伊坂幸太郎『チルドレン』あらすじとネタバレ感想!短編集のふりをした緩い長編作品
「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々――。何気ない日常に起こった5つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
Amazon商品ページより
独自の価値観を持ち、いつも自分のペースで周囲の人間を振り回す。
けれど、どこか憎めないところがある男・陣内。
本書は彼と彼に関わる人間が直面した事件や出来事を描く五つの短編から構成される作品です。
タイトルにある『チルドレン』とは本書の表題作のタイトルです。
括りとしては短編集で時系列もバラバラですが、後になって別々の短編同士が繋がることがあり、緩い長編作品と捉えることもできます。
友だちになりたいとは思わないけれど、見ていて清々しい男・陣内のインパクトがとにかくすさまじく、これまでとはまた一味違った伊坂幸太郎の魅力を見つけることが出来ます。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
バンク
大学生の鴨居は、友人の陣内に付き合って閉店間近の銀行に行きますが、そこで銀行強盗に巻き込まれます。
犯人は銃を持った二人組で、顔は当然分からないように隠しています。
鮮やかな手口で行員や陣内、鴨井含めた四人の客を縛ると、全員が縁日で売っているようなお面を被らされます。
誰もが大人しくして銀行強盗が去るのを待つ中、陣内だけが喚き散らし、それを鎮めるために強盗の一人が思わず発砲。
そのせいで警察が異変を察知し、パトカーが駆け付けます。
緊迫感が漂う中、人質の一人である盲目の青年・永瀬はトイレに行きたいと言い出し、鴨井に同行してほしいと依頼。
すると永瀬は、トイレで鴨井にこの強盗事件について自分の考えを打ち明けます。
犯人も銀行員もみんなグルなのではないかと。
四人の客は先に解放され、鴨井たちはこのことを警察に話しますが、信じてもらえません。
そして後日、事件のその後が明かされます。
チルドレン
『バンク』から十二年後の話。
陣内は家裁調査官になっていて、その後輩である武藤が視点になります。
武藤はマンガを万引きして送致されてきた木原史朗という少年の担当することになりました。
史朗は飲食店の代表取締役である父親の同席の元、面接に訪れますが、父親を意識しすぎていてなかなか本音を話してくれません。
そのため別々に話を聞きますが、父と子の仲がうまくいっているようには見えませんでした。
しかし次に会った時、二人の印象は以前と大きく異なっていて、どうも違和感があります。
その後、史朗の父親はチンピラに襲われ、武藤が陣内の真似をしてその場を切り抜けますが、警察には言わないでほしいと父親は頑なです。
これらの違和感の正体は、武藤と史朗が出会った半年後に明らかになります。
レトリーバー
永瀬の彼女・優子の視点で、回想という形で展開する話。
当時、二十二歳だった陣内はこれから告白するから一緒に来いと永瀬と優子を連れ出し、目の前で意中の女性に振られてしまいます。
失恋を味わった陣内は駅前のベンチに二人を残してどこかに行ってしまい、戻ってきたのは二時間後でした。
そこで陣内は、二時間経っても周囲の人間の顔ぶれが変わっていないことに気が付きます。
トルーマン・カポーティの小説で『もし誰かが恋人と別れたら、世界は彼のために動くのをやめるべきだ』と書かれていますが、陣内のために世界が止まるはずがありません。
三人は顔ぶれが変わらない理由を考え、やがてその理由が判明します。
チルドレンⅡ
『チルドレン』の一年後の話。
武藤は調停委員の手に負えなかった離婚調停を受け持つことになります。
大和修司と三代子はお互いを敵視し、娘の親権は譲らないとまともな話になりません。
修司はすでに二回の離婚を経験していて、三代子は二回目の離婚の時の浮気相手です。
一方、三代子は今度も修司が浮気をしていると決めつけていて、自分が浮気される側になったことに納得がいかず、意固地になって親権を獲得しようとしているようにしか見えませんでした。
妥協点が見つけられずにいると、陣内は自分のライブになぜか修司を誘うよう武藤に指示。
さらに陣内が家裁で担当した少年・明も修司が来るならライブに行くと言い出し、訳が分からないままライブ当日を迎えます。
武藤が先の読めない状況に不安を覚えますが、そこで陣内の起こす奇跡を目撃するのでした。
イン
『バンク』から一年後の話。
永瀬と優子は、陣内のアルバイト先であるデパートの屋上を訪れます。
優子は飲み物を買うためにその場を離れ、永瀬は盲導犬のベスと共に待ちます。
その間、見知らぬ女性に危うく優子の大事にしているバッグを盗まれそうになったり、バイトをサボる陣内と話したりするシーンが描かれますが、見どころはまだあります。
作中、陣内は自分の父親との間に確執があることを度々口にしますが、それが後に解消されていることが分かり、その解消のきっかけになったのがこの話になります。
その解消方法がいかにも陣内らしく、本書の締めくくりにふさわしい内容になっています。
感想
とにかく陣内がすごい
本書を語る上で、陣内のことを話さないわけにはいきません。
一言でいえば、何もかもが無茶苦茶です。
論理的に話しているようで自分勝手な理論だし、自分がすると決めたことは誰に何と言われても止めません。
彼のことを迷惑だと感じる人も多いでしょう。
しかし、彼のストレートな物言いは他にはない説得力を持ち、ついつい納得してしまうのですから不思議です。
家裁調査官という一見、人の話を聞かない陣内には向かない仕事に思えますが、彼の活躍ぶりを見ると案外合っているのかもしれません。
周囲の人間の理解がある
好き勝手な陣内ですが、彼の周辺の人間が視点になることで物語がブレ過ぎないのが良い
なと思いました。
鴨井や永瀬、優子に武藤とみんな陣内に対して理解がありすぎです。
陣内は本当に周りの人に恵まれているし、陣内が周りを気にせず自分らしくあるからこそみんながついて来てくれるのかもしれません。
伊坂ファン向けのサプライズが仕込まれている
伊坂さんの作品では度々作品同士がリンクし、お馴染みのキャラクターが思わぬ形で再登場するということがしばしばあり、ファンの間ではそれを探すのも楽しみの一つになっています。
本書にもそうしたファン向けのサプライズが仕込まれています。
具体的な作品名を挙げると『ラッシュライフ』、『陽気なギャングが地球を回す』、『重力ピエロ』、『砂漠』、『魔王』が該当します。
なかなか見つけにくいちょっとしたリンクが多いので、ぜひ読み比べながら探してみてください。
おわりに
伊坂さんの描くキャラクターの中でも特に人気の高い陣内。
その理由が本書にはたくさん詰まっているので、ぜひファンの人もそうでない人も読んでみてください。
陣内が魅力あふれる人物であることはここに書いてきた通りですが、やはり友だちになりたいとは思いませんでした。
魅力があるからといって友だちになりたいわけではない。
本書から得られた思わぬ収穫です。
次の話はこちら。
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