『陽気なギャングが地球を回す』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!
嘘を見抜く名人、天才スリ、演説の達人、精確な体内時計を持つ女。この四人の天才たちは百発百中の銀行強盗だった…はずが、思わぬ誤算が。せっかくの「売上」を、逃走中に、あろうことか同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯に横取りされたのだ!奪還に動くや、仲間の息子に不穏な影が迫り、そして死体も出現。映画化で話題のハイテンポな都会派サスペンス。
「BOOK」データベースより
伊坂さんの魅力が詰まり、テーマ的にも気軽に読める名作です。
四人の男女が銀行強盗として活躍(?)しますが、それぞれが長所を持ち、チームとして非常に良いバランスとなっています。
彼らは楽しそうに銀行強盗をするので、良いことをしているように錯覚しそうになるのが読んでいて非常に面白かったです。
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。
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登場人物
ここではメインとなる四人の銀行強盗についてまとめます。
・成瀬
他人の嘘を見抜くことができる。普段は市役所に勤める公務員。離婚歴があるが、元妻と自閉症の息子・タダシとは今でも連絡をとっている。
・響野
演説の達人で、話す側から言葉が浮かんでくる。しかし嘘の方が多い。妻の祥子と共に喫茶店を経営しているが、彼の淹れるコーヒーは不味い。
・久遠
スリの天才で、動物と自然を愛する。
・雪子
コンマ1秒単位の正確な体内時計を持っている。主に銀行強盗の際の運転手を務める。息子の慎一と二人で暮らしている。
あらすじ
未来の話
響野は自分の喫茶店で雪子の息子・慎一に勉強を教えている時、慎一はいじめられるかもしれないと響野に相談を持ち掛けます。
未来のことでまだ起きていませんが、いじめられなければならない事態になりそうなのだといいます。
その場ではどうするでもなく話が終わり、後日、次の強盗の計画が決まって四人は響野の喫茶店に集まります。
成瀬の計画は緻密で、今回の強盗も問題なく成功することが予想されました。
唯一、普段はどちらかというと放任主義の雪子が慎一のことを気にしているのが気がかりでした。
現金輸送車ジャック
計画当日。
雪子以外の三人はいつも通りに銀行を襲い、目的のお金を奪って退店。
待機していた雪子が車を運転して、誰もが成功を確信していました。
ところが逃走中に車が飛び出してきて、衝突を避けるためにお互いに避けます。
成瀬たちは構わず逃走を続けようとしますが、相手の車から三人組の男たちが銃を持って降りてきます。
その奇妙な格好から今世間を賑わす現金輸送車ジャックであることが分かります。
彼らも犯行を終えた後で、成瀬たちの車と奪った金を奪って逃走。
成瀬たちは無事だったものの、せっかくの収穫を奪われてしまうのでした。
手がかり
せっかくの手柄を奪われて穏やかでない成瀬たちですが、相手に繋がる手がかりはありました。
久遠が一人の財布を盗んでいたのです。
運転免許証が入っていて、林達夫という人物の家に成瀬と雪子が向かいます。
部屋の鍵は、合鍵作りや盗聴の名人である田中に作ってもらいました。
しかし部屋にいたのは、包丁で刺されて亡くなってる林でした。
現金輸送車ジャックは仲間を使い捨てるという話があり、切り捨てられた可能性が濃厚です。
成瀬は部屋に残されたブッシュ式の電話のリダイヤルボタンを押します。
すると、電話に出たのは響野でした。
いじめ
成瀬たちが林の家に行っている中、喫茶店で待機していた響野と久遠のもとに慎一から電話が入り、誰かに追われていると話します。
二人は慎一に合流。
慎一は深刻な様子で、同級生の薫が目をつけられ、国道にある潰れたパチンコ屋に連れて行かれてしまったのだといいます。
慎一は無事なため気乗りはしませんが、薫を助けるために三人はそのパチンコ屋跡に向かいます。
相手は少年とはいえ十人ほどいましたが、ボクシングでインターハイにも出場したことがある響野がこれを撃退。
リーダー格の少年をガムテープでぐるぐる巻きにします。
すると今度は、拳銃を持った男が乱入してきます。
相手は、響野たちが慎一たち含めて少年に暴行をしたのだと勘違いしていました。
幸い、慎一と薫に危害を加える恐れはないため、響野と久遠は退散。
その際、久遠は拳銃を持った男から携帯電話を掏っていました。
携帯電話に非通知で電話が入り、響野が出ると相手はなんと成瀬でした。
繋がり
成瀬と響野はお互いの状況を説明。
雪子は慎一の身を案じて成瀬を残して一人車で行ってしまいます。
響野と久遠が成瀬に合流すると、これまでのことを整理します。
パチンコ屋で会った男をX氏と仮称し、X氏が林の電話番号を知っていることから、X氏も現金輸送車ジャックの仲間であると推測できます。
成瀬は今回の一連の出来事の鍵が雪子にあると考えます。
思い返せば、銀行強盗の前の段階で雪子の様子はどこか落ち着かないものでした。
成瀬は、雪子とX氏が繋がっていて、雪子は事前に銀行強盗をしたあの日、現金輸送車ジャックがあることを知っていたのだと推測します。
そして、事故に見せかけて成瀬たちが奪った大金をX氏たちに持ち去らせたのではないか。
おそらく、雪子が今向かっているのもX氏のところです。
X氏が響野たちの前に現れたのも、雪子の息子である慎一がいたからです。
雪子は慎一を盾にとられ、脅迫されていることになります。
しかし、成瀬はすでに先読みしていて、雪子の後を響野の妻・祥子に追ってもらっていました。
成瀬はいいます。
X氏は、慎一の父親だと。
次の銀行強盗
雪子はX氏、つまり慎一の父親である地道と会い、事情を聞きます。
二人は地道の借金の肩代わりを雪子がする代わりに、地道は二度と慎一に近づかない、こういう約束をしていました。
しかし、現に地道は慎一の近くをうろついていて、雪子は激怒します。
一方、地道も現金輸送車ジャックの主犯である神崎に慎一を人質にされ、神崎の言いなりになっていました。
話が平行線をたどる中、場所を知った成瀬たちが合流。
地道から、成瀬たちから奪った大金も含めて銀行の貸金庫に預けていることを聞き出し、もう一度銀行強盗に入る計画を立てます。
そして成瀬は、なぜか地道を仲間に引き入れ、次の計画の情報を流すのでした。
しかし、これも作戦の内でした。
後日、四人だけで集まり、本当の計画の打ち合わせをします。
さらに地道が林の遺体を埋める写真も撮り、保険をかけます。
本当の計画
計画当日。
いつも通り三人が銀行に入り、雪子は車で待機しますが、突然車の中に男が入ってきます。
神崎でした。
地道が用意した盗聴器によって本当の計画が知られていたのです。
警察やマスコミが集まる中、神崎はまず成瀬たちが捕まるところを見物しようとします。
ところが、警官が雪子たちに車外に出るよういい、次の瞬間には拳銃を発砲します。
驚く雪子と神崎でしたが、撃った警官は久遠で、もちろん偽物です。
その隙にもう一人の警官である響野が神崎を車の中に押し込み、鍵を外から閉めます。
神崎は外に出ようとしますが、ドアが開きません。
この車は田中が作ったもので、外から鍵をかけると中から開かない代物だったのです。
二時間後には勝手に空きますが、その時には警察の世話になっているというわけです。
トランクには掘り起こした林の遺体が入っているため、言い逃れはできません。
そこに同じく制服姿の成瀬も合流。
成瀬は地道の盗聴に気が付いていて、その上で計画を立てていたのでした。
雪子が銀行に入るところを目撃した強盗は、防犯訓練の銀行強盗役でした。
結末
地道は敵わないと思っていた神崎を成瀬がなんとかしてしまったため、成瀬には敵わないと観念して逃げ出しました。
成瀬たちはこれまでの出来事を何気なく話すと、今日も別の銀行を襲うのでした。
おわりに
エンターテインメント性抜群の作品で、読書の習慣がない人にもぜひおすすめしたい名作です。
続編も出ているので、まだまだ彼らには楽しませてもらえそうです。
次の話はこちら。
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