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『走れメロス』あらすじとネタバレ感想!太宰治の生んだ日本文学の傑作

「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の短編小説。初出は「新潮」[1940(昭和15)年]。「邪智暴虐の王」への人質として差し出した友人・セリヌンティウスの信頼に報いるために、メロスがひたすら走り続けるという作品。信頼と友情の美しさを基本に描きつつ、そこに還元されない人間の葛藤をも描いた、日本文学における傑作のひとつ。

Amazon商品ページより

学校の教科書でもお馴染みの本作ですが、僕はこの度、森見登美彦さんの『新釈 走れメロス 他四篇』を読んで改めて本書を手にとりました。

内容としては記憶にある通りでしたが、人間の葛藤や、それでも信頼のために心を奮わせるところなど大切なメッセージが盛り込まれ、以前とは違った考えを持てたのは大収穫でした。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

あらすじ

村の牧人・メロスは竹馬の妹の結婚式の準備のためにシラクス市を訪れますが、二年ぶりに訪れる市はひっそりとしていました。

町行く人にたずねると、王は人を信じることができず、少しでも派手な暮らしをしている人間を処刑するのだといいます。

怒ったメロスは王に会い、人の心を疑うことが恥ずべき悪徳だと説きますが、王は疑うことが正しいのだと譲りません。

王はメロスをも処刑しようとしますが、メロスは処刑までに三日間の猶予を求めます。

三日間のうちに妹の結婚式に参列し、それから帰ってくると。

もちろん王にはそんな話など信じられず、どうせ逃げるのだと許可してくれません。

そこでメロスは竹馬の友・セリヌンティウスを人質として置き、自分が戻ってこなければ彼を処刑するよういいます。

王は残虐な気持ちでそれを了承し、セリヌンティウスはただ信じてメロスを待ちます。

メロスは不眠で村に戻ると、妹の結婚式に参列してすぐに市に向かって走ります。

途中、豪雨で流れの激しい川を渡るのに体力を消耗し、王に依頼されてメロスの命を奪いにきた山賊を撃退して、メロスはもう疲れ切っていました。

どれだけ自分を奮い立たせても身体は動かず、諦めて眠りに落ちそうになります。

その時、メロスは湧き出る清水に気が付き、それを飲むと夢から覚めたような気がしました。

自分は友の信頼に報いなければならないと、その一心で走ります。

途中、セリヌンティウスの弟子・フィロストラトスが止めても止まりません。

そして間に合うと、セリヌンティウスに自分を殴らせます。

信頼を裏切ろうとしたことへのけじめとして。

一方、セリヌンティウスもまたメロスが帰ってこないと疑ったことを謝罪し、メロスに自分を殴らせることで二人はけじめをつけ、抱き合います。

王は二人の友情を目の当たりにして、信実とは決して嘘ではないことを知り、二人の仲間に入れてくれないかと頼みます。

それを見ていた群衆から歓声がわきます。

そんな中、一人の少女がメロスに緋のマントを差し出します。

意味が分からないメロスですが、セリヌンティウスが教えてくれました。

メロスは真っ裸で、少女はメロスの裸体を皆に見られるのがたまらなく口惜しいのだと。

メロスはようやく自分の置かれた状況に気が付き、ひどく赤面するのでした。

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感想

シンプルだけど深い

人間関係は信頼で成り立っていて、あの人のためであれば頑張れる、ということも少なくないと思います。

一方で、一度も相手のことを裏切れずにいる人は、果たしてどれくらいいるでしょうか。

誰でも一度は相手のことを疑い、裏切ろうと心の片隅で考えたことがあるのではないでしょうか。

本書のメロスもセリヌンティウスも、どれだけ信頼している友のこととはいえ、一度だけ信頼を損ねることを考えてしまいます。

しかし、それでも二人は折れずに友への信頼のために行動し、やがて信頼というものが妄想ではないことを証明してみせます。

結末としてはきれいごとですが、しっかりと葛藤を描くことで簡単に証明できないことも描いてくれているので、シンプルだけど深みのある作品だと改めて思いました。

『新釈 走れメロス 他四篇』との違い

森見登美彦さん版『走れメロス』との簡単な比較も書きます。

これは明らかな違いを持っていて、森見さんの『走れメロス』の主人公・芽野は早々に堂々と嘘を言い放ち、人質となった友人・芹名も彼が帰ってくるとはつゆほども信じていません。

この違いを迷いなく描くあたりに、森見さんのユニークさと強さを感じます。

一方で、カッコ良くはありませんが結末は見事に原作を踏襲していて、これもまた『走れメロス』だと納得できるものでした。

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おわりに

教科書に載っていることもあってあまり深く考えたことはありませんでしたが、一つの作品としてきちんと読むと、新たな発見がたくさんある作品でした。

特に森見登美彦さんの『走れメロス』との対比がかなり面白かったので、ぜひどちらも読んでみてください。