ミステリー

『朽ちないサクラ』あらすじとネタバレ感想!ストーカー殺人に隠された本当の闇とは?

警察のあきれた怠慢のせいでストーカー被害者は殺された!?警察不祥事のスクープ記事。新聞記者の親友に裏切られた…口止めした泉は愕然とする。情報漏洩の犯人探しで県警内部が揺れる中、親友が遺体で発見された。警察広報職員の泉は、警察学校の同期・磯川刑事と独自に調査を始める。次第に核心に迫る二人の前にちらつく新たな不審の影。事件には思いも寄らぬ醜い闇が潜んでいた。

「BOOK」データベースより

柚月さんの作品は年々事件そのものではなく、なぜ起こったのかという動機の部分に力が注がれていて、本書ではその傾向が特に表れています。

一見、警察の怠慢のせいで起きた殺人事件が、実はただの殺人事件ではなかった。

殺害の動機、そして殺害することによって誰に利益がもたらされたのか。

ページをめくるごとにどんどん事件のスケールが大きくなるので、読み進めるほど高揚感を覚えました。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

警察の怠慢

森口泉の勤める米崎県警広報広聴課では、市民からの苦情対応に追われていました。

発端は長岡愛梨という大学生のストーカー被害の相談です。

愛梨と両親は安西という男に付きまとわれていることを平井中央警察署の生活安全課に相談しますが、担当した辺見は安西が犯人である確証がないことを理由に被害届を受理しませんでした。

愛梨の両親が弁護士を立てると言い出すことでようやく辺見は対応しますが、受理は一週間遅れました。

理由を人員が出払っているからだとしていましたが、本当の理由は所轄職員で行く慰安旅行を控えていたからでした。

一週間後、被害届は受理されますが、その二日後に愛梨が殺害されました。

さらに慰安旅行の件が地元の米崎新聞に知られることになり、世間は警察の怠慢を激しく非難。

そして現在に至ります。

警察が初動を間違えなければ助かった命かもしれない。

そう思うと同時に、なぜ米崎新聞だけが報道できたのか、警察内部の誰かが情報を漏らしたのではないかという疑問が湧きます。

苦情対応に追われる中で、泉には情報元の心当たりがありました。

親友の死

泉の心当たり。

それは高校時代からの親友で、米崎新聞で県警を担当している津村千佳でした。

泉は警察学校時代の同期で、生活安全課で働く磯川から慰安旅行について聞かされていて、うっかり千佳に漏らしてしまいました。

口止めをして千佳もそれを了承していましたが、事実、こうして記事になっていることから、泉の疑念の矛先は千佳に向かいます。

千佳は自分ではないと否定し、泉も彼女のことを信じようとします。

しかし、千佳は上司・兵藤と不倫関係にあり、兵藤のためであれば約束を守ることも十分考えられます。

気まずい雰囲気になる中、千佳はこの件には裏があるともらし、泉の信用を取り戻すために調べてみると残して去っていくのでした。

情報元は誰なのか

慰安旅行の報道から一週間後、なんと千佳の死体が川で見つかります。

事故か自殺に見せかけていますが、肺の中の水の状況から別の場所で殺害されたことが分かっており、警察の疑いは泉にも向きます。

千佳と関わりの深い泉を容疑者から外すことは出来ませんが、上司の富樫は事情を聞く代わりに捜査情報などを提供します。

一方、自分が特ダネの情報元になってしまったのではと考える磯川は、泉に巻き込んでしまったことを謝罪。

二人は事件について情報を共有し、改めて米崎新聞の情報元について独自に調査を始めます。

やがて一連の事件の構造が見えてきますが、そこには思ってもみなかった闇が隠されていました。

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感想

最初と最後で作品の印象が変わる

途中までは警察の怠慢によるただの殺人事件で、怠慢の裏には何か公表できない秘密があるのだろうと簡単に考えていました。

しかし、泉と磯川が事件を調べるにつれて事件の構造は複雑になり、そんなことがあるのだろうか、と首を傾げたくなるような事実が次々に明らかになります。

あまりのスケールの大きさに、とにかく先に先に読み進めたいという気持ちにさせられました。

結末まで読むと、最初の時とはもはや別作品です。

フィクションならではの展開を最大限に活かした良作だと思います。

一方で、あまりに突拍子もないというか、本当にそうか?と納得できない部分もあり、読み終わった後もモヤモヤが残りました。

柚月さんの作品の中でも、評価が分かれる作品になるのではないでしょうか。

女性もおじさんも魅力的

ストーリーの評価は上記の通りですが、キャラクターに関しては相変わらず魅力的です。

柚月さんの描く女性は芯が強くてカッコ良い。

そして、柚月さんの描くおじさんもまたカッコ良いのです。

広島弁からくる粗暴な印象、理想よりも現実を重視した嫌な部分が最初は目立ちますが、次第に心の奥底にある熱いものが出てくると途端にカッコ良くなります。

キャラクターがいつも魅力的なのが安心材料で、柚月さんの作品を躊躇なく手にとれる理由でもあります。

続編ありきの結末?

最後に結末についてですが、個人的には可もなく不可もなくでした。

事件の真相は一応明らかになりますが、それによる爽快感は全くありません。

そして、明らかに続編に繋がるであろうことが匂わされていて、続編ありきの結末というのが僕の印象です。

事実、『月下のサクラ』というタイトルの続編が刊行を控えているので、本書の評価はそれを読んでから決めるのが良いということで、一応納得しています。

本書単体で期待していた読者にとっては、ちょっと物足りなかったかもしれません。

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おわりに

色々と不満な点を挙げましたが、僕は『佐方貞人』シリーズに次ぐ柚月さんの代表シリーズになるのではと密かに期待しています。

泉は今回の事件でかなり悔しい思いをしているので、ぜひそれを晴らすチャンスを与えてほしいと思います。

そして、磯川との関係についても今後に期待です。

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