ミステリー

東野圭吾『宿命』あらすじとネタバレ感想!本格推理と意外性が共存する名作ミステリ

高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

【「BOOK」データベースより】

東野圭吾さんのデビュー五年後に書かれた長編で、本格推理だけでなく意外性も追及したといいます。

特にそれが表れているのが最後の一行で、文庫本ではその一行だけが最後のページにくるよう計算されていて、並々ならぬこだわりを感じさせます。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

瓜生美佐子は、目には見えない糸で人生を操られているのではという漠然とした感覚を十年以上前から持つようになっていました。

父親の壮介は仕事中の事故が原因で長期入院しますが、退院すると知人の厚意で地元最大の企業・UR電産に再就職。

これだけでもあり得ないほどの幸運なのに、良い事は続きます。

平凡な大学生活を送っていた美佐子もUR電産に採用され、取締役である瓜生直明の世話をする役員室付を命じられます。

そして、直明の紹介で息子の晃彦と知り合い、程なくして彼と結婚。

周囲からは玉の輿だと羨ましがられますが、美佐子はなぜ自分が晃彦に選ばれたのか分かりません。

幸せを約束されたような人生を歩む美佐子ですが、心には常に不安がありました。

自分は本当に晃彦を愛しているのか?

何か隠し事をしているのではないか?

それが募り、離婚も考えるようになります。

奇妙な偶然

食道がんで直明が死亡。

遺産のほとんどは晃彦に相続されますが、晃彦は関心を示しません。

多くの人間はUR電産の今後についてですが、ここで事件が起きます。

社長である須貝正清が殺害されたのです。

凶器として使われたのは瓜生邸にあったボウガンで、普通に考えれば親族の犯行ということになります。

この事件に刑事の和倉勇作が捜査に当たりますが、これが奇妙な偶然の始まりでした。

勇作と晃彦は小学生の時からお互いに気に食わないと思っていたライバルであり、勇作と美佐子は元恋人同士だったのです。

勇作と美佐子はやむを得ず別れただけにお互いに未練があり、捜査を通じて晃彦の犯行ではと疑うようになります。

宿命

勇作が捜査を進めれば進めるほど、晃彦の怪しさは増していきます。

それだけでなく、須貝の持っていた一枚の写真が勇作を動揺させます。

そこに写っていたのは、レンガ病院と近所の人たちから呼ばれていた脳外科病院で、勇作は子どもの頃、レンガ病院に入院していたサナエという女性と交流を持っていました。

しかし、サナエは謎の転落死を遂げます。

勇作の父で刑事だった興司は当初、殺人だったのではと捜査をしますが、捜査は不自然に打ち切られ、勇作はサナエの一件と今回の事件が繋がっているのではと疑います。

そして、捜査はやがて美佐子の感じていた糸の正体に辿り着き、勇作と晃彦の宿命の対決は意外な結末をもたらします。

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感想

事件の推理自体が難しい

『宿命』というタイトルから、事件はあっさりと対決し、勇作と晃彦の対決がもっと描かれるのだと思いました。

ところが、一人ずつ容疑者が消え、須貝殺害の犯人自体が一向に見えてきません。

この意外性だけでなく、本格推理ものとしてもしっかり成立している構成がさすがでした。

読者は基本的に勇作の目線で事件を捉えますので、どうしても晃彦が犯人であるように思いがちですが、本当にそうでしょうか。

感情に流されず、物事をあるがままに見て柔軟に考える。

推理の基本を改めて思い出させてくれる事件でした。

最後まで読めなかった宿命

そして、事件の先に『宿命』の答えがあるのですが、これも完全に予想外の展開でした。

もっと後の作品に比べれば粗削りな部分もありますが、このバラバラなピースが一気にはまっていく感じが東野圭吾の作品だなと読んでいて嬉しかったです。

『宿命』とは生まれる前から決まっている運命のことであり、それがこの物語ではどういう意味を持つのか。

ぜひ読み進めて、ご自分の目で確かめてみてください。

おわりに

シンプルなタイトルに、それにふさわしいこれ以上ない結末。

東野圭吾さんの潔さとこだわりが感じられる作品で、令和となった2020年に読んでもそこまで古臭さは感じられませんでした。

比較的最近の作品からこちらの作品に戻ってもそんなに違和感はないと思いますので、ぜひ騙されたと思って読んでもらればと嬉しいです。

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