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『未必のマクベス』あらすじとネタバレ感想!あらゆるジャンルを内包した究極エンタメ

harutoautumn
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IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる―「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。伝説のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から22年―運命と犯罪と恋についての長篇第2作。

「BOOK」データベースより

早瀬耕さんにとって二作目となる本書。

1992年に刊行されたデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から実に二十二年ぶりということで、このことから早瀬さんがこれまで小説作家として第一線で活躍してきたわけではないことが分かります。

それにも関わらず、本書は六〇〇ページという圧倒的ボリュームを感じさせないほど面白くユーモアに溢れ、忘れられない傑作に出会えたと早々に確信できました。

読書に慣れた人でも本書の分厚さに躊躇し、通常の文庫サイズのブックカバーには収まらないハヤカワ文庫JAのサイズに多少のストレスを感じるかもしれません。

しかし、そこを一旦置いておいて、ぜひ最初の数ページを読んでほしい。

それくらい自信を持ってオススメできる一冊です。

以下は本書に関する早瀬さんへのインタビューです。

★編集Mの文庫スペシャリティ★『未必のマクベス』早瀬耕さん

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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タイトルの意味

内容に入る前に、タイトルの意味について。

ミステリ好きであればタイトルにある『未必』という言葉から『未必の故意』を連想するかもしれません。

これが意味するところは、簡単にいうとそうなりたいとは思っていないけれど、そうなっても仕方ないという心理状態のことです。

そして『マクベス』について、これはシェイクスピアの四大悲劇のうちの一つで、内容を知らなくとも名前なら聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

この二つのワードを組み合わせたタイトルの意味。

本書の解説で北上次郎さんが書いていたことがしっくりくる表現で、『マクベスになりたいわけではないが、なってもかまわない』という意味にとれます。

マクベスについては作品中で丁寧に説明がされているので、予習する必要はありません。

本書とマクベスという悲劇がどのように重なるのか。

ぜひ本書を読んで確かめてみてください。

あらすじ

予言

JプロトコルというIT企業に勤める中井優一は、高校時代の同級生で今は同僚の伴浩輔と仕事でバンコクに赴き、成功を収めます。

上層部はそれで機嫌をよくし、二人にわずかながら余暇を与え、中井と伴はそれを利用してマカオでちょっとした賭け事を楽しみます。

それが思わぬ勝利に終わり、数人の娼婦が寄ってきます。

二人はそれを断りますが、ソフィという娼婦は中井に『王になって旅に出なくてはならない』と予言めいた言葉を放ちます。

これが、物語の始まりとなります。

転籍

翌日、中井の恋人で同じ会社の総務部にいる田嶋由記子から電話が入ります。

それは、子会社であるJプロトコル香港への中井の人事異動に関する報告でした。

香港での事業はすでに失敗していて、Jプロトコル香港はもはやペーパーカンパニーも同然。

要は邪魔者扱いの左遷であり、今回の余暇もこの人事異動を断らせないための策略で、今回の人事異動には伴も含まれていました。

由記子は今ならまだ間に合うと説得しますが、中井はその人事を甘んじて受けます。

一方で、中井はカイザー・リーと名乗る人物から、HKプロトコルという企業の未公開株を購入しないかと持ち掛けられます。

明らかな作為が感じられますが、中井はこの未公開株を購入します。

日本に帰国すると由記子に言われた通りの人事異動を言い渡され、中井はJプロトコル香港の社長、伴は副社長となって香港に赴任します。

巨大な陰謀

中井たちは次第に自分たちの置かれている状況を理解します。

Jプロトコル香港はHKプロトコルに対してICチップの暗号化方式に関する特許料を支払っていますが、相手は実体のない幽霊会社です。

そのお金は巡り巡って親会社である東亜印刷に流れ、裏金となっていました。

そこで中井と伴はHKプロトコルのオフィスがあるビルの掃除係を買収し、オフィス内を調べます。

そこで中井は積み木カレンダーを見つけますが、そこには違和感がありました。

調べるとメモ用紙とUSBメモリが見つかり、中井がUSBメモリを調べると、手紙が見つかります。

相手は、伴と同じく高校の同級生の鍋島冬香でした。

そこには中井の知らない冬香やJプロトコル、その周辺のことが書かれていて、そこでようやく自分が置かれている状況の危うさに気が付きます。

しかしこれはまだまだ序章に過ぎず、ここから中井の『マクベス』としての人生が幕を開けるのでした。

感想

様々なジャンルを内包した究極のエンタメ

解説で北上次郎さんが言及しているように、本書をジャンル分けするのは非常に困難だと思います。

中井を取り巻く陰謀を暴くための過程はミステリやサスペンスだし、中井と由記子と冬香に焦点を当てれば立派な恋愛小説だし、これらを総合的に考えるとどれも主役級であり、究極のエンタメ小説とカテゴリーすることもできます。

正直、変にカテゴリーで括って特定の層にしか読まれないのはもったいないので、どのジャンルも内包しているので皆さん読んでください、というのが本音です。

それくらい自信を持ってオススメできるし、映像化してくれないかと心から思いました。

内容的にはドラマか映画ですが、登場人物の掛け合いを現実ですると興ざめしそうな気もするので、そういう意味ではアニメもいいかもしれません。

六〇〇ページ以上の厚みに恐れをなしてずっと本棚に放置していましたが、そのことが悔やまれるくらいに面白く、数年内にはもう一度読むことをもう決めています。

異国情緒に溢れる

本書において日本が舞台になることはほとんどなく、大体が香港など海外です。

主に食事などで様々な場所やお店に行くせいか、至るところに異国情緒が溢れていて、まるで自分がそこに住んでいるかのような錯覚に陥りました。

料理やお酒がとにかく美味しそうで、本書を読むとワンタン麺とアフリカン・チキンが食べたくなります。

中井たちが食べているもの、飲んでいるものを本書のお供にするのも一つ楽しいかもしれません。

あと、作中ではしばしば中井の学生時代を振り返るシーンが挿入されますが、日本を離れているせいかよりノスタルジーを感じられるように出来ています。

そのせいか冬香がまるで初恋の相手のような気がして、回想の度に懐かしい気持ちになりました。

細部は気にしないこと

僕としては、文句のつけようがないほど最高の作品です。

一方で、本書の展開が一部では否定的な評価を受けていて、その意見も確かに頷けます。

マクベスと本書の物語を重ねる上で、どうしてもご都合主義は発生するし、ややリアリティに欠けてしまうのも無理はありません。

フィクションと割り切りが難しい人にとっては、もしかしたら本書は受け入れられないかもしれません。

しかし、僕は指摘されている点も含めて本書の雰囲気を作っている要素だと考えていて、それがあるからこそエンタメとして成立しているのだと思います。

これくらい好き放題やれるのが創作の良いところであり、ぜひ細かいところは一度忘れて、長所を存分に味わってください。

おわりに

2021年5月に読みましたが、早々に今年読んだ小説の中でもベスト10には入ることを確信しています。

それくらいあらゆるエンタメ性が詰め込まれ、強烈なインパクトを与えてくれました。

僕はマクベスをちゃんとは知らないので、本書とどれくらいリンクしているのか判断することはできません。

次に読むときは、自身でマクベスを見てからかなと思います。

そうすることで、早川さんの意図をより正確に汲み取ることができ、本書の新たな魅力を再発見することが出来る気がします。

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