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『メインテーマは殺人』あらすじとネタバレ感想!徹底的にフェアで読み応えのあるミステリ

harutoautumn
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自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作!

「BOOK」データベースより

『カササギ殺人事件』で『このミステリーがすごい!』、『本屋大賞〈翻訳小説部門〉』など史上初の七冠を達成し、日本で一躍有名になったアンソニー・ホロヴィッツさんの作品です。

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本書はホロヴィッツさん自身が主人公〈わたし〉として登場し、元刑事・ホーソーンの活躍を小説として執筆し、それを読者が読むという形をとっています。

『カササギ殺人事件』で期待値がかなり高まってしまい読むまで心配していましたが、そんなものは杞憂でした。

ミステリとしてルールを徹底的に守って公平性を保ち、最後に読者をあっと驚かせてくれる。

古典ミステリを踏襲しつつも、今までになかった価値を生み出し、ミステリ好きであれば読まない手はありません。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心的なネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

依頼

児童向け作家のアンソニー・ホロヴィッツはロンドン警視庁の元刑事で今は顧問のダニエル・ホーソーンからとある依頼をされます。

それは『ホーソーンの本を書いてほしい』というものでした。

顧問であるホーソーンのもとには面白い事件が回ってくるため、メインテーマが殺人の本を書いてほしいのだといいます。

これまで架空の作品を手掛けてきたホロヴィッツは一度この件を断りました。

しかしその後の講演会で、ホロヴィッツは聴講者からもっと現実の世界に目を向けてみてはどうかと指摘を受け、ホーソーンの提案を受けることにしたのでした。

事件

ホーソーンのもとに回ってきた事件の被害者は、ダイアナ・クーパーという六十代の女性でした。

殺害方法などに不審な点はありませんが、彼女は殺害される数時間前に自分の葬儀の手配をしていたのでした。

自分の葬儀の手配と殺害。

この二つが同時に起こることなどまずないため、この二つには何ならかの関連があると捜査が始まるのでした。

過去

事件を追う中で、ダイアナは十年前、視力が悪いにも関わらず眼鏡をかけずに車を運転し、二人の子どもを轢き、一度はその場から逃走したことが明らかになります。

被害者の子どもは双子で、一人は死亡、一人は一命をとりとめましたが、脳に重度の損傷を負いました。

この事故について裁判が行われ、裁判所は眼鏡を着用していなかったことが法律違反に当たらないというダイアナ側の主張を認めました。

〈わたし〉は被害者の遺族、もしくは関係者による犯行だと考えますが、事件はさらに複雑化していきます。

第二の事件

ダイアナの葬儀が行われますが、何者かによる質の悪い悪戯が起こり、その後、ダイアナの息子・ダミアンが切り刻まれて殺害されているのが発見されます。

ホーソーンと〈わたし〉はさらに捜査を続け、絡み合った思惑を丁寧にほどき、事実を一つずつ突き止めていきます。

その結果、事件の真相が浮かび上がってきました。

感想

徹底されたフェアプレイ

こういった一人称のミステリの場合、多くの方が叙述トリック(不都合な部分をあえて描写せず、読者に事実を誤認させるテクニック)を警戒すると思います。

しかし、作中序盤にてホーソーンは〈わたし〉にダメ出しをして、事実に即して書くよう注意します。

これによって必要な情報は全て記載され、探偵役であるホーソーンと読者は対等な立場で推理をすることができます。

もちろん、情報が揃ったからといって事件を解決できるわけではありません。

〈わたし〉が重要と思っていない部分に思いがけないヒントが落ちている可能性もあるので、読者はそれを拾い集める必要があります。

文章量は多いですが、作中で〈わたし〉が語るように事件とは無関係な描写もそれなりに多いので、事件の真相自体は意外とシンプルで、そこまで頭がこんがらがることもないと思います。

挑戦し甲斐のあるちょうど良い難易度なので、自分で推理したいという方にはもってこいです。

もちろん、一読者として事件の行く末を見守るだけでも楽しめます。

古典ミステリの踏襲

本書にはミステリ好きであれば心をくすぐられるであろう設定がいくつも散りばめられていて、その一つにシャーロック・ホームズがあります。

ホロヴィッツさんはコナン・ドイル財団公式認定のホームズ作品をすでに発表していて、本書の解説では『現代における公式のワトソン』と称されています。

そんなホロヴィッツさんが、作中ではホームズ的な探偵であるホーソーンと行動を共にしています。

この構図だけでもうワクワクが止まりません。

逆に普段、ミステリ作品をあまり読まない人であれば、こういった仕掛けはよく意味が分からず、消化不良になってしまうかもしれません。

その時はぜひ、本書からホームズ作品など古くから愛されるミステリ作品に挑戦していただければと思います。

これ一冊だけで完結しないところが、本書の魅力の一つです。

冗長な部分もあり

これまで魅力をいくつも挙げてきましたが、不満な点もちゃんと挙げておこうと思います。

僕が唯一、不満に感じたのは事件に関係ない部分での冗長なやりとりです。

そういったやりとり自体に魅力があることは確かですが、それでも読んでいてしんどくなくことが何度かありました。

ただし、これは作中で〈わたし〉が断っているように、事実に即して書くためにあえて記述しているものなので、こういうものとして受け入れるとそこまでは不満になりませんでした。

おわりに

『カササギ殺人事件』で得た評価で終わる一発屋ではないことを証明した作品だと思います。

特に事実を明確に記載し、曖昧な点を残さない点に非常に魅力を感じました。

潔さとミステリの魅力がうまく共存し、続編にも期待が持てる素晴らしい作品でした。

次の話はこちら。

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