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『旅屋おかえり』あらすじとネタバレ感想!誰かの思いをのせて旅する旅屋の物語

あなたの旅、代行します!売れない崖っぷちアラサータレント“おかえり”こと丘えりか。スポンサーの名前を間違えて連呼したことが原因でテレビの旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、人の代わりに旅をする仕事だった―。満開の桜を求めて秋田県角館へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。おかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変えていく。感涙必至の“旅”物語。

「BOOK」データベースより

『旅屋おかえり』。

このタイトルは一体どういう意味なんだろうと、読む前にずっと考えていました。

そして読了後、なんて素敵なタイトルなんだろうと思わず何度も表紙をじっくり見てしまいました。

原田マハさんは数多くのエンタメ小説を手掛けてきましたが、本書はその中でも特に自然な喜怒哀楽に満ちていて、ぜひ手にとってほしい一冊です。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

引退の危機

売れないタレント『おかえり』こと丘えりかは、スポンサーの名前を間違えてしまったため唯一のレギュラーだった旅番組を打ち切りにされてしまい、事務所の社長・鉄壁や経理の澄川のんの共々路頭に迷うことになります。

もう三十歳を過ぎたえりかに仕事が入って来ることはなく、しかし両親に宣言した手前、成功せずに故郷に帰ることはできません。

もはや仕事の選り好みをしていられないと覚悟を決めた時、えりかに転機が訪れます。

旅屋の誕生

それはとある女性からの『旅代行』の依頼でした。

依頼人の女性は筋萎縮性側索硬化症(ALS)によって筋肉がやせ、自分で旅に出ることすらできませんでした。

女性はえりかのファンで、かつて両親と一緒に行くも見られなかった桜を自分に代わって見てきてほしいとえりかに依頼します。

えりかは女性の思いを連れ、たった一人でビデオを回して、かつての旅番組のように旅先での美しい風景、美味しい料理、人との触れ合いを記録します。

この依頼がきっかけとなり、えりかは『旅屋』というビジネスを始め、理由があって旅が出来ない人の代わりに全国どこにでも行くことを決心するのでした。

言えない過去

なんとか旅屋ビジネスが軌道に乗る中、かつてスポンサーだった企業の社長から旅番組復活の話を持ちかけられます。

もちろんタダでスポンサーになってくれるわけはなく、条件として社長の代わりに彼女の姪に会いに愛媛に行くことを提示されます。

えりかは意気込んでその条件を飲みますが、鉄壁は明らかに乗り気ではなく、翌日から姿をくらましてしまいます。

えりかは誰から見送られることもなく愛媛に旅立ちますが、そこには社長の明かされなかった過去が秘められていたのでした。

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感想

旅への愛で溢れている

感想は色々ありますが、真っ先に感じたのは本書からあふれ出る旅への愛です。

原田さん自身旅が好きだと言っていて、その本心からくる知識や言葉がえりかに乗り移り、嘘偽りのない旅への愛が描けたのだと思います。

その土地にどんな名所があって、どんな美味しいものがあり、どんな歴史があるのか。

徹底的なリサーチはもちろんですが、その土地の人と一期一会の出会いもあり、旅は想像以上の喜びと感動で溢れています。

そして、帰ると『おかえりなさい』と出迎えてくれる人や場所がある。

旅は『いってらっしゃい』から始まり、『おかえりなさい』で終わるのだと本書の中で何度も繰り返され、それがタイトルに繋がります。

自分が行くのは楽しいですが、誰かを見送って出迎えることも楽しいのだと本書を読んで気付きました。

笑いと感動のバランスが良い

エンタメというと喜怒哀楽のバランスが難しく、どこかに偏りすぎると一気に陳腐なものになってしまうので、僕はどちらかというと積極的に読むジャンルではありませんでした。

しかし、本書はその点においてバランスが絶妙で、様々な感情が無理やりではなく自然と訪れます。

特に様々な人が口にする『いってらっしゃい』、『おかえりなさい』の言葉。

この言葉が出てくると、涙が溢れ出るのを堪えられませんでした。

原田マハのエンタメ小説といえばこれ!

原田さんのエンタメ小説を何作も読み、ある一定上は面白いのですが、絶賛とまではいかないと感じるものが多くありました。

そんな中で、本書は文句なしで面白く、原田さんのエンタメ小説といえば真っ先に本書をオススメします。

旅行が好きな人にはもちろんですが、あまり興味がなかったり趣味にしたいけれどよく分からないという人にもぜひ読んでほしいと思います。

えりかに旅の代行をお願いしたつもりで読むと、彼女の五感を通じて伝わってくる旅の醍醐味をより身近に感じられて、次は自分が旅に出ようと思えるはずです。

おわりに

あまり現実的ではないかもしれませんが、夢がいっぱい詰まっている旅屋。

原田さんらしいアイディアと愛情が詰まった作品で、僕は胸を張って大好きな作品だと宣言します。