『眩暈』あらすじとネタバレ感想!常識を覆す大型ミステリ
切断された男女が合成され、両性具有者となって甦る。窓の外には荒涼たる世界の終焉の光景が広がっているばかりだ。『占星術殺人事件』を愛読する青年が書き残した戦慄の日記が示すものは何か。醜悪な現実世界に奇想と驚天動地のトリックの矢を放つ。ミステリーの新たな飛翔を決定づけた傑作。
Amazon内容紹介より
御手洗潔シリーズ第八弾となる本書。
前の話はこちら。

島田荘子さんの本シリーズは本当に力作揃いで、僕も気力が十分でないと手に取れず、すっかりご無沙汰になっていました。
そんな中で、ここにきてもミステリの可能性を見せつけられた感覚があり、規格外の大型ミステリが楽しめました。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
愛読者
ぼくという人物の日記から始まります。
彼は字を覚えたての頃から始まるため、すべてひらがたと幼稚さが見えます。
一方で成長するにつれて漢字が混じり、思考もぐっと大人になります。
そうすると読者からするとお馴染みの『占星術殺人事件』が登場し、彼が作品の愛読者であることが分かりました。
やがて環境汚染や人間を奇形にする可能性を持つ薬剤などに興味を持ち始め、ぼくがどのように変化しているのかが詳細に描かれます。
育ち
ぼくは鎌倉で生まれ育ち、旭屋架十郎という映画スターの一人息子であることが分かります。
彼が忙しくあちこち飛び回る間、香織という母親が彼を世話してくれています。
香織は毎日来てくれるという記載から、彼女と旭屋に婚姻関係がないことが分かります。
またぼくが二十一歳で、香織もまた若いことからも、同じくらいの年齢の女性に世話されていることにやや違和感が立ち上がります。
しかし、ぼくにとって過不足のない人生で、ここまでは幸福な少年の物語という印象でした。
突然の事件
ある日、ぼくの何気ない一言が香織の神経に触ったのか、彼女は突然激昂します。
そこに知り合いの加鳥がやってきて、彼女は彼に襲い掛かり二人はもみ合いになりました。
その時、今度は顔を隠した大きな男性が現れ、ピストルを一堂に向けます。
大混乱の末、香織と加鳥は死亡し、乱入してきた男性は逃走。
ぼくは助けを求めようとマンションの外に飛び出しますが、そこはぼくの知らない鎌倉でした。
感想
常識を疑うシーン
本書を読んで感じたのは、どこまでも常識を揺るがせるということです。
恥ずかしい話ですが、僕はミステリやホラーをかじっているため、常識を常に疑い、フラットな視点から物事を考えられる人間だと思っていました。
しかし、本書はそんな自負を軽く吹き飛ばすほど理解不能なシーンの連続で、開始早々に謎解きしてやろうという意気込みを折られてしまいました。
強盗らしき男性が乱入してきたシーンの意味も分からなければ、鎌倉が変貌していたことも謎だし、その後のえげつないシーンも衝撃的でした。
こんなに人間を揺さぶられるなんて、改めてミステリの可能性を見せつけられました。
異様なほどの執念
本書は七〇〇ページを超える大作なわけですが、すごいのはそれだけではありません。
中盤になると探偵と助手である御手洗と石岡が登場して謎が次第に紐解かれていきますが、最初御手洗から説明された時はわけが分かりませんでした。
そんなことあり得ない、という否定ではなく、本当に意味が分からなくて思考が停止したイメージです。
今回ほど石岡に感情移入した時はありません。
御手洗はそんなこちらの戸惑いを無視して説明を続け、やがて思考が追いついてくると、そのスケールの大きさに驚かされます。
そんなことが可能なのか。
そんなことを書こうと思うのか。
異様ともいえる執念が感じられ、読者の体力気力をゴリゴリ削ってきます。
こんなに体力の必要な読者は本当に久しぶりで、通勤中に読むものではないと反省しました。
多少の賛否は分かれる
ミステリとしての構成やタネは一級品で、本シリーズを追ってきている人であれば大満足ではないでしょうか。
一方で文章には多少の賛否が分かれると思います。
かなりの情報量が詰め込まれ、御手洗の話は意図が掴めず、ネタが明かされるまでストレスがけっこうかかります。
本シリーズの雰囲気を作り出すためにはこの文章量が必要なのでしょうが、同じ内容だけを書くのであればかなり省略できそうなくらい、情報が圧縮されています。
ネットやSNSが発達した現代においてはリーダービリティが高くないと読まれにくい傾向にあるため、現代では情勢的に登場しない、この時代だからこそ楽しめる一冊ともいえます。
おわりに
見事にやられた一冊でした。
ずっと本棚に入っていたため、酔っていた勢いで読み始めて、思わぬ衝撃を何発も食らってしまいました。
次作はしばらく読む勇気が出なそうですが、大満足です。
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