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『6月31日の同窓会』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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「案内状が届くと死ぬ」その伝説が現実に―!?伝統ある女子校・蘭聖学園の卒業生が連続死する。OGの弁護士・松川凛子は、死亡した女たちが、存在しないはずの「6月31日」に開催される同窓会の案内状を受け取っていたことを突き止める。やがて凛子にも案内状が届き―。悪意が渦巻く女の友情と学園の“闇”が深まる中たどりついた真相とは。先読み不能、一気読み必至の長編ミステリー!

「BOOK」データベースより

このブログで湊かなえさんの作品を多数紹介してきましたが、本書の作者である真梨幸子さんも『イヤミス』の作風で非常に人気の作家さんです。

僕は今回、初めて真梨さんの作品を手にしたのですが、想像以上の後味の悪さでした。

終始漂う嫌な雰囲気、全員が抱える強い悪意、時系列が激しく前後する酔うような感覚。

読み返すまで、何が起きているのかよく分かりませんでした。

登場人物が多いので、この記事が頭の整理に役立てれば幸いです。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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柏木陽奈子の記憶

過去のシーンから始まり、視点となる少女の正体はこの時点では分かりません。

少女は女子一貫教育で知られる蘭聖学園の高等部に編入試験で入学し、同じく編入組の恵麻と知り合い、すぐに仲良くなります。

ある日、恵麻の母親から少女に電話が入ります。

恵麻のことで相談したいことがありました。

恵麻は中学時代にあった事件のことを引きずっていて、そのせいか殺人計画ノートという物騒なものを書いていました。

それはクラスメイトを粛正するための計画が書かれたノートで、恵麻は中学のクラス会を企画、そこで粛正を行うことを計画していて、母親はそれを信じていました。

すでに出欠席の返事が届いているだけでなく、フッ化水素酸という猛毒を用いて殺害することまで書かれていました。

ここで回想は終わり、次の場面はその十二年後。

視点は人気漫画家の柏木陽奈子です。

彼女のもとには『6月31日の同窓会』の案内状が届き、それから不眠が続いていました。

ニュースでは大崎多香美という女性がフッ化水素酸で亡くなったと報じられていました。

多香美は陽奈子の蘭聖学園のクラスメイトで、綽名は委員長。

彼女からは先日、同窓会に参加してほしいという電話があったはずなのに、それがどうして。

陽奈子は気分転換をしようと外に出ますが、気が付くと歩道橋の階段から転落していました。

頭からは血が大量に流れていて、彼女の視点は暗転します。

松川凜子の選択

蘭聖学園のOGである弁護士の松川凜子。

彼女は蘭聖学園同窓会事務局から依頼があり、陽奈子を突き落とした加害者である小林友紀の弁護をすることになります。

友紀もまた蘭聖の卒業生で、陽奈子を突き落としたことを認めるも、無罪を主張します。

彼女は祖母の後を継いで『鈴蘭会』に入り、蘭聖学園の品格を傷つける行為をした人間に『お仕置き』を与えていました。

陽奈子は蘭聖学園をモデルにして、新しい漫画の連載を始めようとしていて、それが理由でお仕置きしたのだといいます。

お仕置きの対象には6月31日の同窓会の案内状が届き、陽奈子のアシスタントをしていた友紀もそれを確認、行動に移しました。

弁護人である以上、凜子は友紀の無罪を勝ち取るために全力を尽くさなければなりません。

結果、殺人にもかかわらず懲役二年六か月を勝ち取りますが、蘭聖学園のOGからは期待外れだと失望されてしまいます。

友紀の裁判を終えても疲れがとれず、凜子は持病のための薬の量が増えていきます。

そんな中、彼女のもとにも6月31日の同窓会の案内状が届くのでした。

鈴木咲穂の綽名

去年、凜子の事務所を訪れた、陽奈子の高校のクラスメイトだった鈴木咲穂。

蘭聖学園では何かあれば凜子を頼るよう言われていて、それで咲穂はここを訪れました。

彼女が持ってきたのは、6月31日の同窓会の案内状でした。

咲穂は案内状にまつわる噂を知っていて、お仕置きされる心当たりについて話します。

彼女はクラスメイトだった多香美のことが嫌いで、六年前の同窓会で、多香美の足をひっかけます。

雨が降っていたため、多香美は倒れ込んだ時にドレスを汚してしまいます。

凜子はただのイタズラとして咲穂を返しますが、その翌々日、多香美の死をニュースで知ります。

そして翌年、自分のところにも案内状がきたことで咲穂のことを思い出しますが、彼女に連絡をとる前に激しい痛みが頭を突き抜け、床に倒れるのでした。

福井結衣子の疑惑

事務スタッフの海藤に起こされた凜子。

何でもないといって、法律相談で訪れた蘭聖学園のOG・福井結衣子の対応をします。

彼女もまた陽奈子たちのクラスメイトです。

結衣子は殺されるかもしれないと強迫観念に駆られていました。

その理由として、彼女たちが高校一年の時、学業発表会で演じた6月31日の同窓会をモチーフにした劇のことを話し始めます。

劇の内容は以下の通り。

6月31日の同窓会の案内状をもらった生徒たちがとあるホテルのレストランに集まりますが、彼女たちは実はすでに死んでいます。

そして、どうして死んでしまったのか、6月31日の同窓会の意味について考えるというもの。

陽奈子も多香美も殺される役として劇に出演していました。

彼女がこのことを思い出したのは、友紀に実刑が下された後、自分にも6月31日の同窓会の案内状が届いたからでした。

そして、仲の悪かった母親に殺害されるのではと半ば被害妄想に近い考えをしていました。

結衣子が帰った後、以前相談に訪れた狭山路子の妹が結衣子であることに気が付きます。

路子からは、結衣子の素行を調べてほしいと依頼されていて、彼女はマルチ商法で荒稼ぎする会社に勤めていました。

そして、結衣子の被害にあった彼女のクラスメイトが自殺。

凜子は今回の件について、結衣子の自業自得だと片付け、この後に控えるテレビ収録に備えます。

その後、収録のためにメイクをしてもらっていましたが、海藤から電話がかかってきて、結衣子が亡くなったことが告げられます。

矢坂雪乃の初恋

ここでは矢坂雪乃の視点で、6月31日の同窓会をモチーフにした劇が決まる過程などが回想されます。

学業発表会が近づく中、彼女たちのクラスは劇をするということでまとまりますが、オリジナルの脚本でいこうということで五本の脚本が提出されます。

どれも似たりよったりの中、委員長である多香美は意地悪で恵麻を推薦。

これは担任と話を合わせ、編入組としていまだにクラスに馴染めない恵麻を溶け込ませる狙いがありました。

恵麻はこれを了承し、一週間後に6月31日の同窓会のシナリオを書き上げてきて、それが採用されます。

そして場面は現在に戻り、凜子は雪乃と会っていました。

結衣子の葬式が行われたその日、次は自分が殺されるかもしれないと雪乃から電話があったのです。

雪乃は問題となる6月31日の同窓会の劇の内容を話します。

当初、劇の殺人はフッ化水素酸で行われる予定で、多香美の死因でもあります。

しかし、前に蘭聖学園のある町でフッ化水素酸が凶器となった事件があったため、決定稿ではナタが凶器となりました。

ここで結衣子の死因が心不全であることが判明。

凜子は結衣子の母親に関する良くない噂を思い出しますが、真偽は定かではありません。

劇では十七人が死ぬことになっていて、それぞれ役名がアルファベットになっていて、Aが多香美、Bが陽奈子、Cが結衣子の親友で自殺した寧々、Dが結衣子となっています。

凜子は詳細が気になり、雪乃に台本があれば貸してほしいと依頼。

また、台本を書いた恵麻について聞きますが、彼女は高校を中退。

さらに蘭聖学園では名前で呼び合うよう指導していたため、雪乃は恵麻の苗字を覚えていませんでした。

しかし、結衣子は凜子の事務所で恵麻を見たと雪乃に話していて、凜子は海藤の写真を見せます。

雪乃は彼女だといい、脚本を書いたのが海藤であることが判明しました。

小出志津子の証言

凜子が次に会ったのは、恵麻の中学の同級生だった小出志津子です。

恵麻のことを知ったのは二週間前ですが、凜子はそのことを聞けずにいました。

ここからは、志津子のする恵麻の話です。

志津子と恵麻は性格が合いませんでしたが、蘭聖学園の入学試験に失敗したという共通点から交換日記を続けていました。

記念受験の志津子と違い、恵麻は本気で蘭聖学園を狙っていました。

しかし、蘭聖学園は初等部入試は保護者を重視していて、恵麻の母親がポルノ女優であることが響いたのか、結果は不合格。

中学でもそのことはクラス中が知っていて、恵麻は自分の殻に閉じこもっていました。

そこで志津子は交換日記をもちかけ、恵麻はそこで本当の自分をさらけ出します。

そしてある時、『三年C組 皆殺し計画』というタイトルのものが書かれていました。

恵麻は卒業後、同窓会で参加者全員を劇薬で殺害しようと計画していたのです。

志津子はこんなことを続けるなら交換日記をやめると言いますが、恵麻はシナリオだと訂正。

その後、ある事件を境に恵麻は学校に来なくなり、交換日記は今も志津子が持っています。

事件とは三年のゴールデンウィーク明け、理科室のビーカーに触れた女子の手が壊死したのです。

その原因はフッ化水素酸でした。

公にはされていませんが、犯人の演劇部の男子部員は逮捕。

彼は実家の工場からフッ化水素酸を入手、護身用として持ち歩いていたのです。

しかし、志津子は恵麻が彼からフッ化水素酸を入手し、明確な殺意のもとで使用したのだと主張。

日記には、計画の詳細が書かれていたからです。

志津子は共犯者になったようで今までこのことを言えませんでしたが、凜子に会う今回が最後のチャンスだと思い、秘密を打ち明け、日記を凜子に渡すのでした。

海藤恵麻の行方

凜子は一連のことを『蘭聖学園連続不審死事件』と呼び、謎を追います。

まず最初に、なぜ多香美がフッ化水素酸で死亡したのかを考えます。

フッ化水素酸のことを調べると、歯科技工の分野で用いられることを知ります。

咲穂の夫は歯科医で入手ルートになり得ますが、凜子は自分の観察眼から咲穂が嘘をついていないと判断。

それから結衣子の母親は薬剤師であるため、フッ化水素酸を入手することはできますが、証拠はありません。

それから恵麻のこと。

志津子と面会後、事務所に戻ると恵麻はいませんでした。

しかし、テレビ収録が迫っていて、探す間もなく収録に向かいます。

慌ててメイクをしてもらう中、いつものメイクさんから恵麻のことについて聞かれ、その瞬間、凜子の意識が遠のきます。

普段飲んでいる薬に恵麻が何かしたのではと、考えがよぎります。

土門公美子の推理

陽奈子たちの同級生である土門公美子と、そのメイクを担当するアイダという女性。

彼女は陽奈子のメイクをしたことがあり、元々公美子も凜子に彼女を紹介してもらったのでした。

陽奈子に関しても、恵麻からメイクを依頼されていました。

またアイダは公美子の綽名を口にしていて、この時点で、彼女のことをよく知る人物であることが推測されます。

公美子はアイダから凜子が倒れたことを知り、急いで病院に駆け付けます。

凜子は徐々に意識が明確になり、6月31日の同窓会の劇について聞きます。

しかし、公美子はあくまで噂であり、6月31日の同窓会の案内状もすでに十通以上来ていると証言。

不幸の手紙やチェーンメールと同じ類のものだといいます。

というのも、受け取ったら他の三人に同じ文面を送るというルールがあり、特定の人物にだけ送っているわけではないからです。

しかし、凜子は恵麻がクラスメイトに遺恨を持ち、それが原因で犯行に及んだのではと考えていました。

ここで公美子は、高校時代の恵麻について話します。

恵麻ともう一人編入組の女子生徒がいて、彼女たちは一年のゴールデンウイーク、池袋で補導されていたのです。

その時、恵麻が妊娠したと言われていますが、真実かどうかは分からず、これが遺恨のもとではと凜子は考えます。

しかし、妊娠の噂が立つ前に6月31日の同窓会の脚本は出来上がっていたため、それが理由ではないと公美子はいいます。

多香美、そして陽奈子の一周忌が近づいているため、そこに顔を出すかもしれない。

結局、真実は分かりませんでした。

その後、多香美の一周忌の法要に参加するかどうかクラスメイトに電話をする公美子。

電話が繋がった全員に6月31日の同窓会の案内状が届いていたため、改めてイタズラだと判断。

公美子は誰が案内状を送ったのか分かっているようですが、ここでは明かされません。

この時、多香美を殺害した犯人として、夫の大崎芳重が捕まったというニュースが流れます。

その後、多香美の法要で会う公美子と咲穂。

この時、恵麻が亡くなったことがニュースで流れていました。

ここに雪乃も加わり、凜子の視点では得られなかった情報が出てきます。

凜子に案内状を送ったのは雪乃で、その罪滅ぼしとしてつい『恵麻のシナリオ通りに人が死んでいる』と嘘をついてしまいます。

確かにクラスメイトが五人も亡くなっていますが、それも暗示だと三人は結論。

6月31日の同窓会の案内状が届き、多香美がフッ化水素酸で死んだことで、お仕置きされる覚えのある人間が暗示にかかって死に向かっただけではないか。

では、発端である案内状は誰が送ったのか。

公美子は、多香美が送り主なのではと考えていました。

ここで三人は恵麻の他にもう一人編入組がいて、綽名がゴウダマン、本名・合田満であることを思い出します。

そう、公美子のメイクをしたアイダという女性です。

合田満の告白

合田満は告白します。

多香美を殺害した大崎にフッ化水素酸を渡したのは彼女です。

満は『アイダミチル』という名前でヘアメイクをしていました。

高校時代、同じ編入組ということで仲良くなった満と恵麻は心中するために、太宰治の入水自殺にならって武蔵野に向かおうとしました。

ところが電車を間違えて池袋に着いてしまい、そこで補導されたのです。

その後、満は恵麻から永遠の友情の印としてもらっていた小さな容器の中身がフッ化水素酸であることを知り、恵麻が自分のことを殺害しようとしていたことを知ります。

恵麻は自分の書いた脚本が受け入れられて以来、満の求める彼女とは違ってしまいました。

そこで満は恵麻が妊娠しているとデマを流し、再び前の立ち位置に戻させたのです。

しかし恵麻は転校し、それで話は終わるはずでした。

ところが、満が美容学校に通っている頃に恵麻と再会。

恵麻は当時のことをすっかり忘れ、今の生活が充実していることがうかがえます。

一方、ここで満が整形していることが判明します。

ここからは事件の真相について。

満は卒業後、多香美との付き合いが再開し、ある日、お酒の勢いで多香美の夫と肉体関係を持ってしまいます。

満は多香美が離婚するよう嫌がらせをしますが、彼女はそれに屈することなく、むしろ満に外部入試の本当の意味について教えます。

蘭聖学園はもともと行儀見習い施設で、案内状にあった会場のホテルニューヘブンはかつて女子刑務所でした。

そして、出所した人を保護するのが鈴蘭会の役目でした。

その役目は今にも受け継がれていて、今でも少女の犯罪者を矯正するために外部入試という建前で問題児を受け入れていたのです。

その証拠に、問題児の試験問題は簡単になっています。

つまり、満に恵麻、そして凜子は矯正目的で蘭聖学園に入れられていたのです。

真実を知って怒りを覚えますが、それでも今の生活が幸せな満は復讐など考えませんでした。

一方、多香美の夫である大崎に対する罵詈雑言はひどくなり、満はお守りとして恵麻からもらったフッ化水素酸を渡します。

しかし、使ったのは多香美自身でした。

彼女は夫と満のメールのやり取りを見て、フッ化水素酸のことを知ったのです。

そして、案内状を満、陽奈子、咲穂に送り、自分が自殺することでそれぞれに恐怖心を植え付けようとしていました。

結局、多香美の目論見通りに四人ものクラスメイトが死んでしまいました。

最後に、凜子にメイクする満。

満は、多香美が話していた凜子のことを思い出していました。

蘭聖学園では、何かあったら凜子に相談するよう言われていますが、それは問題児である凜子の監視が目的でした。

凜子は極度に興奮すると残虐性が剝き出しになる側面があり、かつて弟二人をナタで半殺しにしたこともあります。

彼女が飲んでいる薬は興奮を抑えるためのものでした。

また凜子が倒れた翌日、満のもとに恵麻からメールが届きます。

彼女は凜子が怖いから法律事務所をやめるといい、満もまた、鏡越しに凜子と目を合わすことができませんでした。

結末

再び陽奈子の視点で、新たな真実が明らかになります。

陽奈子は友紀に新しい連載のことを話しますが、その時、多香美の死亡を告げるニュースが流れます。

それから歩道橋にて。

友紀は陽奈子に、自分も窃盗が理由で蘭聖学園の編入組であることを打ち明け、自分のことを書かないでと陽奈子を突き落とすのでした。

その後、陽奈子は病院で目を覚ましますが、目の前にいたのは凜子でした。

凜子はニュースで陽奈子のことを知って駆け付けましたが、お見舞いが目的ではありません。

凜子の存在意義、それは蘭聖学園出身の一番の有名人ということであり、それには陽奈子が邪魔だったのです。

そして、友紀に突き落とされた後の今であれば、凜子が手を下してもバレる心配はありません。

凜子はクッションのようなものを陽奈子に顔に押し付け、陽奈子の意識は再び薄れるのでした。

そして凜子は、鈴蘭会の副理事長となり、総会で話します。

六月三十一日の正体。

それは、一月一日を日曜日とする世界暦で考えた場合の、うるう年の六月三十日の翌日のことでした。

総会はその六月三十一日に行われ、凜子は今回のような悲劇が二度と起きないよう、今総会での世界暦の廃止を呼びかけるのでした。

おわりに

偶然に頼り過ぎたストーリーではありますが、その連鎖は恐怖の一言。

気分が悪くなりつつも、読まずにはいられない物語はさすがでした。

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