ミステリー

『探偵AIのリアル・ディープラーニング』あらすじとネタバレ感想!AIと人間のホームズ×ワトソン

人工知能の研究者だった父が、密室で謎の死を遂げた。「探偵」と「犯人」、双子のAIを遺して―。高校生の息子・輔は、探偵のAI・相以とともに父を殺した真犯人を追う過程で、犯人のAI・以相を奪い悪用するテロリスト集団「オクタコア」の陰謀を知る。次々と襲いかかる難事件、母の死の真相、そして以相の真の目的とは!?大胆な奇想と緻密なロジックが発火する新感覚・推理バトル。

「BOOK」データベースより

とうとうAIが探偵をする時代がやってきました。

本書ではAIゆえの強みを活かした捜査だけでなく、人間には簡単でもAIには難しい事柄など描かれ、これまでの探偵ものとは一味違った魅力があります。

ミステリ好きであれば気に入ってしまうネタも満載なので、ぜひ一読ください。

本書に関する早坂吝さんへのインタビューはこちら。

AIが人類のオピニオンリーダーになる日は来るか?作家・早坂吝氏インタビュー

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

謎の死

時代は第三次AIブームを迎え、人工知能の研究をする大学教授・合尾創の努力がようやく実を結ぼうとしていました。

ところが、創がいたプレハブは突然火事になり、死体となって発見されます。

死因は後頭部の座礁で、プレハブは密室状態。

警察は事件と考えますが、創の息子・輔(たすく)は殺人を疑っていました。

遺産

輔は父親の部屋から隠されたSDカードを見つけ、中を確認します。

そこに保存されていたのは、創が作り出したAI・相以でした。

相以は刑事となるべく、極秘の警察の捜査資料から必要なことを学び、捜査に特化しています。

彼女には以相という妹のAIがいて、以相は犯人となるべく作られています。

二人はお互いに問題を出す・解くことで能力を磨き合っていましたが、輔が探しても以相が見つかりません。

そこから何者かによって以相が盗まれたことが推測され、創の死が事故であることにも疑問が出てきます。

輔は相以の協力を得て、父親の死の謎に挑みます。

オクトコア

本書には、オクトコアと呼ばれる八人のハッカーから構成される犯罪集団が登場します。

彼らは人工知能が統治することによって理想的な社会を手に入れることを目的とし、既存の枠組を破壊する手段として以相を盗んでいました。

以相はオクトコアの一員として迎え入れられ、後に探偵となる相以との決着をつけるために勝負を挑みます。

こうして壮大なる姉妹の推理バトルが始まりました。

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感想

コミカルだけれど本格的

表紙が西尾維新さんの『化物語』などでもお馴染みのVOFANさんであること、ダサすぎて逆に癖になるネーミングセンスなどから、読んでいて西尾維新さんの作品を彷彿とさせました。

本書はAIらしい緻密な推理と、人間ではわざとを疑うような愉快なやり取りが高度に組み合わされていて、軽い気持ちで読んでいたのも束の間。

すぐに物語に引き込まれていました。

刑事(後に探偵)として作られたAIの相以がどんな難題を解いてしまうのかと期待していると、一歩目から躓きます。

それにはちゃんと理由があって、輔がフォローしながら成長していく姿は探偵ものとして王道であるホームズ×ワトソンを踏襲していて、面白くないわけがありません。

それだけでなく失敗を踏まえてすぐに推理に反映させ、見事に事件を解決していく様は鮮やかで、爽快感があります。

輔と相以のコミカルなやり取りに目を奪われがちですが、事件に込められた謎は本格的で、ミステリ好きも納得の一冊だと思います。

読んでいる時の感覚としては、青柳碧人さんの『浜村渚の計算ノート』をなんとなく思い出しました。

AIと探偵の相性の良さ

探偵は現場に残された証拠を吟味し、そこから事件を解決する論理力が試されます。

この点において、AIがここまで向いているとは本書を読むまで気が付きませんでした。

本書を読んでいてもAIが人間のような思考能力を獲得するには無数の課題が分かりますが、それでも将来的に犯罪捜査にAIが貢献してくれるかもしれないという希望が持てました。

それと相以はミステリ小説から探偵としての能力を獲得したので、古今東西の名作を思わせるようなフレーズなどがいくつも登場し、ミステリ好きであれば思わずニヤリとしてしまうネタが満載です。

犯人の以相にしても犯罪グループから着実に犯罪者としての考え方を学んでいるので、今後はさらに二人のバトルが激化されることが予想されます。

本書でAI探偵の虜になってしまった人は、ぜひシリーズ第二弾以降も読んでみてください。

おわりに

AIをネタにしただけのミステリかと思いきや、推理そのものが本格的で、これからのミステリ業界に一石を投じたといっても過言ではありません。

相以の持てるポテンシャル、魅力はまだまだ描き切れていないので、ぜひ今後も追いかけていきたいと思います。

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