ミステリー

『カササギ殺人事件』あらすじとネタバレ感想!クリスティへの完璧なるオマージュは伊達じゃない

1955年7月、サマセット州にあるパイ屋敷の家政婦の葬儀が、しめやかに執りおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは…。その死は、小さな村の人間関係に少しずつひびを入れていく。余命わずかな名探偵アティカス・ピュントの推理は―。アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ・ミステリ!

「BOOK」データベースより

本書に関して、本屋で見かけたりタイトルを耳にしたという人は多いのではないでしょうか。

2018年度ミステリ4冠を成し遂げ、アガサ・クリスティへの完璧なオマージュ作品として特にミステリファンの間で話題になりました。

構想に十五年以上、執筆にも五年近くかかった力作で、それも納得の発想と構想、技術が詰め込まれています。

他の作品では味わうことの出来ない唯一無二の魅力があるので、ミステリ好きであれば読んで損はない一作だと思います。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

タイトルの意味

本書の内容に入る前に、タイトルの意味について。

上巻の序盤で古いカササギの数え唄が登場し、それがタイトルのカササギに繋がっています。

唄は一羽から七羽まで数えていて、『〇羽なら□』というフレーズが繰り返されます。

また、本書の上巻の章はこの数え唄と一致しています。

しかし、『カササギ殺人事件』というタイトルには別の意味が込められていて、後に重要な意味を持っていることが分かります。

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あらすじ

はじめに

上巻では、『カササギ殺人事件』という作中に登場する小説を読むことになります。

同じタイトルでややこしいですが、作中の『カササギ殺人事件』は著者が『アラン・コンウェイ』になっています。

作中の『カササギ殺人事件』はすでにベストセラーとなったシリーズものの第九弾で、名探偵、アティカス・ピュントが活躍します。

このピュントはアガサ・クリスティの生み出した名探偵、エルキュール・ポアロを彷彿とさせる設定になっていて、以後、アガサ・クリスティを意識したことが分かる設定、地名などが数多く登場します。

僕はクリスティの作品を全て読んだわけではないので見落としもかなりあると思いますが、下巻でどういったオマージュが散りばめられているのか解説されているので、様々なクリスティ作品を知ることが出来ました。

クリスティ入門としても最適の一作となっています。

事故か、あるいは

作中に登場する『カササギ殺人事件』の概要。

一九五五年、パイ屋敷の家政婦、メアリ・エリザベス・ブラキストンは、屋敷の階段の下で倒れているところを発見され、後に死亡が確認されます。

屋敷に鍵がかかっていることから、掃除機のコードに足を引っ掛けて階段から落ちた、つまり事故だというのが自然な見方です。

しかし、メアリはお節介焼きで、人の知られたくない部分にまでずけずけと入りこんでくる部分があり、決して村人に好かれている存在ではありませんでした。

そんな彼女ですから、殺害する動機を持つ人間が何人もいて、村人たちはそれぞれ妄想を膨らませ、誰が犯人なのかを口々に言います。

それによって村全体に不穏な空気が漂い、村人の関係に亀裂が生じ始めます。

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唐突なおわり

アティカス・ピュントは脳に出来た腫瘍によって余命数か月を言い渡されていました。

そんな時、メアリの住んでいた村に住む女性、ジョイ・サンダーリングが彼のもとをたずね、事件解決の依頼をします。

ピュントは、一度は依頼を断りますが、すぐに状況が変わります。

今度はメアリの雇い主であるサー・マグナス・パイが何者かによって殺害されたのです。

同じ屋敷の人間が二人も立て続けに亡くなることなど、まずありえません。

ピュントは一連の事件に興味を持ち、助手のジェイムズ・フレイザーと共に村に向かいます。

現地で警部補であるレイモンド・チャブと共に捜査を進め、ピュントは事件の犯人に気が付いたと思われる描写がされます。

しかし、作中の『カササギ殺人事件』の原稿はそこで終わっていて、解決編と思われる第七部が欠落していたのでした。

結末はどこにあるのか

ここからは下巻に移り、作中の『カササギ殺人事件』を出版しようとしていた編集者、スーザン・ライランドは結末が欠落していることに驚きます。

そしてそのタイミングで、著者のアランが自殺したことを知り、二重で驚きます。

結末が描かれたはずの原稿はどこにいったのか。

なぜアランは自殺したのか。

スーザンは欠落した結末を探す中でアランの近況を知り、彼の自殺に疑問を抱きます。

現実と創作の世界が入り混じり、スーザンは驚くべき真実に辿り着くのでした。

感想

王道ミステリ

アンソニー・ホロヴィッツさんの描くミステリは、僕が小さい時に魅了された古き良き王道ミステリを踏襲しつつも新たな魅力が付加されていて、本書も例外ではありません。

しかもクリスティのオマージュときているので、ミステリファンとしてこれほど胸が高鳴る組み合わせはありません。

本書に登場するカササギの数え唄は『そして誰もいなくなった』などで登場する童謡を彷彿とさせ、否が応でも想像を掻き立てます。

いわゆる古典ミステリが好きな人であれば、本書を読まないのはもったいないです。

それくらい豪華な仕掛けがいくつも施され、ミステリファンを十二分に満足させてくれる素晴らしい仕上がりになっています。

オマージュは気にしなくてもよい

しかし一方で、クリスティのオマージュである、という点を必要以上に意識する必要はありません。

本書はそれを抜きにしても魅力あふれるミステリであることに間違いはなく、クリスティの作品を読んだことのない人でもちゃんと楽しめる内容になっています。

クリスティ作品未読の人が本書を読み、知らず知らずのうちにクリスティの要素を感じ取って面白いと思えたなら、本書を入口にクリスティ作品に手を伸ばすのもアリだと思います。

新しいものから古いものに移るのも一つの方法で、本書は不朽の名作を知る良いきっかけになったのではと思います。

上下巻をうまく活かしている

本書は上下巻でそれぞれ内容が大きく異なり、そのギャップがページをめくる手をより一層加速させます。

上下巻の特性をうまく活かしてメリハリをつけたと思いきや、時には現実と創作の世界が入り混じる不安定な読書感があり、とにかく先を読みたくなる魅力に溢れています。

本書の本番は下巻で、そこからは面白さが一気に加速するので、ぜひその勢いをお楽しみください。

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おわりに

クリスティへの完璧なるオマージュ、という誇大とも思える肩書が間違っていないことを、本書は堂々と証明してくれました。

ミステリファンを虜にする、愛すべき作品だと思います。

しかし、オマージュという部分に必要以上に囚われる必要はなく、純粋なミステリとして楽しむのが本来の楽しみ方だと僕は考えます。

ミステリにあまり触れてこなかったという人が本書を読み、そこからミステリの面白さに気が付いてくれれば、ミステリ好きとしてこれ以上嬉しいことはありません。

アンソニー・ホロヴィッツさんの他の作品はこちら。