『護られなかった者たちへ』あらすじとネタバレ感想!救いの手を差し伸べない社会福祉の闇と復讐
仙台市の福祉保健事務所課長・三雲忠勝が、手足や口の自由を奪われた状態の餓死死体で発見された。三雲は公私ともに人格者として知られ怨恨が理由とは考えにくい。一方、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。三雲の死体発見から遡ること数日、一人の模範囚が出所していた。男は過去に起きたある出来事の関係者を追っている。男の目的は何か?なぜ、三雲はこんな無残な殺され方をしたのか?罪と罰、正義が交錯した先に導き出されるのは、切なすぎる真実―。
「BOOK」データベースより
社会福祉、もっといえば生活保護がテーマになっている本書。
映画化もされました。
中山さんが得意とするどんでん返しはそこそこですが、犯行の動機に隠された社会福祉の光と闇は見応えがあり、感情に訴えかけてくるものがありました。
以下は本書に関する中山さんへのインタビューです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
善人、人格者の死
仙台市青葉区の福祉保健事務所で働く三雲忠勝は突然失踪し、その後死体となって発見されます。
死因は餓死でした。
捜査を担当する刑事の笘篠と蓮田は三雲に恨みを持つ人物を探しますが、三雲は絵に描いたような善人で、誰からも悪い噂は聞こえてきませんでした。
何の手がかりも見つけられないまま、今度は県議会議員の城之内猛留が死体となって発見されます。
死因は三雲と同様、餓死でした。
城之内もまた人格者として周囲から信頼を集め、とても殺されるほど恨みを買う人物には見えませんでした。
笘篠たちは二人の被害者の共通点を必死で探し、ついに見つけます。
それは、かつて二人が塩釜福祉保健事務所で働いていたということでした。
生活保護の受給を断られた人間、もしくは近しい人間の犯行ではないか。
怨恨の線が見えてきて、捜査は一気に進展します。
生活保護の裏
笘篠たちは捜査の中で、生活保護の実態を知ります。
生活保護を受給する人間は近年急増していますが、財源には限りがあります。
そうすると、福祉保健事務所は生活保護を求める人を厳しく追及し、なるべく生活保護を受給させない方向に動くことになります。
それは推論や理想論まみれで、とても現実的な話ではありません。
どうしようもなくなった人を助けるための制度にもかかわらず、護られるべき人を蹴落としている生活保護の闇。
事件の裏に隠された動機には笘篠たちだけでなく、読者もまた感情移入してしまい、感情的に楽しめるミステリまたはサスペンスになっています。
決意
事件の裏で描かれるのは、利根勝久という男の人生です。
利根は人に暴力をふるい、放火したことで逮捕され、前科があった関係もあって出所まで八年もかかりました。
罪を償ったとはいえ、世間は利根に冷たい目を向け、誰も彼を真っ当な人間として見ようとしません。
しかし、利根の胸の中に彼らへの恨みはなく、あるのは揺るがない決意でした。
何のために利根は模範囚になってまで刑期を早めたのか。
そこには、誰にも言えない秘密が隠されていました。
感想
理想と現実
生活保護と聞いて、柚月裕子さんの『パレートの誤算』を思い出しました。
すでに読んでいたおかげで生活保護の実態をある程度知っていたので、本書をスラスラ読むことが出来ました。
生活保護というと、受給している人が楽しているという意見も聞こえてきますが、それはあくまでごく一部で、大半の人はどうしようもなくて最後の命綱としてこの制度を利用しています。
しかし、本書では財源不足から生活保護を必要とする人すら追い返す現実が描かれ、生活保護にまつわる理想と現実が浮き彫りになっています。
これを犯行の動機に持ってくることで殺人が正当化されるような錯覚を覚え、それが本書の面白さを生み出しています。
少し順当過ぎる
本書の結末には一応どんでん返しが用意されていますが、正直、ご都合主義感は否めません。
その分、心情に訴えかけるストーリーになっていますが、それでも展開が少し順当過ぎるという気がしてなりませんでした。
ここまで意外性がないと、ちょっと物足りないというか。
多分『パレートの誤算』を読んでいたせいで、生活保護と殺人事件の組み合わせにちょっと飽きがきていたのかもしれません。
個人的には映画がかなり面白そうなキャストなので、それを見てから本書の評価を決めても遅くない気がします。
おわりに
中山七里さんはあらゆるテーマをエンタメに落とし込むのが本当に上手いと改めて思わされた一冊でした。
小説を読んでおいて何ですが、映画がとにかく面白そうなので、そちらも見て本書の評価を決められたらと思います。
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