原田マハ
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『黒い絵』あらすじとネタバレ感想!飲み込まれるような暗闇を描いたノワール小説集

harutoautumn
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ついに封印を解かれたのは、著者初の「ノワール小説集」。嗜虐と背徳によって黒く塗りこめられた衝撃作!

Amazon商品ページより

ノワール小説。

調べてみると色々な定義が出てきますが、要は犯罪や暴力など、社会の闇を描いた小説がこれに該当します。

原田マハさんにこの印象がなかったため、読み始めても本当に原田マハか?と受け入れるまでしばらく時間がかかりました。

容赦のない衝撃の連続なので、ぜひ気持ちに余裕がある際にご覧ください。

本書に関する原田さんへのインタビューはこちら。

最新刊ノワール小説集『黒い絵』インタビューvol.1

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

深海魚 Secret Sanctuary

瀬川真央は学校でいじめられていて、学校の裏サイトにも悪口が書かれています。

そんな彼女にとって家の押し入れだけが心を許せる場所で、『海の底』と呼んでいます。

ある日、近所のコンビニで買い物をしていると店員に声を掛けられ、相手は小学校四年生の時に同じクラスだった佐々木流花でした。

彼女は『海の底』を知っていて、かつてそこで二人だけの濃密な時間を過ごしていました。

再会をきっかけに二人は親交を取り戻し、これまでの時間を埋めるようにお互いを求め合いますが、悲劇は二人を容赦なく襲います。

楽園の破片 A Piece of Paradise

ニューヨーク。

高木響子はレイ・オークウッドと七年もの間、付き合っていました。

彼はポスト印象派研究の第一人者で、多くの女性を虜にする魅力的な男性。

響子は四十三歳で人生の岐路に立っており、レイに妻と別れて自分と結婚するよう求めますが、願いは叶わず、彼との関係を終わらせます。

最後に彼を求めてしまい、そこから転落していきます。

指 Touch

私は家庭を持つ男性と何度も付き合ってきて、今の彼が四人目でした。

自分よりも地位が高く、そんな男性とのセックスは精神的な満足感を与えてくれます。

一方で女性の体の扱いには不満もありました。

二人は奈良県にある室生寺を訪れ、私は釈迦如来坐像の指と若い男性と出会い、そこで溺れていきます。

キアーラ Chiara

亜季は十年ぶりにイタリアのアッシジを訪れます。

かつて修復家として活動していましたが、今ではその肩書きも外しています。

なぜ彼女がアッシジを訪れたのか。

理由は十年前に隠されていて、それが遡って描写されます。

オフィーリア Ophelia

誰かが話している描写が始まり、その相手が額縁の中の絵、そこにいる女性だというのだから驚かされます。

彼女は水中に沈みゆく、死にゆく瞬間を画家に描かれていました。

時の流れはなく、彼女にとってその瞬間が永遠でした。

そして、彼女は一度聞いたら忘れられない物語を語り始めます。

向日葵(ひまわり)奇譚 Strange Sunflower

私こと塚本は脚本家で、フィンセント・ファン・ゴッホの脚本を書くことになり、ゴッホ役として俳優の山埜祥哉を迎えます。

山埜は役になりきるため、それに近い体験をすることを心情にしていました。

塚本はそんな彼を頼もしいと思いつつも、近い体験も大げさな表現だろうと思っていました。

しかし、山埜の心情が大げさでないことはすぐに分かります。

感想

容赦ない筆致

原田さんといえばアート系の作品から、ハートウォーミングな話まで幅広く、テイストも様々でした。

特にアート系では現実の厳しさを突きつける描写も多かったので、その点でいえば本書は全く新しいというわけではありません。

しかし、本書はその部分を集めて煮込んだような濃度と禍々しさがあり、心が晴れるような作品はありません。

恐怖を感じるものもあれば、破滅の予感を残して終わるものもあり、まさにノワール小説です。

特に男女や女性同士の恋愛が描かれ、そこからくるエロやグロ、残酷さは女性ならではの生々しさだと感心しました。

深海魚の段階でギア全開で、その勢いはとどまることを知りません。

この手の話が苦手という人も一定数いると思うので、本書は原田さんの作品の中でも人を選ぶものだといえます。

小さな違和感の積み重ね

僕は本書を特段面白くもつまらなくも感じていなくて、その理由を後から考えると、小さな違和感の積み重ねだったのかなと思っています。

例えば一ページにおける文字数の少なさ。

角川文庫だとこういったことは前にもあったのですが、作品にするために薄く引き伸ばしような印象があり、消化不良感がありました。

それから読者が嫌悪するような描写をすれば良い、というような安易な印象があり、そのためかテーマや設定はどこかで見たことがあるようなものの連続。

着地も大体は予想通りで、読後感も想定内でした。

僕の感覚で語っているのでそれが本書の評価として正しいのか微妙なところですが、原田さんの作品であれば本書の優先度は下げて良いと思います。

読んで損はしないけれど、原田さんの魅力を知りたいのであれば別の作品が優先される。

そんなところです。

おわりに

タイトルや表紙で期待値が高かっただけに、安易ないじめや不倫が多いことに落胆は隠せませんでした。

最近原田さんの作品が肌に合わないと感じることも出てきたので、僕の趣味嗜好が変わった可能性もあります。

ただそれですぐに読むことを辞めることもないので、しばらくは新刊を楽しみにしたいと思います。

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