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『きみの友だち』あらすじとネタバレ感想!本当の友だちってなに?が分かる一冊

わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる―。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない…。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。

【「BOOK」データベースより】

友だちってなに?

これ、大人になってからもけっこう悩むんですよね。

人によってそれぞれ考え方があると思いますが、本書はその問いについて一つの答えを提示してくれます。

ある人物が、様々な人を『きみ』と呼んでその人のことを紹介し、やがてそれらの話が一つに収束するというもので、久しぶりに自然と涙が溢れるほどの感動を味わいました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

小学五年生の時、恵美は交通事故に遭い、松葉杖なしでは歩けない体になってしまいます。

恵美は事故を友だちのせいにし、友だちが誰一人としていなくなってしまいました。

そんな中、恵美が唯一話すようになったのが、病気がちな由香で、周囲からすれば傷の舐め合いのように見えます。

しかし、二人は誰にも築けないような固い友情で結ばれ、そのことが恵美や弟のブンちゃん、その友人たちに影響を与えていきます。

本書は謎の人物が語り部となり、恵美やブンちゃん、二人に関係する人たちを『きみ』と呼び、それぞれの視点から『友だち』とは何かを語ってくれます。

そして、視点も時系列もバラバラな物語は一気に収束し、最後に語り部の正体も明かされます。

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感想

様々なきみが登場する

本書は事故にあって松葉杖なしでは歩けなくなってしまった少女・恵美と、その弟のブンちゃんを中心として物語は進行します。

この物語には語り部となる人物がいて、最後になるまで明かされません。

その人物は恵美をはじめ、彼女やブンちゃんの友人などを『きみ』と称し、それぞれの視点から『友達とは何か』について語ってくれます。

時間軸が前後するので混乱するかも知れませんが、最後にはしっかり理解できるよう収束しますのでご安心ください。

読者は様々な『きみ』に自分を重ね、自分にとって友達とは何かをじっくり考えることができます。

この本は松葉杖のように答えが出るまで寄り添ってくれる存在で、優しい物語だなと最初に思いました。

友だちとは何か

恵美は事故をきっかけに友達を失い、体が弱くて学校を休みがちの由香と自然とつるむようになります。

由香はお人よしで、鈍感で人に気を遣ってばかり。

恵美は自分とあまりに違う性格の由香にきつく当たりますが、やがてその優しさに触れ、彼女こそが本当の友だちなのだと気が付きます。

松葉杖をついて歩く自分はすぐみんなに追い越されてしまうけれど、由香となら並んで同じ速さで歩くことができると。

そう思ってからも、由香に対する恵美の態度はあまり変わりません。

傍から見たら不機嫌そのものです。

しかし、お互いに通じ合っているものがあり、わざわざ友だちだと言う必要がないほどの絆がそこにはありました。

他のクラスメイトからすれば二人は閉鎖的で、可哀そうに見えます。

それでも何人かはあれこそが本当の友だちで、本当に満たされているのだと気が付きます。

価値観によって友だちの定義は変わりますが、友だちとは愛想をふるまって側にいてもらうものではなく、お互いに側にいてほしい人なんじゃないかと思いました。

相手の幸せを願える、その相手こそが友だちです。

だから友だちなんて数人で十分だし、その数人と色あせない思い出が作ることが出来れば、人生それだけできっと幸せです。

みんなから抜け出す

恵美は作中、悪い意味で『みんな』という言葉を何度も使います。

個人個人は悪くないけれど、それが『みんな』になると一つの意見にまとめられ、個人の感情に関係なく、それは時として悪意に変わってしまいます。

社会で生きていく以上、特に学生という閉鎖社会の中で人の意見に合わせていくことも大切ですが、それは自分の意思を持った上でのことだと感じました。

他人は関係なく、自分はどうしたいのか。

今、学生の方には特に本書を読んでほしいと思います。

そして、自分の胸に手を当て、しっかり自分のしたいことを見つけてください。

そうすれば外野の言葉に惑わされずに、大切なものをなくすことなく大切にできると思います。

繰り返しのフレーズ

本書を読めば分かると思いますが、それぞれの物語において繰り返し登場するフレーズがいくつもあります。

堀田ちゃんのおまじないだったり、ハナちゃんの目のマッサージだったり、佐藤のメトロノームの音だったり。

形は何であれ、誰にでもこういった習慣や癖ってあるよなと、描写の細かさに感心してしまいました。

そして、こういった習慣に紐づいて記憶って残るよなと、自分の学生時代を思い出したりしました。

取り上げる必要はありませんでしたが、もし読んでいて気にしていなかったという人は、ぜひこの点も注意しながら読んでみてください。

結末の評価

あとがきにて、重松さんは本書の結末に否定的な意見もあるかもしれないとコメントしています。

しかし、僕はあえてとても素晴らしい物語の閉じ方だったと宣言させていただきます。

正直、オチについては途中から何となく予想はついていたので、そこまで驚きはありませんでした。

僕が素晴らしいと感じたのは、結末に『きみの友だち』がはっきりと描かれていたことです。

仲が良い人もいればほとんど関係のない人もいるけれど、これが友だちなんだと物語を読んできた僕は確信しました。

重松さんがおっしゃるように、これこそグランドフィナーレで、作品に対する深い愛情がこれでもかと詰められていました。

おわりに

本書を読み終えて、ちゃんと自分には『友だち』と呼べる人がいることに気が付き、ホッとすると同時にその存在に改めて感謝しました。

まだ見つかっていないと思う人は、ぜひ本書を読んでもう一度友だちを思い浮かべてみてください。

生涯付き合ってくれる友だちなんてごく一部だけですが、かけがえのない存在です。