『蒲公英草紙 常野物語』あらすじとネタバレ感想!懐かしい風景と新たな時代の予感
青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから……、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。
Amazon商品ページより
常野物語第二弾となる本書。
第一弾はこちら。
第三弾『エンド・ゲーム』のあとがきで恩田さんはシリーズ作品はどれも独立しており、どこから読み始めても問題ないと公言しています。
本書では常野という不思議な力を持つ一族が登場しますが、その出自や能力など丁寧に説明されているので、本書から読んでも不自由することはありません。
ただ第一弾『光の帝国』は短編集で、本書に登場する能力のエピソードはあっさりとしか登場しません。
そのため『蒲公英草紙』→『光の帝国』と読むとちょっとパンチが弱くなってしまうので、特にこだわりがなければ出版された順番に読むことをオススメします。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
にゅう・せんちゅりい
本書は主人公である峰子が『蒲公英草紙』と呼ぶ自身の日記の内容を思い返す、という形で物語が進行します。
物語の舞台は『にゅう・せんちゅりぃ』と呼ばれる二十世紀初頭で、海外から新たな文化や技術が導入され、今までとは全く違った時代になる。
そんな予感をさせる時代でした。
出会い
東北の農村にある旧家槙村家。
峰子は槙村家の末娘・聡子の話相手として屋敷を訪れるようになります。
聡子は病弱でずっと寝たきりでしたが、峰子と話すことで外界との接点を少しずつ持つようになり、そこで見たもの聞いたものを瞬く間に吸収していきます。
不思議な家族
槙村家に春田という姓の四人家族が訪れ、しばらくの間、滞在することになります。
四人とも不思議な雰囲気を持ち、怪しいと感じる村人たちもいました。
やがて彼らは常野という一族の一員であることを語ります。
常野一族はそれぞれ不思議な能力を持ち、春田家は『しまう』ことが出来ました。
『しまう』とはどんなことでも知識として自分の中に蓄えることで、相手が人間でもしまうことができます。
その時は相手の知識だけでなく感情などもしまうことができ、それはいつまでもその人が生き続けることを意味します。
春田家の四人は決して楽ではない常野としての宿命を背負いながらもいつも飄々として、彼らのいたこの時間は峰子にとって一番大切な時間でした。
時間が流れ出す
元々聡明なことで知られていた聡子ですが、未来のことを口にするようになり、後に槙村家には常野の血が流れていることが明かされます。
それが今でも槙村家と常野一族が交流を持つ理由です。
槙村家の中でも聡子は常野の血を色濃く受け継いでいるのか、『遠目』である可能性が作中で示唆されます。
『遠目』とはいわゆる未来予知のような能力で、前作『光の帝国』にも登場します。
春田家と触れ合う中で成長し、槙村家の人間として立派になっていく聡子とそれを見守る峰子。
しかしそんな穏やかな日々がずっと続くことはなく、あの日を迎えるのでした。
感想
懐かしくて優しい物語
真っ先に思いつく感想が『懐かしい』です。
ずっと昔の話で住んでいる環境や時代背景も違うのに、その風景はどこか懐かしく、良い時代だったのだと思えるものでした。
もちろん不安がないわけではありません。
海外から新たな文化や技術が導入され、新たな時代を迎える前の未知の不安が漠然とありました。
しかし春田家、特に末っ子の光比古の無邪気な性格もあってから常に優しい時が流れ、こんな時が永遠に続けばいいのにと峰子でなくとも願ってしまうはずです。
常野一族の宿命
常野物語というサブタイトルの通り、物語の中心には常野一族である春田家があります。
前作『光の帝国』で受けた印象とは違い、本書において『しまう』ことや常野としての生き方がいかに大変であるかを思い知らされました。
『光の帝国』に登場する春田家よりも前の時代の話なので、これは時代の変化にともなうものなのかもしれませんが、能力があって羨ましいという単純な話ではありません。
それでも光比古はこの生き方に後悔していないと話し、この淡々としているのに確固たる決意こそが常野一族の最大の魅力なのかなと改めて思いました。
辛さを忘れさせる思い出
詳細はぜひ読んでほしいのですが、序盤の雰囲気からガラリと変わり、後半は決して楽しい話ではありません。
そして、『蒲公英草紙』の日々を思い返す峰子もまた辛い状況に置かれています。
しかし、峰子の中では今でもこの時のことが鮮明に残っていて、いかに聡子や春田家と過ごしたこの時間が素晴らしかったのかが分かります。
思い出だけで生きていけるなんて甘いことはありませんが、時に思い出は人を支え、生きる活力を与えてくれます。
読了後の寂しさは、峰子の視点を通して過ごしたあの日々の尊さを証明してくれました。
おわりに
哀しさがあるのに、やっぱり読み終わると懐かしさや優しさの余韻が残る。
本書は立派な常野物語でした。
前作『光の帝国』と違って長編ということで一つの物語をじっくり読むことができ、その時間はまるで頬を撫でる風のような爽やかさで溢れていました。
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