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『神去なあなあ日常』あらすじとネタバレ感想!突然始まる林業エンタメ

harutoautumn
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美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ~!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。

「BOOK」データベースより

林業エンターテインメント小説、なる見たことも聞いたこともないフレーズを打ち出した本書。

2014年に『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』というタイトルで映画化もされています。

訳も分からず三重の山奥に送り込まれ、林業に従事することになった主人公の平野勇気。

はじめは帰りたくて仕方がないのに、いつの間にか林業や自分の住むことになった神去村の魅力に気が付いていく過程が丁寧に描かれ、上質なエンタメ小説に仕上がっています。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

本書は、主人公である平野勇気がパソコンで作成した日記で、三重県にある神去村にやってきてからの一年間を読者がいるつもりで綴っています。

突然決まった進路

平野勇気は高校を卒業してフリーターで食べていこうと考えていましたが、担任は彼の許可なしに勝手に就職先を決めてしまいます。

勇気の両親も反対することなく息子を見送り、勇気は自分の意志とは関係なく指示された場所、三重県の山奥にある神去村に行くことになりました。

そこで勇気に与えられた仕事は林業でした。

勇気が林業に従事すると国から助成金が出る制度があり、お金に困っていた平野家はそれを利用したのです。

言い方を悪くすれば、勇気はお金のために売られたのでした。

こうして勇気のフリーターで食べていくという未来像は瞬く間に砕け散り、神去村での日々が始まります。

何もない山奥

神去村は想像以上の山奥で、まず携帯の電波が入りません。

それから村には若者の娯楽になるようなものは何もなく、まともな買い物をするには車で遠出する必要があります。

勇気はそんな神去村で中村林業に就職することになり、そこの従業員・飯田与喜(ヨキ)の家に住まわせてもらうことになりますが、とにかく苦難の連続です。

慣れない林業は辛いし、ヨキは妻のみきと喧嘩ばかりで仲裁するのに一苦労だし、勇気は帰りたいと常に考えていました。

しかし、それでも住み続ける中で、勇気の心境に少しずつ変化が起きます。

神去村の魅力

林業を通じて神去村の四季を感じ、勇気の住んでいた横浜にはない魅力があることに気が付きます。

自然の美しさはもちろんのこと、家族のような村人との付き合いはいつしか勇気の心を掴んでいました。

そして勇気の関心を最も集めたのは、中村林業の社長・中村清一の妻・祐子の妹で小学校の先生である直紀の存在でした。

勇気は直紀に一目惚れしますが、彼女にその気はなく、お近づきになるまでの道のりは遠いですが、勇気はめげません。

本書では、そんな勇気の一年間が描かれているので、ぜひご覧ください。

感想

自然な過程

本書では勇気の目線を通じて、大きく捉えると神去村そのものが描かれています。

若者がほとんどいない、加えて娯楽のない山奥での生活を、高校を出たばかりの勇気が喜ぶはずがありません。

しかし、本書は急ぐことなく勇気の心境の変化を少しずつ綴り、神去村の見え方が徐々に変わっていくところを丁寧に描いています。

この辺りの上質さは三浦しをんさんならではのものではないかと思います。

そこに加えて現代社会では廃れてしまった迷信のようなものが未だに語られていて、それが一種の幻想的な雰囲気を醸し出しています。

それによって時には非日常感が演出され、全体として退屈することはありませんでした。

エンタメ小説として、文句なしの仕上がりです。

林業の本当の姿

僕は本書を読むまで林業のことなんてほとんど考えたことがありませんでした。

ちゃんと考えたのは小学校の授業ぶりで、二十年以上前のことです。

そんな無知の僕ですが、本書は何も知らない僕でも分かるように林業について教えてくれます。

林業とはどういった仕事なのか、どんな状況なのか。

もちろんきれいごとだけではないのですが、それでも林業ならではの魅力が本書には詰まっていて、林業に新たな風を吹き込んだのではないかと思います。

やや説明がくどい

一方で不満な点もあり、それは林業の説明がややくどいことです。

林業を題材にする以上、その説明にページ数を割くのは当然なのですが、それでも占めるウェイトがちょっと大きいのはないかと感じてしまいました。

あくまで読みたいのはエンタメ小説であって、林業小説ではないのです。

その点、本書の続編である『神去なあなあ夜話』では前作を踏まえて描かれているので、エンタメ要素が増してより読みやすくなっています。

僕はそちらをぜひ読んでほしいので、そのことも踏まえて本書にも気長にお付き合いいただければと思います。

おわりに

林業とエンタメを融合させた不思議な雰囲気を持つ作品で、三浦さんの魅力がこれでもかと詰まっています。

本書に登場する彼らのその後が気になるよう、うまく構成されているので、読み終わった人はぜひ続編にも挑戦してみてください。

次の話はこちら。

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