『ラスト・ワルツ』あらすじとネタバレ感想!ジョーカー・ゲームシリーズ第四弾
華族に生まれ陸軍中将の妻となった顕子は、退屈な生活に惓んでいた。アメリカ大使館主催の舞踏会で、ある人物を捜す顕子の前に現れたのは―(「舞踏会の夜」)。ドイツの映画撮影所、仮面舞踏会、疾走する特急車内。帝国陸軍内に極秘裏に設立された異能のスパイ組織“D機関”が世界で繰り広げる諜報戦。ロンドンでの密室殺人を舞台にした特別書き下ろし「パンドラ」収録。スパイ・ミステリの金字塔「ジョーカー・ゲーム」シリーズ!
「BOOK」データベースより
シリーズ第四弾となる本書。
前の話はこちら。
シリーズではお馴染みのD機関が世界を股にかけて本書でも活躍します。
アクション、ミステリ要素など短編によって面白いポイントが異なり、違った味わいを楽しむことが出来ます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
ワルキューレ
ドイツのベルリン。
日本とドイツはソ連という共通の敵に対して共闘する関係にあったはずでした。
ところが、ドイツは日本の情報の漏れやすさに失望し、裏切ります。
なぜドイツに日本の情報が漏れたのか。
D機関から派遣された雪村は、ベルリンの日本大使館で情報が漏れるルートを探ります。
目立たないことを生業としてきたスパイが目立つ、という珍しいエピソードで、これまでと違ったドキドキを味わえます。
舞踏会の夜
加賀美顕子は仮面舞踏会で、オペラグラスをのぞいて熱心に誰かを探していました。
彼女が思い出すのは二十年前のこと。
顕子は夜の街で愚連隊に襲われますが、見知らぬ男に危ないところを助けてもらいました。
男は自己紹介なしに顕子の正体を言い当て、自分が軍人であるということだけを明かして去っていきます。
去り際、顕子は大人になったら自分と踊ってほしいといい、男は約束します。
果たされるはずのない約束でしたが、二十年の時を超えて、二人は再び邂逅します。
パンドラ
ロンドン市内で発見された死体。
警察の誰もが自殺と判断する中、ヴィンター警部だけは殺人だと主張します。
しかし、死体の周りには二重の密室が用意されていて、それを崩すことは容易ではありません。
ヴィンター警部は周囲の理解を得られないままで捜査を続けますが、やがて事件の謎を解くためのきっかけを掴みます。
噂に違わぬ推理を見せるヴィンター警部ですが、それにはちゃんと裏がありました。
ミステリファンにはぜひ読んでほしい一編です。
アジア・エクスプレス
満鉄特急〈あじあ〉号。
その車内でスパイ同士の重要な情報のやりとりがされるはずでした。
ところが、情報を持ってくるはずだったモロゾフは、その情報を待っていた瀬戸に渡すことなくトイレで死体となって発見されます。
一見、心臓麻痺に見えますが、瀬戸の周囲では二ヶ月の間に同じようにしてモロゾフ含めて三人亡くなっているため、偶然とは考えられません。
モロゾフが殺害されたのは列車が出発してからなので、犯人はこの列車の中にいるということになります。
瀬戸は次の駅に到着するまでの二時間の間に、犯人を捕まえることを決めます。
感想
ひと味違うシリーズ作
本書はこれまでと同様、一冊に複数のエピソードが収録されていて、それぞれが独立しています。
そのため手軽に読め、それでいてスパイの圧倒的な精神力、人間離れした業の数々に魅了されてしまいます。
ここまではシリーズ作として共通している部分です。
一方で本書は、これまで以上に多彩なエピソードであふれています。
目立たないことが第一条件であるはずのスパイが派手に暴れたり、本格ミステリばりの世界観に突如介入したり、とにかく一冊の中でのふり幅がすごいです。
マンネリ感は隠せない
ただこれまでのシリーズでの感想にも書きましたが、マンネリ感は本書でも健在です。
D機関のスパイが圧倒的であることは当たり前の話で、どんな窮地でもなんとかしてしまいます。
ここまでくるとどんな人間離れなことでもD機関なら、と許せるようになってしまい、それがちょっと興ざめしてしまう原因でもありました。
ただ誤解がないようにいっておくと、良作であることに間違いなく、『ジョーカー・ゲーム』シリーズに求められているのはおそらくこういったテイストです。
なので、結局は自分には合わなくなったのかもしれません。
おわりに
とりあえず続編が出ていないので、これで『ジョーカー・ゲーム』シリーズは終わりということなのかもしれません。
一作目が衝撃に面白かっただけに、読むほどに失望してしまったのはちょっとだけ残念でした。
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