原田マハ

原田マハ『星がひとつほしいとの祈り』あらすじとネタバレ感想!様々な女性の苦悩と希望を描く短編小説

売れっ子コピーライターの文香は、出張後に寄った道後温泉の宿でマッサージ師の老女と出会う。盲目のその人は上品な言葉遣いで、戦時中の令嬢だった自らの悲恋、献身的な女中との交流を語り始め…(「星がひとつほしいとの祈り」)。表題作ほか、娘として妻として母として、20代から50代まで各世代女性の希望と祈りを見つめ続けた物語の数々。

「BOOK」データベースより

本書は表題作を含む七つの短編が収録された作品です。

様々な年代の女性がそれぞれ主人公となり、大変な日々の中で希望だったり光だったりを見つけたりする様子が描かれています。

日常に疲れた人にとって癒し、あるいは希望になりえる作品です。

本書に関する原田さんへのインタビューはこちら。

『星がひとつほしいとの祈り』原田マハ氏インタビュー 「親子関係、旅、女性の物語です。この文庫を持って旅に出てください」

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

椿姫 La traviara

香澄は妊娠しますが、相手は妻子がいて結婚など望めません。

仕事にも疲れ、誰にも頼れない香澄は意を決して産婦人科に行きます。

そこには十代の少女がいて、彼女もまた望まぬ妊娠をした一人でした。

帰り道、香澄は今出てきた産婦人科を目指す少年と出会い、さっきの少女の相手なのではないかと思います。

負担を強いられるのはいつも女性であり、香澄は少年に怒りを覚えますが、やがて心境に変化が訪れる様子が描かれます。

夜明けまで Before the Daybreak Comes

堂本ひかるの母親であるあかりは一流女優でしたが、病気で亡くなります。

しばらく交流のなかった親子ですが、あかりはひかる宛てにメッセージを残していました。

それは、大分県にある『夜明』という駅に自分の遺骨を持っていってほしいというものでした。

ひかるは訳が分からないまま夜明に向かい、母親のこれまでの人生を知ることになります。

星がひとつほしいとの祈り Pray for a Star

文香は大手広告代理店のコピーライターとして順調な人生を歩む一方で、恋愛だけはいつも上手くいきません。

ある日、仕事で訪れた土地の旅館でマッサージを頼むと、現れたのは目の見えない老婆でした。

老婆の腕は確かで、文香はふと老婆の人生のことを知りたくなり聞きます。

少しして、老婆はゆっくりと自分の人生を語り始めます。

寄り道 On Her Way Home

『さいはての彼女』に登場したハグとナガラが登場する話。

二人は白神山地を回るツアーに参加し、そこで一人の女性と出会います。

高飛車な態度にはじめこそ苛立ちが募りますが、少しずつ打ち解け、やがて女性は自分の置かれた状況について話してくれます。

斉唱 The Harmony

梓は娘の唯と二人暮らしですが、ある日から唯は心を閉ざし、何を考えているのか分からなくなっていました。

ところがある日、唯から学校の提示する体験学習に誘われ、二人は新潟県の佐渡島を訪れます。

唯は密かにトキを見たいと思っていましたが、日本の野生のトキはすでに絶滅し、今は中国からもたらされたトキの繁殖が行われています。

二人は旅行先で現地の人、そしてトキのことを知り、その関係性が少しずつ変化します。

長良川 River Runs Through It

堯子(たかこ)は夫を亡くして半年が経ち、傷が癒えてきた頃にかつて夫と訪れた場所を娘、娘の婚約者と共に訪れます。

若い二人の幸せな姿を見る中でかつての幸せな日々がよみがえり、過去と現在、未来が交錯します。

沈下橋 Lorelei

歌手の阿藤由愛が大麻を使用したことが報道され、世間をにぎわします。

ある日、由愛の継母だった多恵のもとに電話が入り、相手は由愛でした。

由愛は自殺しようとしていて、思いとどまらせる前に電話は切れてしまいます。

多恵は由愛のことを探しますが、その中で彼女との日々を振り返ります。

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感想

最後に光が差し込む

本書には決して平坦でない人生を歩む女性がたくさん登場します。

しかし、これは決して珍しいエピソードではなく、僕らの身近なところでも転がっているものです。

誰もが大小あれど苦労を背負って生きているということを改めて認識しました。

人生に疲れて、自暴自棄になってしまう時もあると思います。

けれど、懸命に生きている人には何かのきっかけで新たな希望が見えてくる瞬間があり、本書ではそんなシーンが描かれています。

何気ないことなのに、それが大切だと気付ける原田マハさんの観察眼が活かされているなと感じました。

方言の扱い方が上手い

原田さんといえば地方を舞台にして、その土地の方言も積極的に取り入れているというイメージがあります。

本書の中にもいくつか方言を取り入れた短編があり、正直読みにくいです。

しかし、同じことを言っててもその土地の言葉だからこそ伝わる温かみがあり、それが臨場感に繋がります。

この空気感の作り方が相変わらず上手いなと感心してしまいました。

後半はお腹いっぱい

どの短編も、一つ一つ見れば上質な作品で、原田さんならではの魅力にあふれています。

ただそれを七つも一気に読むとなると、個人的に四つ目くらいから満腹感が否めませんでした。

様々な年代、境遇によって抱える悩みや問題は異なります。

しかしどれも大変な状況でも懸命に生きて、その先に生きる喜びや希望を見出すという基本的な構成は変わりません。

そのせいか感動の押し売りのような感覚がしてしまい、素直に感情移入して読めなくなっていました。

これは本書一冊にまとめようとしたこと自体が無茶なことで、短編自体になんの問題もありません。

同じテイストの話だと飽きてしまうという人は、途中に別の本を挟みながら読むのも手だと思います。

原田さんの作品は熱いメッセージが込められている分、続けざまに読むともたれてしまうことがしばしばあるので、箸休めすることもオススメです。

おわりに

日常にありそうな人生の数々だからこそ胸に響き、明日も生きていこうと思える光を与えてくれる作品でした。

原田さんの作品が好きな人であれば、読んで損なしです。

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