国際ボランティア隊の時に撮ったビデオの中で、裕太の書いた絵と同じ風景を見つけます。
トンガにあるハアパイ諸島でした。
毬絵はそれを見つけるためにトンガに来たのです。
ある日、夕方になってからゲストハウスに帰ると、毬絵の部屋には花恋が寝ていて、杏子とトニーは二人だけでどこかに行っていました。
しかも、財布もありません。
苛立つ毬絵ですが、花恋に罪はなく、不満を押し殺して二人で行動することに。
花恋は足の痛みを訴えていましたが、深夜になると右足の甲が腫れ上がり、膿が流れていました。
毬絵は急いで花恋を病院に連れて行き、ママのことを呼ぶ花恋に苛立ちます。
翌朝、起きると目の前に裕太がいました。
彼は毬絵の楽園の絵がなくなっていることから、トンガにいるのではと当たりをつけ、さらに日本人のいるゲストハウスに宿泊するはずと尚美のゲストハウスに連絡をとり、彼女の行方を知ったのでした。
そこに尚美から連絡のいった杏子も戻ってきます。
彼女は親としての責任を放棄しているにも関わらず反省の色はなく、裕太から説教されます。
それでも口答えしていると、毬絵も怒ります。五歳児の記憶力なめんな、と。
それで杏子も反省し、トニーが盗んだ財布も戻ってきて、ようやく一件落着。
裕太の案内で、毬絵は目的の場所を目指します。
楽園の絵と同じ風景を見つけると、毬絵はリュックの中から墓石を取り出します。
そこには毬絵、五歳と書かれていました。
裕太にとって彼女は雪絵という亡くなった毬絵の双子の妹ですが、本当は違います。
毬絵というのが本当の名前で、ここからは彼女の口から事情が説明されます。
五歳になる直前、毬絵は誤って料理中の加熱された油を浴びてしまい、左腕に大きな火傷を負いました。
そしてその二月後、阪神淡路大震災が起き、妹の雪絵が亡くなり、母親は生き残った毬絵を『雪絵』として扱い、毬絵が死んだことにします。
母親は短大で児童心理学の教鞭をとる完璧主義者で、油で子どもに怪我をさせるなんてあってはならないことなのです。
それ以来、毬絵も雪絵として生きるよう努力し、成人する前にここを訪れ、毬絵と別れて雪絵として生きていくことを決めるつもりでした。
しかし、気持ちが変わり、戸籍上は雪絵として生きるとしても、中身は毬絵として生きる決心をします。
しかし、裕太の前では毬絵として振る舞っていたため、二人の間では特に問題ありません。
二人は毬絵と書かれた墓石を埋めると、本当の毬絵は思います。
今いるこの場所が楽園だと思えるのは、日常生活に戻ってからだと。
約束
物語の視点は松本理恵子です。
彼女は国際ボランティア隊の一員としてトンガに赴任し、二か月が経過して慣れた頃でした。
理恵子は尚美と知り合いますが、尚美は亡き夫と約束したゲストハウスをこれから作るというところでした。
理恵子はある決意を秘めて、婚約者である柏木宗一に会いに行きます。
彼は大学のサークルで知り合った一つ上の先輩で、何でもできる人でした。
しかし、器の小さいところ、理恵子に依存する点に気が付くと、次第に宗一のことを重たく感じます。
また宗一の就活の時期に理恵子が妊娠してしまい、彼の希望で堕胎することになるも、理恵子は流産しまいます。
二人はある時、協会に行って祈ると、『あの日』のことを話します。
理恵子のアパートにやって来たのは宗一の親友・滝本でした。
彼は宗一の味方をし、彼に会いに行ってほしいといい、理恵子は仕方なく宗一の家に行きます。
その日は寝て、翌日になってから話すはずでした。
ところが阪神淡路大震災が発生。理恵子がアパートに戻ると、地震で建物は崩れ、滝本は下敷きになって死んでいました。
宗一は滝本が亡くなる前、理恵子としっかり話し合い、解放してやれと言われていました。
しかし、理恵子が会いに来てくれたあの日、やはり二人でいる方が良いと宗一は滝本との約束を破ります。
それでも現在、そのことを理恵子に伝え、ボランティアに出て生き生きとする理恵子を解放することを決めました。
理恵子はそのことについては答えず、滝本に謝り、胸を張って生きていけるようお互いに頑張ることを約束します。
ちなみに、『楽園』の章で理恵子の結婚が裕太の発言から分かりますが、相手が宗一なのかどうかは分かりません。
太陽
この物語の視点は、杏子です。
彼女は二十歳の時、無責任な男との間に花恋をもうけ、大学を中退して出産。
母親からの協力は得られず、今は夜の仕事で花恋を養っていました。
しかし、夜中に子どもを一人で放置していること、適切な育児をしていないことが問題になり、児童相談所から目をつけられていました。
そんなある時、マンションの住人の不始末で火災が発生し、杏子たちは一時的に別の場所に住まなければならなくなります。
それがきっかけとなり、杏子は今の仕事をやめ、『あの人』に会いに花恋を連れてトンガに行きます。
あの人とは、杏子が被災して避難生活をしていた時、ボランティア活動をしていたセミシというトンガから来た外国人のことです。
しかし、セミシという名前はトンガではありふれた名前であり、目的の人物を見つけることができず、杏子は花恋を毬絵に任せて、トニーと遊びに行ってしまいます。
それから『楽園』で描かれた出来事があり、ここではその後が描かれています。
杏子は会いたい人がいるとして、尚美にセミシのことを話します。
すると、セミシは尚美の夫で、すでに亡くなっていることが判明します。
杏子は、思い出の味だったセミシの作った焼きそばについて、だしの素が入っていたことを尚美から教えてもらいます。
杏子はこの出会いに感動し、これから変わることを誓い、今度、ハアタフビーチに花恋も一緒に連れて行ってほしいと尚美にお願いするのでした。
絶唱
この物語は、作家になった土居千晴が尚美に宛てた手紙という形式をとっていて、僕は湊さんご自身のことかなと思いました。
また、おそらく尚美をはじめ、この作品に出てくる人の多くはモデルがいるようなので、湊さんの経歴も交えながら書いていきますが、一人称は『千晴』とします。
千晴は二年間、青年海外協力隊の一員としてトンガに赴任し、そこで尚美と知り合います。
手紙で語られるのは、千晴が武庫川女子大学(兵庫県西宮市)に在学していた頃の話です。
前置きがあり、阪神淡路大震災が起きた時のことが書かれています。
千晴は友人の卒業論文をもう一人の友人と手伝い、三人で作業をしていましたが、その最中に地震にあいます。
テレビで悲惨な光景が報道される中、千晴たちのいる西宮市は比較的被害が少なく、動いている電車で被災地から離れます。
そんな時、大学のミュージカル同好会で知り合った泰代から電話が入り、同じく友人である静香の死が告げられます。
静香の葬儀で泰代と再会する千晴ですが、泰代は地震が起きて安全な場所に避難した千晴を非難します。
それから少しして、千晴の住むアパートに静香から手紙が届きます。
そこにはずっと親友でいようということが書かれていて、震災が起きなければと何度も思います。
それから、千晴の住むアパートに友人二人が戻ってくると。三人はいても立ってもいられなくなって大学に行き、ボランティアグループを紹介してもらいます。
そこで千晴はセミシと知り合い、同じ大学の理恵子が国際ボランティア隊という職業についたことを知ります。
その後、千晴は就職したデパートを退職し、青年海外協力隊の隊員としてトンガに赴任します。
それから帰国後、二、三の職を経て、千晴は作家になりました。
尚美は彼女の作品を読んでくれていて、五年前に、メールをくれました。
そこには、震災のことを書いてみないかということが書かれていました。その気があれば、紹介したい人がいるとも。
そして千晴は、毬絵、理恵子、杏子、花恋のモデルのモデルになる人と会うのでした。
千晴は単行本ができたら、真っ先に尚美に届けたいと思っていたのに、メールの半年後、尚美は亡くなってしまうのでした。
最後に、尚美が亡くなってから、東日本大震災という大きな災害が起き、千晴は大切な人のもとに駆け付け、傘を差しだすことができました。
小説など何の役に立つだろうと悔しさを感じることはあっても、書く手は決して止めないと、決意が書かれています。
そして、阪神淡路大震災からもうすぐ二十年です。
おわりに
湊さんの経験が色濃く反映され、どういった気持ちで物語を書いているのか、とても考えさせられる作品でした。
僕はきっと、そんな湊さんの作品からこれからも何かを受け取るのだろうと思います。
小説は決して無力なんかではなく、確かな力があります。
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